幼少期の頃、一緒の病室で入院してた友達からもらった手紙。
部活の先輩、後輩から貰った手紙。
当時親友と呼びあってた同級生から貰ったハガキ。
たまに忘れてしまいそうになる、かつて一緒に過ごしてた人達の存在を。
当時は嫌いだったはずなのに、また会いたいなんて身勝手なことを思ってしまう。
だから、手紙の行方は、私の心の中に。
大人になればなるほど、言いにくくなる言葉ってなーんだ。
『ありがとう』
今日、久々に学校を休んだ。
なんとなく、だるくて、やる気が出なかったから。
毎朝そうだったけど、今日は本当に休みたかった。
親にそのことを伝えるために、小さな勇気が必要だった。
よかった、伝わって。
小さな勇気に裏切られると、大きな傷が残るけれど、成功した時は、心は大きく癒される。
「ねぇ、あの話書き終わった?」
小説を書くのが趣味な貴方。貴方はこの前、力作が出来そうと、目を輝かせ声を弾ませていた。
「実は、まだ」
貴方は、ただそれだけ言った。でも、どこか悩んでいるようにも見えた。
「へぇ、 なにか行き詰ってるの?」
「うぅん、話の構成もオチも決まってるし、あとは書くだけなの」
「じゃあ、ほぼ完成してるようなもんじゃない」
私がそう言っても、貴方はまだ浮かない顔をしている。私は貴方の返事をゆっくり待った。
お月様が、夜の海を無機質に泳いでいる。その周りにはキラキラ光る深海魚たちもいる。星座に詳しくないけれど、オリオン座がある事だけわかる。でも、無数に光るそれらは、冬でしか味わえない儚さを感じさせる。
すると、貴方はいきなり口を開いた。
「この物語を、終わらせたくないの」
「終わらせたくない、って?」
「最近の楽しみが、この物語を書くこと、考えることだったのに、こんなあっさり終わらせていいのかなって」
それを聞いた時、あぁ、貴方っぽいなと思った。
物語の終わりは、貴方にとって生きる意味を失うことになるのかもしれない。
「この物語は、私が死ぬまで終わらない物語にしたいの」
誰にも読まれなくたっていい。と、貴方はよく口癖のように言っていた。小説を書くのは、自分を見つけるためであって、他人に見せるためではないと。
もしかしたら、見つかりそうなのかな。なんて、思っても見るけれど、きっとまだまだ時間はかかるだろう。
それを私は、こうやって静かに見守り続けていこうと、静かに決心した。
手のひらで目を塞ぐと、沢山の光が暗闇の中を飛んでいるのが見えた。
小学生の頃の私には、それが面白くて、楽しくて、教室の中でキャッキャと騒いでいた。
他の子にどうしたの?と言われたから説明しても、誰もこの不思議な現象を分かってくれなかった。
だから、幼いながらに、あの頃の私は、自分の手のひらにしかない宇宙を見て目を輝かせていた。
手のひらの宇宙には、蛍みたいにのんびりと動いている星や、様々な色に変わる星……沢山の個性的な星たちが輝いていた。
自分にしか分からないものは沢山あったけれど、それでよかったのかもしれない。
それが、私自身だったのだから。