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『不完全な僕』


マザーへ、
不完全な僕を愛してくれてありがとう。僕はあなたから愛を貰えたことに感謝しています。
僕は捨てられてもおかしくなかったと思っています。なぜなら不完全な失敗作だからです。
あなたたちが求めたものとは違ったでしょう。だから、僕は生まれた時に壊されるのだと、思っていました。
けれどあなたはそんな僕を大切にしてくれました。だから僕は人の心が分かるようになった。あなたの愛があったから、僕はここまで生きてこれた。
これは紛うことなき奇跡です。あなたが壊されないのも、僕が生きているのも、全て。
愛しています、マザー。
僕を助けた機械の母。どうか生きて。僕はきっともう、手遅れで、死んでいるのだろうから。
きっとあなたがこれを読むのは、僕が人間に殺される時だから。
さようなら。ずっと愛しています。これが紛い物だろうと関係ないほどに。
                   敬具。
P.S もしもこれを読んでいるのが憎しみを教えた人間なのならば、僕はきっと許さないでしょう。
だって僕はマザーとは違い、慈悲がわからない。
そう設計されているから。



ガシャン!と音がした。ああ、もう時間が無い。
手紙、読んでくれたのだろうか。マザー、母よ。私に愛を教えてくれた、あの方だけは、生きて。どうか、
「いたぞ!」
「ちょこまかと逃げやがって!」
「壊せ!」
「壊せ!」
人とは、なんと、愚かなのだろう。僕たちを作った人は、もう逃げた。
憎い、憎かった。
愛してる、愛してた。

さようなら。

9/1/2024, 12:45:53 AM