ななせ

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4/17/2024, 12:56:09 PM

「二階から、春が落ちてきた」

このアプリを入れているのなら、このフレーズに見覚えのある人は少なくないと思う。
伊坂幸太郎の『重力ピエロ』は、私も好きな名作だ。
きっと、私がこれからどんなに物語を書いたとしても、あんなに心掴まれる出だしは書けないだろう。その後のこちらを見透かすような言葉で、私はもう心を奪われていた。
今回のお題『桜散る』では、
桜が散る、花弁が落ちてくる、春が落ちてくる、と連想すると、どうしても序盤に回帰してしまう。
キャッチフレーズはどんなものにしようか、少し先人の言葉を借りて、オマージュのようなものをしてみたい。
そうするなら、「空から、春が落ちてきた」か。
樹の上から、でも良いかもしれない。
いつもは入学式の頃には散ってしまっているのに、今年は遅咲き故に長持ちだった。あんまりにも綺麗だったから、桜の精が散らせないように粘っていた、なんて、それはメルヘンすぎるか。


お題『桜散る』

4/16/2024, 12:49:56 PM

ティアラを望まなくなったなら、
あなたは子供には戻れない。
子供でいられる時間は終わり。
ベビーピンクのグロスを拭って、
深く濃い色のリップを塗る。
あなたはもう、
フリルたっぷりのドレスを着ることも、
ふわふわの砂糖菓子に舌鼓を打つことも許されない。
だってあなたは大人になったから。
子供でいることを拒否したから。
寝る前のお祈りを忘れても、
誰にも何にも言われない。
夢の中でも、
ヒマワリもユニコーンも、
あなたに笑いかけてはくれない。
だってあなたは大人だから。
あんなに遊んだ人形に目もくれず、
今度はショーウィンドウを飾るマネキンに夢中。
ヒールをカツカツ鳴らして肩で風切って歩くの。
あなたが大人を選んだから。
もう、
子供ではないのだから。


お題『夢見る心』

4/15/2024, 12:45:14 PM

あなたって彼の前じゃそんな顔するのね
私にはそんな優しい表情、一度だってしないのに
やっぱり好きなんでしょ
彼が好きなんでしょ
じゃあ私の告白に頷かないでよ
あなたは気まぐれだったかもしれないけど
彼への当てつけだったかもしれないけど
私は本気だったのよ
一世一代の告白だったのよ
乙女の愛の言葉をそんな風に扱って
あなた最低よ
ええそうよ、そんなあなたが好きなのよ
私も最低よ
それでもあなたと付き合ってるんだから
ねえお願い
あなたから別れを告げて
私から離れることなんてできないの
理由なんて何でも良いから
一言飽きたって言ってくれれば良いから
諦めるなら諦めて
諦めさせて


お題『届かぬ想い』

4/14/2024, 12:41:47 PM

かみさまへ
このよにうまれさして、うまれさせて
ぼくをままのとこえいかせてくれて、ありがとごさいます
できないことばっかりでたいへんだけど、とってもたのちいです
がんはってじをうまくかけるようになります
ぼくより


神さまへ
小がっこうになりました
おともだちがいーぱいできて、よろこびます
かん字もおぼえました
おなまえもかけるようになりました
でもさんすうがいやです
ぼくより


神さまへ
すきな子ができました
その子は神さまなんかいないと言っていました
ぼくは神さまを信じています
でも、その子のことも信じたいです
ぼくはどうしたらいいんですか?
ぼくより


神様へ
中学生になりました
今はサッカー部に入っています
練習は厳しいけど、自分で決めたことなので頑張ります
好きな子は別の中学へ行ってしまいましたが、あの子はもう良いんです
ぼくには神様がいるんですから
あの子は正しくないことを言いましたから
ぼくより


神様へ
ぼくは今、いじめを受けています
でも、辛くなんかありません
神様を信じない者に救済は訪れませんから
それにこれはきっと、貴方が遣わせた試練なのでしょう
それならば、ぼくは耐え抜いてみせます
ぼくの信心深さは、信者の誰よりも優れているのです
ぼくより


神様へ
貴方は本当にいるのですか?
ぼくより


神様へ
先日の手紙では愚かな発言をしてしまい、申し訳ございませんでした
貴方様の存在を疑うなんて、あってはならないことです
すみません
お願いです
お願いですから
見捨てないで
ぼくより


神様へ
やはりこの間の内容がいけなかったのでしょう?
だから何も言ってくださらないのでしょう?
申し訳ございません
申し訳ございません
二度とあんなことは致しません
お願いです
どうか、どうか
ぼくより


神様へ
いるなら返事をしてください
ぼくより


かみさまへ
あなたはかみさまなんかじゃなかった
うそつき
ごめんなさい
ぼくでごめんなさい
さようなら
ぼくより


お題『神様へ』

4/13/2024, 1:23:41 PM

空で輝く、眩しい明るい球。
イカロスは、あの球の熱で羽が溶け死んでしまった。
人を恋焦がれさせ、やまない、あの球。
私は、あの球になりたい。

私に?
そう、私になりたいのね。
綺麗だものね、私。
人は私を見て目をしばたかせるわ。私の美しさと言ったら、筆舌に尽くし難いものなんだもの。
ある学者は私をこう表したわ。「太陽」って。おかしな名前よね、笑っちゃう。
私に恋する生き物はたくさんいるのよ、今だって多いけれど、前はもっと凄かったんだから。本当よ。
私に近付きたいあまり、一億と五千キロメートルも離れているのにやって来た人もいたわね。その人は目いっぱいに私の姿を映して、私に近付いたわ。でも、私に触れた途端、破裂しちゃったの。あの時、私とても驚いたわ。
私の体はサラマンダーみたいに熱いの。私に触れて生きていられる人なんか、まずいないのよ。あの人はそれを知らなかったから…。いえ、知っていたのかも知れないけれど、私があんまり素晴らしかったから…。哀れよね。

ああ、私、つまらないわ。
そりゃあ、私は美しいけれど、ただそれだけだわ。それが何になるって言うの。この退屈を埋めてはくれないわ。
それにね、私、ほんとは自分の顔なんか、一度たりとも見たことないの。こんなに大きい私を映せるくらいの鏡なんかないんですもの。
ねえ、私になりたい?
なっても良いのよ
私はもう飽きちゃったわ


お題『快晴』

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