『ありがとう、ごめんね』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
「ありがとう、ごめんね」
少女は笑って、血に塗れた。
ありがとう、ごめんね。
母は毎日忙しく
私は構って貰えなかった。
私は日頃の寂しさを母に伝えた。
母は、泣いた。
「構ってあげれなくてごめんね」と。
そんなつもりはなかったのに。
自分の言った言葉に罪悪感を感じた。
「いつもありがとう」って言えば良かった、。
ありがとう、ごめんね
私がまだ6歳の頃、
家が引っ越す事になった。
親から、
まだお友達に言わないでと
言われていたのに、
兄が近所の幼馴染みに話してしまった。
兄から聞いた幼馴染みが私に、
引っ越しするって本当?と聞いてきて発覚した。
私は、親にまだ話すなと言われていた事を
思い出し、とっさに、
いや、引っ越さないよ。
と言ってしまった。
それを聞いた幼馴染みが
とても嬉しそうに、良かった~!
と言った。
友達の笑顔。
私の心にチクッと刺さった罪悪感。
仲良くしてくれてありがとう。
引っ越さない事を喜んでくれてありがとう。
嘘をついてごめんね。
paki
ありがとう、ごめんね
愛してた
出会えてよかった
伝えたかったこと
全部、渡せてたら
こんなにもあなたが心に棲みつくことも
なかったのかな・・・
『ありがとう、ごめんね』
彼にしては殊勝な言葉が出たものだと丸くした目で観察する。引き結んだ口元には自分の不甲斐なさを恥じているのだろう苦々しさがとてもよく表れている。眉間のしわは深く刻まれ、小突きがいがありそうだった。
彼がやらかしたへまは大したものではなかったのだが、それを他人のせいにするでもなく、愚痴をこぼすでもなく、八つ当たりするでもなかったので説教の必要はなさそうだ。気持ち丸まった彼の背中をばしと叩いてやった。
ありがとう、ごめんね。
これが生まれ変わった僕の最初の言葉。
感謝も謝罪も大切な事だと教わった。気持ちを伝えるためには言葉にしないといけないということも。だから、僕は言葉として、僕の意思で、僕の口からそう発したんだ。
なのに、どうして?
どうして君は泣いているの??
#1 ありがとう、ごめんね
分かってた。私のことなんて好きじゃないって。
きっぱり、断ってくれてありがとう。すっきりした。でも、ごめんね。私は、あなたのこと嫌いになれない。諦め悪いね、ごめん。
ありがとう、ごめんね
心がどうしようもなく弱った時、私が真っ先に頼るのは彼だった。
「そうなる前に来いっていつも言ってるだろ」
メンヘラに片足突っ込んだみたいな、自分でも面倒くさいって思う状態でも変わらず優しい彼に涙が溢れる。
「ありがとう、ごめんね」
こんな自分が嫌で仕方なかった。
もっと強く在りたいのに、なかなかうまくいかなくて。
「いいから寝ろ」
頭を撫でられて次第に意識が朧げになっていく。
…起きたら治ってるといいなぁ。
(心の風邪には十分な睡眠と愛を)
#1
ありがとう、ごめんね
《ONEPIECE二次創作現パロ》
ここか…
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ティーチャー「皆さん、おはようございます」
みんな「おはようございまーす」
ティーチャー「今日皆さんにいいお知らせがあります」
ザワザワ
ティーチャー「転校生が来ました、どうぞ」
ロー「トラファルガー・D・ワーテル・ローだ、よろしく頼む」
ザワザワ2
mob「かっこよくない…!?」
mob「やばみだね」
ここのクラスは元気だな…ん?
あいつ、あいつだけ静かに読書か
変わってるな
ティーチャー「仲良くしてくださいね、ではあそこの席に座ってください」
ロー(窓側か)
窓が少し空いていて薫風が気持ちい
横の席は…
さっきの面白いやつか
ロー「よろしくな」
??「えっ、あうん…よろしく」
ロー「お前の名前は?」
ミズキ「ミズキ、フィオーレ・ミズキ」
ロー「ミズキか、いい名前だなニコ」
ミズキ「ありが…とう」
mob「ローくんがなんであいつなんかと…」
mob「後で痛い目に合わせないとねニコ」
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ミズキside
ロー「よろしくな」
ミズキ「えっ、あうん…よろしく」
転校生のローくん
めっちゃくちゃイケメン…
だってこんな“ 呪わてた子 ”
なんかに声掛けてくれるなんて
性格もイケメンとか最強じゃん
あっ、そっか
転校生だから知らなくても当然か
このことを知ったら
みんなと同じ対応になっちゃうのかな…?
