『ありがとう、ごめんね』彼にしては殊勝な言葉が出たものだと丸くした目で観察する。引き結んだ口元には自分の不甲斐なさを恥じているのだろう苦々しさがとてもよく表れている。眉間のしわは深く刻まれ、小突きがいがありそうだった。彼がやらかしたへまは大したものではなかったのだが、それを他人のせいにするでもなく、愚痴をこぼすでもなく、八つ当たりするでもなかったので説教の必要はなさそうだ。気持ち丸まった彼の背中をばしと叩いてやった。
12/9/2023, 8:30:51 AM