ななせ

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空で輝く、眩しい明るい球。
イカロスは、あの球の熱で羽が溶け死んでしまった。
人を恋焦がれさせ、やまない、あの球。
私は、あの球になりたい。

私に?
そう、私になりたいのね。
綺麗だものね、私。
人は私を見て目をしばたかせるわ。私の美しさと言ったら、筆舌に尽くし難いものなんだもの。
ある学者は私をこう表したわ。「太陽」って。おかしな名前よね、笑っちゃう。
私に恋する生き物はたくさんいるのよ、今だって多いけれど、前はもっと凄かったんだから。本当よ。
私に近付きたいあまり、一億と五千キロメートルも離れているのにやって来た人もいたわね。その人は目いっぱいに私の姿を映して、私に近付いたわ。でも、私に触れた途端、破裂しちゃったの。あの時、私とても驚いたわ。
私の体はサラマンダーみたいに熱いの。私に触れて生きていられる人なんか、まずいないのよ。あの人はそれを知らなかったから…。いえ、知っていたのかも知れないけれど、私があんまり素晴らしかったから…。哀れよね。

ああ、私、つまらないわ。
そりゃあ、私は美しいけれど、ただそれだけだわ。それが何になるって言うの。この退屈を埋めてはくれないわ。
それにね、私、ほんとは自分の顔なんか、一度たりとも見たことないの。こんなに大きい私を映せるくらいの鏡なんかないんですもの。
ねえ、私になりたい?
なっても良いのよ
私はもう飽きちゃったわ


お題『快晴』

4/13/2024, 1:23:41 PM