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〜放課後〜
ティーチャー「では皆さん、さようなら」
みんな「さようなら〜」
ティーチャー「ローさんはお話があるので職員室に来てくださいね」
ロー「わかりました」
mob「ねぇミズキ、後で職員室の横の部屋、来てね?」
ミズキ「わかりました…」
気が重い…
あそこ、使われてない元音楽室だから防音で助け呼べないんだよね…
まぁ助けてくれる人なんていないんだけど
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mob「ねぇ、なんであんなイケメンなローくんと喋ってるのよ…!!」
mob2「お前みたいな呪われた子が!!」
ガンッ
ミズキ「ッ!!」いつもより蹴りが重い
なんで呼び出されたかと思ったけど
そういう事か フッ短気だなぁ
mob「どこ向いてんのよっ!」
ドンッ
ミズキ「やばっ」
いつもより強いや
なんか意識が…
ロー「何してるんだ…?」
mob「ローくん!?」
mob2「なんでここに?」
ロー「っ!! ミズキ屋!?」
ロー「お前たち、何してたんだ?ギロッ」
mob「きゃぁっ」
mob2「ごめんなさい…」
チッ逃げられたか、
それよりも先にミズキ屋だ
ロー「ミズキ屋!!大丈夫か?」
ミズキ「ん…!?ローくん!?」
ミズキ「なんで…ここに!?」
ロー「たまたまだ」
ミズキ「そっか、」
やばい…意識が持たない…
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ミズキ「ん…?」
ここどこだぁ?
ロー「起きたか」
ミズキ「ローくん!」
あっここ保健室か
ミズキ「さっきは、助けてくれてありがとうニコ」
ロー「ドキッ」
なんだこの感じ…
ロー「いや、たまたま通りすがっただけだ…というか何であんなk…
ミズキ「気になるよね… 」
私さ、いじめられてるんだ。
ほら私の赤い目、なんか血の色みたいで不気味でしょ?
だからね、“ 呪いの子 ”って呼ばれてるんだぁ。
呪いの子だなんて
普通の親に生まれてきたんだけどね…ニコ
ロー「俺は、その目綺麗だと思うがな」
ミズキ「えっ?」
ロー「ルビーみたいな目で綺麗だと思う」
ミズキ「あっ、ありがとう…!そんなこと言われたこと無かったよ…?ポロッ」
やばい…涙が止まんないや
こんな私でも優しくしてくれる人がいるなんて
ロー「…大丈夫だ、ミズキ屋がまたこんな目にあったら、守ってやるから」
ミズキ「ありがと…!!めっちゃ嬉しい」
ミズキ「ねぇ、1個質問いい…?」
ロー「なんだ」
ミズキ「ミズキ屋ってどういう意味w?」
ロー「あだ名みたいなもんだ、気にするな」
ミズキ「そっかw」
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その日を境にローくんと一緒に遊ぶことも多くなり、いじめも少なくなった。
と思う
こんな学校が楽しいのは久しぶりだ
こんな日が続くといいななんて思うこともある。
(めっちゃ長くなるので省略!!)
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〜数ヶ月後〜
転校してから数ヶ月後、だいぶ学校にも慣れてきた
ミズキ屋とも少し仲良くなって普通に楽しい
そして、俺の気持ちにも変化があった
前までミズキ屋は気弱な友達、と思っていたが今はどうやら違うらしい
mob「今日体育ある〜」
mob3「まじか、だる〜」
ロー(ミズキ屋遅いな)
いつもは学校始まる40分前ぐらいには来ているはずだが
キーンコーンカーンコーン
ティーチャー「席に戻ってください」
ロー(ミズキ屋は遅刻か)
ティーチャー「皆さんに悲しいお知らせがあります」
ザワザワ
ティーチャー「フィオーレさんは事故で亡くなってしまいました」
ロー「え?」
ザワワワワザワワワワ
ティーチャー「今日、このクラスは授業は無くなりました」
ロー「先生、それ本当ですか?」
ティーチャー「はい、あっフィオーレさんからお手紙、預かってますよ」
ロー「…!!ありがとうございます」
ティーチャー「これから頑張りましょうね」
ロー「はい…」
ロー「ROOM、シャンブルズ」
※めんどくさいから能力使って家到着
早速手紙を読む
ローくんへ
こんにちは
この手紙読んでるってことは私もうこの世にはいないかな?
