ななせ

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4/8/2024, 12:42:39 PM

うん。これが良いかも。
手に収まるくらいのそれを籠に入れる。あれはあと数本はあると良いんだけど…。後で買いに行かなくっちゃ。
そんなことを考えながら、にやけそうになる口角を抑える。
私の願望は、簡単に叶えることができると気付いて以来、ずっとその機会を伺っていた。彼が罪悪感に苛まれて、こんな事をされても仕方ないと考える出来事が起こるのをずっと待っていた。
だから先日、彼が浮気したと分かった時は歓喜に打ち震えた。やっとこの時が来たかと思わず涙が頬を伝う。
手が止まっていることに気付いて、籠に道具を詰めた。もうすぐ彼が目覚める頃だし、急がなくっちゃ。
ああ、彼が私を呼んでいる。手足の拘束に驚いてるのね。ぱたぱたと音を立てながら寝室のドアを開けると、そこでは、困惑に満ちた表情の彼が横たわっていた。
彼は拘束を解いてくれと頼むけど、私は無言で首を横に振る。悲壮感たっぷりに睫毛を震わせる私を見て、彼は泣き出しそうな表情をした。
何て惨めなのだろう。その顔を見ていると、妙な高揚感が湧き上がってくる。
私は彼の横に腰を下ろすと、籠からレンガを取り出した。それを、彼の足に躊躇う事無く振り下ろす。彼の喉がヒュッと冷たく鳴った。
痛みに言葉を発せず、ぱくぱくと口を開く様は金魚みたいで可愛らしい。
「病院じゃないから設備が整わなくってごめんなさいね。私みたいに力の無い女の子があなたの太い骨を切るのは大変だから。ほら、先に折っておくと切りやすいでしょ?」
こういう分野に疎い彼にも分かりやすいよう、説明しながらゆっくりと脚を切断していく。
「痛い?でも悪いのはあなたなのよ」
もっと声を上げるかと予想していたけど、彼は案外静かだった。息を吸うことで精一杯なのかしら。
骨を潰しておいたとは言え、やっぱり時間がかかってしまった。彼は飽きたりしてないかしら。
彼の瞳は辛うじて開いているものの、何も映していなかった。口の端からは涎が垂れていて、それさえ愛おしく思える。
きっと、これが愛なのね。
「これからも、ずっと一緒よ♥」


お題『これからも、ずっと』

4/7/2024, 12:35:41 PM

君だけを一生愛してる
いや
駄目だ
俺がそんな事を言ってはいけない
今までだって
証明できなかった
それを言う資格は無い
やめろ
好きだ好きだ
あっちへ行け
あっちへ行ってしまえ
もう俺へ近寄るな 
そうだそのまま 
二度と振り向くな
もうやめろ
夕日のような髪を見るのは辛いんだ
どうせ夕日なら
沈んでしまえ
沈んでくれ
頼むから朝日になって上らないでくれ
どうせいなくなるのなら
初めからいない方が


お題『沈む夕日』

4/6/2024, 1:29:44 PM

僕は君の目が好きだ。
冬の湖みたいに冷たい、氷の瞳。
友達は恐ろしいと言っているけれど、僕はあの瞳が好きだ。
君は中身も氷みたいで、堅くて冷ややかな癖に触れると溶けてしまいそうなくらい弱い。
けれど、芯は強い。
そんなアンバランスさに、僕は惹かれたんだ。
ああ、でも、あいつを眺めると、君の目は氷じゃなくなるんだ。そう、例えば春の空みたいに暖かく優しく包み込む、聖母のような眼差し。
その目を見ると、僕の心は氷の破片が刺さったようにチクリと痛む。
君のその目が、何かの間違いでこちらに向けられたら良いのに。
そんな事を考えながら、今日も君を見つめている。


お題『君の目を見つめると』

4/5/2024, 1:20:59 PM


   星空の下で、あなたが話してくれたおとぎ話。
   自作だったから毎回内容が変わって、リクエ
   ストしない限り同じ話が出てくることはまず
   ありえなかった。
   宙を舞うティアラに、踊り出すポット。触れ
   るたび色が変わる虹色きのこだって出てきた。
   けれど、その奇妙キテレツな物語を締めくく
   るのはいつも陰鬱なピエロで、それが変わる
   ことだけは絶対になかった。
   全ての物には、決まって終わりがある。今は
   煌めき囁く星だって、いつかは死ぬ。
   あなたは不思議な人だったけど、やっぱり、
   その決まりからは逃れられなかった。
   今の私は、あなたの行動をなぞっている。
   砂漠で会った少女に、自作の物語を聞かせて
   やった。
   真っ黒い瞳を輝かせて、もっと話せと急かし
   てくる。
   その少女は物語にいちいち質問を投げかけて
   くるから、話がちっとも進まない。
   あなたと過ごした一ヶ月。聞いたおとぎ話の
   数は三十話。
   私がその話数を話し終えるまで、何ヶ月かか
   ることか…。


         お題『星空の下で』

4/4/2024, 1:03:59 PM

愚かな子供は可愛いねえ
私が教えてあげるから
うん
勉強もさせてあげる
おいしい料理も食べさせてあげる
子供の作り方も教えてあげる
可愛いねえ可愛いねえ
私が正しいんだから
この世で一番正しいんだから
お前はただ雛鳥のようにしていなさい
そうよそれでいいの
そうしていれば餌を貰えるのよ
お前の姉さんは賢かったから
だからいないのよ
あれはもういないのよ
お前は愚かだから
私とここで暮らすのよ
嬉しいねえ
誰よりも大好きな私と一緒
分かったらさっさと泣き止みなさい
私が次来る時までそのままだったら
お前も姉さんのようにしてやるから


お題『それでいい』

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