No.255『記録』
記録や勝敗にこだわる人たちに思い出を奪われた。
他のレーンよりも一周遅く走る私たちは見世物にさせられた。
でも誰を恨むことだってできなかった。
彼らの考える楽しさはいつだって勝ちと同義だった。
それが1番だと考える彼らは正しいわけでもないが間違っているわけでもない。
じゃあ、私たちが悪いのか。
それだって違うだろ。私たちは望んでこんな風になったわけじゃない。
これはどうしようもないことだったんだ。分かってる。そうやって自分に言い聞かせた。だけど……うん、やっぱり苦しかったなあ。
No.254『さぁ、冒険だ』
「さぁ、冒険だ!」
輝かしいほどの笑顔で僕の手を差し出してくる君。
なんで僕なんかに構うのか理解できない。
君の隣にいるべきやつは僕じゃないだろう。
そう思って目の前にある手を払う。
それでも諦めずに僕の背中をぐいぐい押して歩かせようとする君。
ああ、もう!!僕がいても君の邪魔にしかならないんだよ!!なんで分からないんだ!!
そうやって叫ぼうと思ったのに、
「お前とじゃないとこの冒険は楽しくない!」
ああ…もう……なんなんだよ……これで断ったら僕が悪役じゃないか…。
No.253『一輪の花』
あなたは私に一輪の花を渡してきた。
それは見るからに綺麗で道端で咲いていたものではない。
……お金がないって言ってたじゃない。「僕は今日のご飯を買うにも必死だ」ってそう言ってたじゃない。
それなのになんで…、そう尋ねたらあなたは笑顔で言った。
「僕は言葉を伝えるのが苦手だからこの一輪の花を君に渡したかったから」
……嬉しかった。とっても。
その気持ちが溢れかえって、私の手の中にある一輪の薔薇をそっと撫でた。
No.252『魔法』
小さい頃は魔法ってなんでもできていいなあって思ってた。
でも今は違う。
きっと魔法を使うにも努力が必要だ。
きっと頑張った人だけが手に入れらるんだ。
じゃあ、それってたくさん頑張った人の努力を魔法っていうのかな?
なんて考えるようになった。
No.251『君と見た虹』
君と見た虹は綺麗だった。
2人で綺麗だと話してたら君が突然走り出した。
この虹が消えちゃう前に虹の足まで行くんだ!だって。
ああ、君は眩しいね。
私はいつからかそんなこと考えるのをやめちゃったよ。