あのこは ぼくを おいて いったよ
ぼくは あのこを おいて いかない
あのこは とおい ところへ いった
そらより とおい とおい ところへ
あのこは ぼくを ひどいと いった
ぼくは あのこの くびを しめた
あのこの くちから よだれが でてた
あのこの ひとみが くるくる まわって
あのこの てあしが ばたばた うごいて
だけど いまは とまってる
あのこの こころも うごいて ないよ
あのこの ひとみを ひとつ すくって
おうちに かえる ぼくと あのこの
ひかりに すかすと ひとみが ひかる
ようこうを あびて きらきら してる
でももう そのめが うごくことは
にどと ないんだ あのこは しんだ
ぼくは いくよ あのこの もとへ
あのこは なんて いうかしら?
お題『遠くの空』
誰が一番好き?って聞かれたら、
あたしあの人を真っ先に思い浮かべるの
世界一好きなの
愛してるの
本当よ
きっと、あの人もそうよ
あの人の中であたしが一番大事なのよ
そうに決まってるわ
だって、あたしとあの人似てるもの
姉妹なんだもの
でも、一番ケンカしてるの
何度も死んでって願ったの
あの人怖いもの
あたしの力じゃ殺せないんだもの
おかしいと思う?
でも、きっと理屈じゃないわよね
上手く言えないんだけど。
愛憎、って言うのかしら
お題『言葉にできない』
四季に目に見える変化があるのは、日本特有らしい。
外国では、寒暖の差はあるもののほとんど景色に変化がなく、明確に四季を分けるのは珍しいことなのだ。
日本で春と言えば、やはり桜だろう。外国でも桜は見られるらしいが、気候や土壌の関係で、日本とは少し違った色合いになるそうだ。
薄桃色。桜色。白色。
私たちにはもう見慣れたそれも、他国の人の目には違うように映っているのだろう。時々、一眼レフを構えて桜を撮る外国人を見かける。
オーストラリアからの留学生に、一度「何で桜の写真を撮るの?」と聞いてみた。
確かに綺麗だとは思うけれど、正直に言えば他の花だって良いような気もする。現に、お花見で本当に花を見ている人なんていない。
彼は、少し考えるように頭上を見やると、笑って言った。
「綺麗だし、それに、春が来たって感じがするよ」
成程な、と思った。
確かに、春を表すのに桜は打って付けだろう。入学式などの祝詞には、必ずと言っていいほど桜が使われている。桜があるだけで、春という季節を思い浮かべるのだ。
これは、桜だけではないと思う。春を連想させる言葉は、きっと他にもある。
そう考えると、桜を散らす雨も、びゅうびゅう鳴る強風も、スニーカーの裏に付く花弁も、春の一つだ。
今日も、春が一つ花開く。
お題『春爛漫』
愛してる。
僕がそう言うと、君は決まって不機嫌になるんだ。
僕が二の句を継げようとしても、嘘つきだ、誰にでも言ってる、そんな風に詰って聞く耳を持たない。
でも、僕は知っている。
君が僕の愛を信じないのは、愛を貰うのが怖いからという事を。
鼻を鳴らしてそっぽを向く君の耳が、赤くなっている事を。
僕もそれが分かっているから、酷いなあなんて呑気な返事をする。
君はそれが余計に気に食わないみたいだけど。
だけど、僕ももう堪えきれなくなっちゃったんだ。
可愛い君を前にして、愛してるだけで終わらせられるだなんて、目の前にチョコレートがあるのに食べられないみたいで辛いんだよ。
ねえ、だから今日は、その先まで言わせてね。
「愛してるよ──」
お題『誰よりも、ずっと』
うん。これが良いかも。
手に収まるくらいのそれを籠に入れる。あれはあと数本はあると良いんだけど…。後で買いに行かなくっちゃ。
そんなことを考えながら、にやけそうになる口角を抑える。
私の願望は、簡単に叶えることができると気付いて以来、ずっとその機会を伺っていた。彼が罪悪感に苛まれて、こんな事をされても仕方ないと考える出来事が起こるのをずっと待っていた。
だから先日、彼が浮気したと分かった時は歓喜に打ち震えた。やっとこの時が来たかと思わず涙が頬を伝う。
手が止まっていることに気付いて、籠に道具を詰めた。もうすぐ彼が目覚める頃だし、急がなくっちゃ。
ああ、彼が私を呼んでいる。手足の拘束に驚いてるのね。ぱたぱたと音を立てながら寝室のドアを開けると、そこでは、困惑に満ちた表情の彼が横たわっていた。
彼は拘束を解いてくれと頼むけど、私は無言で首を横に振る。悲壮感たっぷりに睫毛を震わせる私を見て、彼は泣き出しそうな表情をした。
何て惨めなのだろう。その顔を見ていると、妙な高揚感が湧き上がってくる。
私は彼の横に腰を下ろすと、籠からレンガを取り出した。それを、彼の足に躊躇う事無く振り下ろす。彼の喉がヒュッと冷たく鳴った。
痛みに言葉を発せず、ぱくぱくと口を開く様は金魚みたいで可愛らしい。
「病院じゃないから設備が整わなくってごめんなさいね。私みたいに力の無い女の子があなたの太い骨を切るのは大変だから。ほら、先に折っておくと切りやすいでしょ?」
こういう分野に疎い彼にも分かりやすいよう、説明しながらゆっくりと脚を切断していく。
「痛い?でも悪いのはあなたなのよ」
もっと声を上げるかと予想していたけど、彼は案外静かだった。息を吸うことで精一杯なのかしら。
骨を潰しておいたとは言え、やっぱり時間がかかってしまった。彼は飽きたりしてないかしら。
彼の瞳は辛うじて開いているものの、何も映していなかった。口の端からは涎が垂れていて、それさえ愛おしく思える。
きっと、これが愛なのね。
「これからも、ずっと一緒よ♥」
お題『これからも、ずっと』