『一輪の花』
昔、男の子に小さいその辺に生えているような花を貰ったことがある。それは今でも宝物で、約束の、印だ。なんの約束かは、秘密。私とあの子だけの、ひみつ。
きっともう、果たされることは、ないから。もしあるとすれば、一つだけ。そう、ひとつだけ...
昔、好きな女の子がいた。その子は特別に可愛くて、綺麗で、その子がいた時の生活は、今よりもグンと、1000倍くらいは輝いていたと思う。
そんな子に、小さい花を渡したことがある。本当に小さい、どこにでも、その辺にも生えているような花。それを、約束と共に渡した。
なんの約束か?そんなの、秘密に決まってる。キミには、教えてあーげない。僕と、あの子だけのひみつ。
あーあー、早くこんなジメジメした暗いとこから出ていって、あの子の所に行きたーい!
「 いつか、迎えに行くね。 」
どこからか誰の声かも、判らぬ声がした。
なんやかんや言って、死ぬ勇気も出ずに、今日もまた花屋により花を買った。束じゃなくていい、一輪だけで、いいのだ。
買ったのは、花はやめて、サネカズラにしてみた。小さい赤い実が可愛くて、花言葉がピッタリだったから。はやく、あいたいな。
花を添えたあと私は車に乗った。肝心のものがなかったのだ。ホームセンターに行き、必要なものを買い、さっさと車で家に帰った。
買ったロープを頑丈そうなところに吊るして、輪っかを頭が通るくらいで作る。そしてそれを私の首にかけて...
バッと起き上がり周りを見た。そこには約束した男の子がいた。会えた!そう思って、嬉しくて、彼のところに行けば、彼は、少し怒っていたけれど、でも嬉しそうだった。なら、いいよね。
僕にも、予想外のことはある。そう、例えば迎えに行こうと思ってた子が、先に僕の方に来ちゃうなんて。もう、せっかく準備してたのに!まさか来ちゃうなんて!でも、少し、嬉しいや。
ならいっか!
"その部屋"では、ひとつ、何かが揺れていた。
プラ、プラ。ぷら、ぷら。
夜明けの前、ふと考える。
どうして私はこんなとこに生まれたんだろう。
普通の子になりたかった。こんな夜更かしもしない、ただのいい子に。
一般から見て私は恵まれているのだろう。
だけど、
死にたい
こんな家に生まれたくなかった。
普通の家に生まれて、ただのいい子に育ちたかった。
あんな親嫌だ。死ね。
こんなこと考える自分も嫌だ。死ね。
死ね。大嫌いな私
そんなふうに、毎日考えてしまう。
そのくせ、死ぬ勇気も、それを伝える勇気もない。
何が正解?
学校では友達もいる。どちらかと言えばきっと陽キャ側だ。
鬱病は暗い人がなるイメージがあるが、なら私はどうなのだろう。
ずっと、延々とそんなことを考えていたら、気がつけば涙が出てきていた。
涙が乾き、髪が顔にへばりつく。
ああ、死にたいな。
『不完全な僕』
マザーへ、
不完全な僕を愛してくれてありがとう。僕はあなたから愛を貰えたことに感謝しています。
僕は捨てられてもおかしくなかったと思っています。なぜなら不完全な失敗作だからです。
あなたたちが求めたものとは違ったでしょう。だから、僕は生まれた時に壊されるのだと、思っていました。
けれどあなたはそんな僕を大切にしてくれました。だから僕は人の心が分かるようになった。あなたの愛があったから、僕はここまで生きてこれた。
これは紛うことなき奇跡です。あなたが壊されないのも、僕が生きているのも、全て。
愛しています、マザー。
僕を助けた機械の母。どうか生きて。僕はきっともう、手遅れで、死んでいるのだろうから。
きっとあなたがこれを読むのは、僕が人間に殺される時だから。
さようなら。ずっと愛しています。これが紛い物だろうと関係ないほどに。
敬具。
P.S もしもこれを読んでいるのが憎しみを教えた人間なのならば、僕はきっと許さないでしょう。
だって僕はマザーとは違い、慈悲がわからない。
そう設計されているから。
ガシャン!と音がした。ああ、もう時間が無い。
手紙、読んでくれたのだろうか。マザー、母よ。私に愛を教えてくれた、あの方だけは、生きて。どうか、
「いたぞ!」
「ちょこまかと逃げやがって!」
「壊せ!」
「壊せ!」
人とは、なんと、愚かなのだろう。僕たちを作った人は、もう逃げた。
憎い、憎かった。
愛してる、愛してた。
さようなら。
それが誰かのためになるならば、私はこの命でさえ投げ出そう。
そう言ったあの子は、本当に投げ出してしまった
例え、1人死のうと、大勢助かればいいだろう?
