「ねぇ、昨日さ、夢の中で神様にあったんだけど」
「頭でも打った?」
私が話している途中なのに、貴方はそう割り込んできた。会話の途中に貴方が邪魔をするのは、多分これで初めてだった。
「違うよ。本当だもん」
「あぁ、ごめんごめん」
「それで、私にこういったの。あなたのそばにずっといるからねって」
「えぇ、守護霊……てきな?」
「そんな感じかも。とっても、神々しくて、綺麗だったなぁ」
「へぇ。私のところにも、舞い降りてこないかなぁ」
多分、それはないよ、と言いかけて、私は口を噤んだ。
その神様は、貴方だから。
でも、きっと貴方にとっての神様が、私なら。
今日の夜、あなたの夢に神様が舞い降りてきてこう言った。
『あなたのそばにずっといるからね』
空を見上げて心に浮かんだこと
きっとくだらない事で、でも私にとっては大切なこと。
家に帰ったらやること、これから頑張ること、今日上手くいかなかったこと、沢山のことが心の中に浮かんできた。
一瞬、憂鬱になってため息を吐いた。
でも、透き通るような夜空を見て、また歩き出す。
太陽が登る時まで、ゆっくり歩こう。
窓越しに見えるのは、小さな私。
傘もささないで、周りの人は楽しそうにわざと水溜まりを踏んずけて遊んでいるのに、私はその弾みではねた水を体に受けながら、何も言わず立ち去っている。
あの頃の、私に言いたい。
他人のことばかりではなくて、自分を大切にして欲しいって。
そう言おうとすれば、窓は激しさを増す雨のせいで、景色がぼやけてしまって何も見えなくなった。
やっぱり、今の自分も、あの頃と同じで、まだ怖いのかもしれない。
私の小指に巻きついている赤い糸は、誰の小指に結びついているんでしょう。
もしかしたら、この赤い糸の先には誰もいないのかもしれない。
そんなことを考えてしまったから、自分から赤い糸をプツンッと切ってしまいました。
これで、楽に、なれる、よね。
こんな冷たい場所じゃなくて、どこか、温かい場所へ。
ここではないどこかにあるはずなんだ。
探しに行こうとすると、誰かに止められる。
こんなところじゃなくて、もっと遠い場所へ。