びっくりしたと思います。病死なんてなんかかっこ悪いよね…?
ロー「ん?」
(ミズキ屋は事故だったんじゃ…)
私ね、ローくんに一つ隠してたことがあるの。
ローくんが転校してきた前の日にちょうど病院だったんだよ
その時ね、先生に言われちゃった
貴方の寿命はあと1年です
こんないじめられて、青春なんて出来ないまま私の人生終わっちゃうんだー
なんて思ったよ…w
でもそんな時に君が転校してきた
それでいじめられてるとこから助けに来てくれた
すっごい嬉しかったよ
そのあと遊園地行ったり、学校の文化祭もとっても楽しかった
私の人生、
この数ヶ月がいっちばん楽しかったよ!!
それでね、気づいちゃったんだけど
私さ、ローくんのことが好き
もう死んじゃったけど
私の事覚えてくれたら嬉しいなーなんて
ほんと楽しかったよ
また来世で会えたらいっぱい喋ろ!!
ありがとう…ごめんね!!
ロー「はっ」
最後までそんなこと言うのか
謝りたいのは俺の方なのに…
あー、もっと早く告っとけばよかった
ロー「好きだ…」
涙が溢れ出る
家の中なのにふわっと暖かい風が吹いた
「私も好きだよ…!!」
迷惑をかけないように生きろと言われた。
その通りだと思った。
けれど、
わたしを助けてくれるあなたが頼もしくて、
大好きで大好きでたまらなかったから、
あなたにたすけてもらえるようにした。
#ありがとう、ごめんね
『レディバードの恋人』
太陽にぶら下がりながら 究極のひなたぼっこを考える 妖精みたいなあの子 ハンドベルで導こう 天の道はくねくねでこぼこ 転んでしまう 五年歩く 更に十年歩くのだ 水玉模様の恋人よ ありがとうそしてほんのちょっとごめんなさい
題/ありがとう、ごめんね
(感謝、謝罪)
花瓶を割った
花が散った
破片が床に散乱する
ごめんなさいと、咄嗟に出る
友が片付けを手伝ってくれる
委員長が担任を呼んできてくれる
ごめんなさいと、咄嗟に出る
担任が怪我を心配してくれる
友が誰にでも過ちはあると慰めてくれる
ごめんなさいと、咄嗟に出る
「ありがとう」を伝えたいのに
ありがとう、ごめんね
ある日の夜、車を走らせていると
一匹の子猫を見つけた
車を止め、子猫に近づくと
とても痩せていて、それでも懸命に鳴いていた
母猫を探したが、近くにいないようで
見当たらず
このままにしておくのも可哀想で
子猫を車に乗せ
動物病院で見てもらうことにした
診察をしてもらい
栄養が足りてないので
点滴を打ち、薬を処方してもらい
食事を栄養価の高いものを
買った
そして、医師に言われた
この子猫は腎臓が悪いことで
体が弱く長生きは出来ないかもしれない…と
医師の言葉より何より
この子猫を我が家で飼うと
この時にボクは決めていた
子猫にはチビと名前をつけた
ちなみにチビは女の子
ペットを飼うのは初めてだったので
友人や会社の同僚やネットの口コミで
調べて必要だと言われたものは
全て購入した
チビは日に日に元気になった
走りまわり、ソファーでくつろぎ
キャットタワーの上から
ドヤ顔で見下ろしてみたり
朝早くに起こされ
遊ぼうと誘ってくる
仕事に行くのさえ
玄関前で淋しいよ!行かないで!