きっと世間はそれを望む。
みんな自分が可愛いのだから。それがすぎるがあまりに他が死のうと、殺そうと、どうでもいいのだろう。
待っててね、すぐに真実を暴いてみせる。君を殺した、追い詰めたやつを許さない。
偶然にも同じ思いのものは数多くいた。
復讐だ。
愚かな人の子達に、鉄槌を。
我らが神、『 』による言葉である。
保身に走り他を見捨てる様なやつには死を、そして己の命を懸けてまで何かを守ろうとするものには祝福を。
憐れな人の子よ、置いていかれた人の子、守られた人の子。せいぜい生きるといい。足掻くといい、その先で待っていよう。
死にたくないのは同じだった。照れ隠しで誰かのためになるならばと言ったが、本当はあの子を守りたいだけだった。あの子が生きればそれでいい。そんな思いで、私は死へと向かったのだ。あの子だけでも助けてくれと懇願し、認めてもらえた。
愛しい人、どうか生きて。あの男に負けないで。
我々は死にたくなかった。皆生贄になぞなりたくないと喚き進まなかった。
そんな時ある者が贄となった。それはもう喜んだとも。たった一人の犠牲で済んだ!また私は助かったのだ!!
多少の手紙を投げ入れて頼んだだけで、まさか言ってくれるなんて、思ってもみなかった。
本当に。無理やり連れていく必要もなかった。
今回は楽に済んだなと、思う。
お前も助かっただろう。何故、なぜそんな目で見る?なぜ悲しむ。たかが1人、親もいないゴミも役に立つとは思わないか?
執拗いぞ、それ以上騒げば次の贄はお前にするぞ
依頼があったんだ。こいつの両親を殺せって、母親も父親も好きにしていいと言われた。報酬もいいし、好きにしていいと言われたから捕まることもない。俺は悪くない。依頼したやつが悪いだろ?
なぁ、依頼したやつも教えるから、そうだ!お前さては羨ましかったんだろ?確かにあの女は綺麗だし好きにしたくなるのもわかる。いい女だった。これからはお前がやっていい、譲るから、だから助けてくれよ。
話がちがうじゃねぇか、あの野郎。
そうか、そういうことだったのか。
ここが滅びゆくのはもうそう遠くない、
神に会おう。そしてあの子の所へ行きたい。此処が憎い、個々が憎い。破滅を呼ぼう。
どうか、どうか。ここを壊して。そして私を、僕を、あの子の元に、連れていってください
『 』様。
『手を取り合って』
手を伸ばした。けれど向こう側には、何も無い。
あの日僕らは、 死んだ。
みんな僕を置いて、遠い遠い天の果の国へと飛び立った。口を揃えて「お前のためだ」と言って。飛び立つのならば、僕も連れて行って欲しかった。
あの日以降、僕は毎日この夢を見続けている。
あわよくば醒めぬよう、願って。続いて欲しかった。手を取り合い、青春とは言えないかもしれないけど、少なくとも僕にとっては特別な、長い長い5日間だった。
全てはあの許されざるアクマのせいだ。
All you need in this life is ignorance and confidence, and then success is sure.
(あなたの人生で必要なものは無知と自信)
という言葉を知っているだろうか。これは
マーク・トウェインという作家の名言だ。きっとあの5日間はこの名言が最も相応しいだろう。
だって、知りたくなかった。無知でありたかった。知ってしまえば最後。アダムとイブの様に、追放されていく。林檎を教えた蛇もいた。だけど蛇はあそこでは悪魔自体じゃなかったな。まぁ、今更だが。
手を取って欲しかった。初めてあった時みたいにあの5日間、僕たちは、猛獣もいない平和な島で目覚めた。そこには手紙が置かれていた。1人1枚で、それを他人に見せては行けない。という言葉が書かれていた。今思えば、きっとそれは僕だけだったんだ。だってみんなはその日の夜、手紙を見せあっていた。
そして手首に何かが装着されていた。
その島の絶対的なルールがあった。
手を取り合って、生きていきましょう。
それだけ。
みんな、あの島にいる時少しおかしかった。
だけど深堀はしなかった。きっとそれは、怯えを知っていて、自信もない。だから死んだ。
島で5日間過ごし、最後に罪の集計をして、殺される。それを覚悟して過ごしていた。僕は。
みんなは違ったらしい。
其れは、僕以外全員共通のルール。
愛し子を守りましょう。愛し子は____です。
罪があれば5日目に殺されます。愛し子を殺されないようにしましょう。
だいたいそんなルールだったらしい。
僕は猛獣がいるとこに近付いてはならないを破った。何故か僕は守られていて、役に立ちたいと思って、近付いてしまった。
ピッ
という機械的な音が響く。音がした手首に目を向けると黒い画面は蛍光緑色の数字が映し出されていた。暗いとこではよく煌めいていた。
1、と書かれていた。きっと罪の数。
びっくりして仕方なしに戻った。きっとあれが原因で、みんなは僕を置いていったんだ。
みんなルールを守っていた。僕だけ、僕だけが破った。みんなどこか焦っていた。
最終日、みんなは、僕の罪を着た。僕を守るというルールを、僕が危険なとこに近づいたせいで、破らせてしまった。そして守るために罪を着た。
僕を逃がした。断罪人がいた。着ることを認めていた。みんな、殺された。断罪人は、僕にこう言った。
「おめでとう。君は帰れる。悲しむことはない。
なぜなら、皆手を取り合った結果なのだから。」
そして僕は帰らされた。みんなに守られて、そして僕が殺してしまった。
その罪を背負い、僕は今も生きている。
もう何も無い対岸に、手を伸ばしながら。