空で輝く、眩しい明るい球。
イカロスは、あの球の熱で羽が溶け死んでしまった。
人を恋焦がれさせ、やまない、あの球。
私は、あの球になりたい。
私に?
そう、私になりたいのね。
綺麗だものね、私。
人は私を見て目をしばたかせるわ。私の美しさと言ったら、筆舌に尽くし難いものなんだもの。
ある学者は私をこう表したわ。「太陽」って。おかしな名前よね、笑っちゃう。
私に恋する生き物はたくさんいるのよ、今だって多いけれど、前はもっと凄かったんだから。本当よ。
私に近付きたいあまり、一億と五千キロメートルも離れているのにやって来た人もいたわね。その人は目いっぱいに私の姿を映して、私に近付いたわ。でも、私に触れた途端、破裂しちゃったの。あの時、私とても驚いたわ。
私の体はサラマンダーみたいに熱いの。私に触れて生きていられる人なんか、まずいないのよ。あの人はそれを知らなかったから…。いえ、知っていたのかも知れないけれど、私があんまり素晴らしかったから…。哀れよね。
ああ、私、つまらないわ。
そりゃあ、私は美しいけれど、ただそれだけだわ。それが何になるって言うの。この退屈を埋めてはくれないわ。
それにね、私、ほんとは自分の顔なんか、一度たりとも見たことないの。こんなに大きい私を映せるくらいの鏡なんかないんですもの。
ねえ、私になりたい?
なっても良いのよ
私はもう飽きちゃったわ
お題『快晴』
あのこは ぼくを おいて いったよ
ぼくは あのこを おいて いかない
あのこは とおい ところへ いった
そらより とおい とおい ところへ
あのこは ぼくを ひどいと いった
ぼくは あのこの くびを しめた
あのこの くちから よだれが でてた
あのこの ひとみが くるくる まわって
あのこの てあしが ばたばた うごいて
だけど いまは とまってる
あのこの こころも うごいて ないよ
あのこの ひとみを ひとつ すくって
おうちに かえる ぼくと あのこの
ひかりに すかすと ひとみが ひかる
ようこうを あびて きらきら してる
でももう そのめが うごくことは
にどと ないんだ あのこは しんだ
ぼくは いくよ あのこの もとへ
あのこは なんて いうかしら?
お題『遠くの空』
誰が一番好き?って聞かれたら、
あたしあの人を真っ先に思い浮かべるの
世界一好きなの
愛してるの
本当よ
きっと、あの人もそうよ
あの人の中であたしが一番大事なのよ
そうに決まってるわ
だって、あたしとあの人似てるもの
姉妹なんだもの
でも、一番ケンカしてるの
何度も死んでって願ったの
あの人怖いもの
あたしの力じゃ殺せないんだもの
おかしいと思う?
でも、きっと理屈じゃないわよね
上手く言えないんだけど。
愛憎、って言うのかしら
お題『言葉にできない』
四季に目に見える変化があるのは、日本特有らしい。
外国では、寒暖の差はあるもののほとんど景色に変化がなく、明確に四季を分けるのは珍しいことなのだ。
日本で春と言えば、やはり桜だろう。外国でも桜は見られるらしいが、気候や土壌の関係で、日本とは少し違った色合いになるそうだ。
薄桃色。桜色。白色。
私たちにはもう見慣れたそれも、他国の人の目には違うように映っているのだろう。時々、一眼レフを構えて桜を撮る外国人を見かける。
オーストラリアからの留学生に、一度「何で桜の写真を撮るの?」と聞いてみた。
確かに綺麗だとは思うけれど、正直に言えば他の花だって良いような気もする。現に、お花見で本当に花を見ている人なんていない。
彼は、少し考えるように頭上を見やると、笑って言った。
「綺麗だし、それに、春が来たって感じがするよ」
成程な、と思った。
確かに、春を表すのに桜は打って付けだろう。入学式などの祝詞には、必ずと言っていいほど桜が使われている。桜があるだけで、春という季節を思い浮かべるのだ。
これは、桜だけではないと思う。春を連想させる言葉は、きっと他にもある。
そう考えると、桜を散らす雨も、びゅうびゅう鳴る強風も、スニーカーの裏に付く花弁も、春の一つだ。
今日も、春が一つ花開く。
お題『春爛漫』
愛してる。
僕がそう言うと、君は決まって不機嫌になるんだ。
僕が二の句を継げようとしても、嘘つきだ、誰にでも言ってる、そんな風に詰って聞く耳を持たない。
でも、僕は知っている。
君が僕の愛を信じないのは、愛を貰うのが怖いからという事を。
鼻を鳴らしてそっぽを向く君の耳が、赤くなっている事を。
僕もそれが分かっているから、酷いなあなんて呑気な返事をする。
君はそれが余計に気に食わないみたいだけど。
だけど、僕ももう堪えきれなくなっちゃったんだ。
可愛い君を前にして、愛してるだけで終わらせられるだなんて、目の前にチョコレートがあるのに食べられないみたいで辛いんだよ。
ねえ、だから今日は、その先まで言わせてね。
「愛してるよ──」
お題『誰よりも、ずっと』