とニャーを連発され
仕事を終えて帰れば
まず、甘えるだけ甘えてくる
そして、台所に向かって歩き
ご飯と言わんばかりの
ニャー
を連発してくる
寝る時間になると
チビは必ずボクの隣で寝る
ツンデレなチビとの生活が
楽しくて幸せで
ボクは医師の言葉を忘れていた
チビとの生活も、もうすぐ1年という頃
チビはあまりご飯を食べなくなっていた
むしろ、吐くことが増えた
遊ぶより、横たわる時間のほうが
長くなっていた
心配になったボクは
「チビ、明日病院に行こうね」
そう声をかけチビの隣で眠った
朝になり目を覚まし
チビの顔を見るとまだ眠っているようだった
「おはよう」
そう言って撫でたチビの体は冷たくなっていた
一瞬、何が起きたのかわからないほど
ボクの思考は止まっていたはずだ
「チビ、チビ、チビ」
無我夢中で
チビを抱きしめて
声をあげて泣いた
チビ、うちに来てくれてありがとう
そしてごめんね
もっと早くに病院に連れていったら
何か変わっていたんだろう
できたことがあったはずなのに
感謝や後悔が心の中に
何度も湧いてくる
チビ…
ありがとう、ごめんね
この言葉を呟きながら
チビと火葬場に向かっている
ありがとう、ごめんね
俺は暇つぶにBARで飲みに来た。
そしたら、カウンターで青年が1人で物思いにふけていた。
俺はそいつの隣に座りそいつに話しかけた。
「なぁ、そんな一人で飲んでないで俺と話そうや」
そう呟くように言うと、『じゃぁ、とある人の昔話を聞いてくれるなら。』と言った。俺は無言で頷くと青年は、ぽつりぽつりと語りだした。
-××年前-
とある〈R〉という男がおったそうだ。
そのRはとても綺麗な心を持っていた。
誰にでも平等に接するし、進んで人助けをしたりしていたそうだ。Rは簡単に言うと【人間の鑑】と言えるほど、しっかり者だったらしい。
ある日、Rにも好きな人が出来たらしい。
そのRが好きになった人は【同性】の人らしい。
Rが好きなった人は、皆から好かれているとても格好良い人だったらしい。
そいつの事は〈K〉とでも呼んでおこうか。
だけど、その時は同性愛が認められなかった時代たったから、Rはとても苦しんだそうだ。
この想いを伝えていいのかと。
だけどRは勇気を出してKに告白した。
Kの答えは《NO》だったらしい。
Rはその時から分かっていて告白したらしいな。
Kはこう言ったらしい
《ありがとう、ごめんね 君の気持ちは嬉しい。だけど僕は同性とは付き合えないんだ。》
Rは諦めが着いた。いやむしろ、諦めが付いていたのかもな。
KはこれからもRと今までの関係を続けてくれると言った。
だがな、その言葉は[嘘]だったらしい。
次のRは学校に行くと、周囲から冷ややかな目で見られたらしい。変だなと思いながら席に行くと、机にはマジックで悪口が書かれていたらしい。それ以来Rは、学校に行く度に虐められたそうだ。
日に日にエスカレートしていった。
遂にRは学校に来なくなり、辞めていったらしい。
Rが居なくなった後はいつもの日常に戻った。
ある日こんな噂が流れていた。
《Rが壊れた》
Rは学校に来なくなった日から、部屋に閉じこもり何時間も歌っていたそうだ。
歌はとても悲しそうに歌われていたそうだ。
理由は振られたのではなく、Kが約束を破ったからだそうだ。
後日知った話だがな、
Rは元々両親が居なくて、一人暮らしをしていた。
KはRの家に行ったらしい。
だけど、その家はもう別の家族が住んでいた。
その家に人に聞くと、Rはその家族に家をあげたらしい。
その家族に、Rは今どこにいるか聞いたそうだが、その家族にもRの居場所は分からないそうだ。
Rは家族に家をあげてからは、行方不明らしい。
俺は青年の話に聞き入っていた。
青年のグラスに入っていた、氷がカランと音を立てて溶けた。
青年は「どうだった俺の創作は」と言った。
俺は驚いた。本当にあった話かと思っていたのだ。
「まじ.......?すげぇな。」
青年は嬉しそうに表情を綻ばせた。
「まぁ.......創作じゃないと〈R〉の事分からないもんな.......」
俺がそう言うと、青年から一瞬笑顔が消えたような気がした。だが、すぐに戻った。
俺が変なこと言った?と聞くと、青年は『なんでもないよ』と答えた。
青年はそろそろ帰るよといい会計を済まして、扉に手をかけた。扉が閉まる前に青年がこちらを振り返って、鬼の形相で睨んできたような気がした。
