ななせ

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9/8/2024, 6:18:56 AM

彼は駆けていた
とても美しかった
その姿は溶けた人々の心を固め、明日への勇気を授けた
彼は歌っていた
とても美しかった
その歌は耐える人々の耳を清め、綺麗な涙を流させた
彼は踊っていた
とても醜かった
その足の運びが不快であり、その口の上がり方が気分を害した
美しい歌とのアンバランスさが、より彼を不気味にさせた
ただそれだけで人々の期待は打ち砕かれ、彼を必要としなくなった
彼は踊り続けた
足の皮が擦り切れようと
唇を噛み締め痛みに耐えた
その行為は人々に滑稽に映った
彼は踊るのを辞めた
ついでに、生きることも放棄した
彼の骨は盗まれ、
ひとつの杖となった
その杖は、いつも揺れている
ゆらゆらと
全ての者を惹き付ける
ふらふらと
リズムを取って
まるで、


お題『踊るように』

9/6/2024, 1:33:50 PM

時を告げるオウムが
東の空を舞っている
綺麗な円を描いて
力尽きることなく
西の下水の中の出来事
汚いねずみがたくさん
家族を引き連れ
どこかへ行った
片耳のないうさぎに
南を向けと囁いた
そちらには耳も無いのに
そちらには何も無いのに
北の国に住む老人は
ひと言も話さない
ちっとも動かない
老人を皮切りに
そして世界は静かになった


お題『時を告げる』

8/31/2024, 2:55:21 PM

今日のぼくにも何かが足りてな気がする
まにち何か1つが欠けてるぼく
昨日は右手の小指、おととは味覚、その前は感情だったこともある
しんた的なものであればすぐに気付けるのだが、感覚的なものは中々気付きにく。
友人からは怪訝な顔をされたから、顔から何かが欠けてるのかと思ったが、それもな。
った、今日のぼくには何が足りなのだろう。


お題『不完全な僕』

8/23/2024, 2:14:21 PM

海にいきたいですねえ
海に行って、人魚に足を攫われたいですねえ
あなたは波打ち際の砂の
あのずぞずぞした動きをなんだと思ってるのです
波のせいではないのです
あれは、人魚のしわざです
人魚は食べると長生きできます
無病息災と言われます
ですが人魚の世界では逆なのです
人間を食べると長生きできるのです
互いが互いを食おうとしているから
人魚はわれわれの前に姿を現さないのです
子分の波に足を掬わして
それからがぶりとやる気なのです
ではなぜ私は海に行くのでしょう
人魚に攫われるのに
食べられてしまうかもしれないのに
あの日あの時あの海中で
見たにじいろの人魚のうろこが
忘れられないとでも言うのでしょうか
さもありなん
誰にも分かりはしませんでしょうが


お題『海へ』

8/22/2024, 12:48:57 AM

もしも空が飛べたら
鳥になれたら
あなたの魂が天国に昇るその前に
私が攫って行けるのに
その魂を誰にも渡さず
お腹にしまっておけるのに
私が産む卵は全部無精卵だけれど
あなたの魂と私の魂とが混じって
いつか出来損ないの子が生まれないかと願ってる
出来損ないの子を私は抱えて
あなたの姿を映して
その子が巣立つその時に
私はやっと死ねるのに
私に空が飛べたなら
鳥のように、あなたの魂と一緒に空へ上がれたら


お題『鳥のように』

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