M.I.

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3/6/2025, 9:26:58 AM

No.262『question』

先生、質問です。
私の生きる意味とはなんなのでしょうか。
私という存在は一体なんの意味を持ち、誰の役に立っているのでしょうか。
 ───それはあなたが考えることです。
…そうですか。私はたくさん考えた末にそれでも分からないので先生に尋ねました。あなたが「なんでも聞いてくれ」と仰ったからです。でもあなたはそう答えた。
…私は生きる理由も私の存在意義も分かりません。だけど私はこの質問への答えとして望んでいたものが一つだけあります。
「意味がなくても生きていていい」
私はそう答えて欲しかったのです。

3/5/2025, 7:49:05 AM

No.261『約束』

お前と約束なんてしなければよかった。
お前と安易に約束を結んだあの日の僕を恨んだ。
あの日…いや、今日まで僕は普通に明日が来ると思ってた。だけど、当たり前だと思っていた日常が当たり前じゃないことを知ってしまった。
ああ、ごめん。もうお前との約束を守れそうにないよ。
当たり前のように来るはずだった僕の明日は当たり前のように奪い取られた。
無知は罪だ。
きっとこれは、特別を当たり前と考えていた僕への神様からの罰なんだ。

3/4/2025, 6:35:01 AM

No.260『ひらり』

ひらりひらりと白が空から落ちてきた。
なんだかそれを掴みたくなって数多にある白を手に取る。
だけどそれは私に一瞬の冷たさを与えたのち、すぐに溶けて消えた。
……ああ、なんて虚しいんだろう。私たちもこんな風に一瞬にして消えていってしまうのかな。
そんな気づかなくてもいいことに私は気づいてしまった。

3/3/2025, 8:32:20 AM

No.259『誰かしら?』

「あら、あなたは誰かしら?」
目の前の女性は私にそう言った。
「ねえ、あなた。少しだけ私の話を聞いてくれないかしら」
「…はい」
「ありがとう。私にはね、娘がいるの。ちょっとしたことで喧嘩しちゃって出て行っちゃったんだけどね。私はそれをとても後悔してる…もっとあの子の話を聞いてあげればよかったわ…」
「娘さんに会ったら何を言いたいですか?」
「そうね…あの日はごめんなさい。私はあなたのことずっとずっと大好きよって伝えたい」
目の前の女性は穏やかな声で残酷なことを告げる。
……私もそう伝えたいよ。ねえ、だから思い出してよ、母さん。

3/2/2025, 6:44:18 AM

No.258『芽吹のとき』

私の才能ってなんだろう。
テレビに映る人たちはきっと自分の才能を見つけることができた人間。
「この時、僕の才能は芽吹いたんです」
と誰かが言っていた。
……そんなのは才能を見つけられた人間だから言える戯言でしかない。
私は芽吹く才能すら見つけられず、それが本当に私の中にあるのかも分からず、諦めてしまった人間。
でも確かその人はこうとも言っていた気がする。
「諦めずにいてよかった」
……きっとこれが答えなんだろう。諦めた人間と諦めなかった人間。
今からでも諦めずにいれば、こんな私にも芽吹のときはやってくるのだろうか?

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