そういえば青年が帰る前にこう言っていたような
『〈K〉は未だに〈R〉に謝りに来てない』
あのいつもごめんなさいそれとありがとうございますそんな自分をうでくてありがとうめいやくかけてごめんなさい自分がんばるからおうえんお願いします
#ありがとう、ごめんね
生かしてくれてありがとう
生きてしまってごめんね
大好きだよ、
―さようなら。
『元気出せよ』
ヒロキは、ファミレスのテーブルに顔をおいている。
『ありがとう。でも、ごめんね。だって』
告白した女の子は、男にそこそこ人気のある女の子だった。
『なんで、振られちゃたんだろうな』
『わかんない』
どうして、ヒロキが振られたか知っている。
告白した女の子は、俺に告白したからだ。
そして、振った。
なんで、振っちゃったんだろう。
『元気出せって、なんかおごってやる』
ヒロキの頭をなでた。
『ジャンボパフェ』
『ミニパフェな』
店員さんを呼ぶボタンを押す。
まだ、顔を上げないヒロキを見た。
もう少しだけ、この時間が続きますように。
ありがとう
ごめんね
これは言えないと一緒には
いられない。
あなたにお礼を言われたことがないね
あなたと喧嘩しても謝るのは私だけだったね
次の彼女さんにはちゃんと言うんだよ。
今までありがとう。
ありがとう、ごめんね
私の大好きはもしかしたら重いのかもしれない
でもあなたは私にその大好きをくれて…受け入れてくれた
私に大好きをくれてありがとう…重くてごめんね…
インターフォンが鳴ってリビングのモニターを見てみたら、ありえない人が映っていた。
『寒いから開けてよう』
首をすくませコートのポケットに手を突っ込んでぶるぶると震えている彼は正真正銘、私の夫だ。外は薄暗いけど見間違えることはない。でもどうして彼が居るのだ。何かのドッキリにでも仕掛けられてるんじゃないかと思ってしまう。一般家庭なら夫が家に帰ってくる、ごく普通の状況かもしれないが、私にはあってはならない状況だ。何故なら、彼は昨年死んだのだから。
『早くー。凍死しちゃうよ』
もうとっくに死んでるでしょうが。心のなかで突っ込みを入れながら玄関のドアを開けた。
「やぁ」
「なんなのあんた」
「相変わらずドライだなぁユリちゃんは」
よいしょ、と靴紐を解き家に上がる夫(仮)。コイツ、本気なの?
「そんな物騒なもの持たないでよ。せっかく会いに来たんだからさ」
「……何しにきたの。あんた誰」
質問しながら、後ろ手に隠し持っていたフライパンをテーブルに置いた。何か変な真似をしようものならこれで殴りかかろうと思っていたけど、どうやら私を陥れるようなつもりはないらしい。
「今日だけ、時間をもらったんだ」
「時間?」
「そ。大好きな人に会えるキャンペーンに応募したんだ。そしたらその抽選に当たってさ。だから今ここにいるわけ」
ちっとも意味が分からなかったけど、兎に角彼が言うには、限られた時間ではあるがこうして現世に戻って来ることが出来たらしい。
「ほら、来週は僕の命日でしょ?」
「あ、そっか……」
早いもので、彼がもう死んで1年が経とうとしている。少しは気持ちは落ち着いたけど、今日まで彼が私の頭から離れることはなかった。だから今、こうして目の前に現れても“久しぶり”という感じにはならない。
「ユリちゃんに伝えたいことがあって」
私の知ってる笑顔がすぐそこにあった。彼は今、間違いなくここに存在している。私の手を握っている。なのに死んじゃっただなんて、やっぱり嘘だったのかと思ってしまう。
「ありがとう、ごめんね」
「なんで、」
「どうしても言いたかった。言えないまま僕は逝っちゃったから」
これを言いたくて、冥界からはるばる来たと言うの。そういう所、なんだか貴方らしい。生前は、“言いたいことは何でもはっきり言うべきだ”ってよく口にしてたくらいだったよね。白黒つけなきゃ気が済まない、曲がったことが嫌いな人だった。だから今の言葉も、私にどうにか伝えるまでは死んでも死にきれなかったのかもしれない。
「こちらこそ」
そう返事するのが精いっぱいだった。これ以上喋ると色々なものが込み上げそうだった。馬鹿だよね、私も貴方も。もっと生きてるうちに、ありがとうもごめんねも言えるタイミングがあったはずなのに。
でも、こうして伝えに来てくれたことがすごく嬉しい。今日という日を、私はこれからもずっと忘れないから。