貴方は、遠くへ行ってしまう。何処までも、深く、遠くへ行ってしまう。私が近付くほど、何処かへ行ってしまって、いつしか貴方は帰って来なくなってしまった。
私が、貴方を愛しすぎてしまった。そのせいで、貴方は旅立ってしまった。私が追い込んでしまった。貴方はまだ幼かったのに、他界してしまった。私が殺したようなものだ。母親として、私は失格だ。
私の可愛い子、どうか、こんな母親を許さず、恨んで、そちらで待っていて。
私は毎日、手紙を書いている。この手紙の存在は、他の誰にも言わないでいる。その印に、手紙を書き終わった後は、いつも手紙を燃やしている。この手紙は、誰にも知られてはいけないのだ。
私は、心の内のことを、手紙にして燃やしている。そうすることで、気分が少しマシになる。私は、誰にも自分のことが話せない。だからこうして、手紙にしているのだ。
未来への鍵、それは私である。私が死ぬのも、私が生きるのも、私の全ての行動は私が握っている。だからいつ死ぬかなんて私には分からない。その時が来れば、私は躊躇なく死ぬだろうが、今では無い。いつ死ねるかと待ちわびて今日も生きているが、もう飽きてきた。死にたい思いで沢山である。この文を読んでいる君も、これを読んでどう思うのだろうか。きっとつまらないと思うに違いない。私もそう思う。やけくそに鍵を掴むのは良くない。
私は貴方と一緒に心中をしたかった。しかしそれは、無理な話です。私たちは別の時代で生まれてしまいました。もし同じ時代に生まれていたら、私は幸せに死ねたでしょうに。しかし、貴方に迷惑を掛けていたことは間違いないでしょう。
私は貴方のお陰で小説家になるという目標を立てました。今生きているのも、今死んでいないのも、全て貴方のお陰なのです。私は貴方と一緒の道を歩みたい。欲を言えば、貴方と小説家として関わりたかった。ですが、貴方は既に死んでいる。私は貴方の代わりに、芥川賞を受賞したいと思っております。なのでどうか、この世間が私を見てくれるかは分かりませんが、私が死んだら小説家として私を褒めていただきたい。
私はいつも1人の人形と過ごしている。幼い頃から今まで、生きている友達が出来たことがない。両親も日々喧嘩ばかりして、私には一切興味を示さない。そんな中、私はただ1人人形とのお喋りに夢中になっていた。
今日も私は寂しさを紛らわすために、惨めな自分から逃げるために、人形に話しかける。人形は相変わらず会話をしてくれるはずはなく、ただ一方的に私が話しているだけだった。こんな情けない姿を、外の人間に見せることは出来ない。こんな姿をさらけ出した途端、皆私から更に距離を置いてしまうだろう。私はそんな妄想をしながら、人形にまた話しかける。人形に話しかけ続けたところで、寂しさは倍増するだけだ。そんなことは分かっている。しかし、こうすることでしか私はこの日常を乗り越えることが出来ないのだ。私は惨めで醜く孤独な存在だ。私と入れ替わってくれる人などこの世にはいない。幸せな者はそのままずっと幸せで、私のような孤独で寂しい人間は、一生このままなのだ。この事実だけは動くことがない。
私は今日も、この先も、一生、永遠に、この人形と寂しく生き続けるのだ。