「愛してる、今までも、これからも。」
その言葉が僕を蝕む。僕だって愛してる。ずっとずっと。
-全部、全部遅かったのかな。
素直に好きだと言っていれば、何か変わったのかな。
迷いなく好きだと、愛してると言えば…
君の元に行けるのかな。
『どこにいるの?教えて。』
空虚に向かって問いかける。答える声なんかない。
途端に心を黒い何かが覆う。
まるで水の中で藻掻いてるみたいだ。
思うように息が出来なくて、苦しくて、
会いたい。人目でいいから、君に会いたい。
その想いだけが僕の中にあった。ずっと。
笑顔の裏に、優しさの裏に、僕という存在の中に
君への想いがあって。苦しかったよ。
だんだん僕の世界に色が無くなったんだ。
君の居ないこの世界になんの価値も無いからさ。
でも、彼らはこんな僕の背を撫でてくれた。
受け止めてくれた。赦してくれた。
君に想いを素直に伝えられなかった事、上手く嘘をつけなくて心配と迷惑をかけた事、全部を彼らは赦してくれた。
だから、
-色の無い世界で生きていた昨日までの僕とは
さよならしよう。
そして、こんな僕を救ってくれた人達の手を取って
明日からを生きていこう。
まだ子供のままでいたい。
そう毎日思う。
子供のままなら自分だけの力で生きていかなくても
誰かが助けてくれる。
子供のままならやる事全部自分の責任なんかにならない。
子供のままなら今感じてるこの感情も、痛みも、苦しみも味合わなくていい。
子供のままなら……
-何度そう思ったか分からない。何度子供の頃に戻りたいと思ったか分からない。
辛い、悲しい、苦しい、寂しい、痛い、泣きたい、叫びたい、逃げ出したい、辞めたい、もう嫌だ、、、
何回頭の中で思い浮かんだか分からない。
大人になる度に願ってしまう。
『子供の頃に戻りたい。この痛みから、息苦しさから
解放されたい。
……まだ、まだ子供のままでいたかった。』
忘れられない、いつまでも
君の声が忘れられない。鈴を転がしたような、優しく、
温かい声が僕の鼓膜に残り続けている。
人は人を声から忘れると言うけど、
僕の場合最初に分からなくなったのは君の顔だった。
何かフィルターのようなものがかかったみたいに
ぼんやりとしか脳裏に浮かばなくなった。
次に忘れたのは君と触れ合っていた感覚。
次は匂い……そして今、僕の中にある"君"は声だけだ。
君が僕にかけてくれた言葉全て覚えている。
その言葉に何回救われたか分からないから。
君の声が好きだ。僕の弱い所を優しく温かく包み込んでくれるような、そんな声だから。
君の声が、言葉が、忘れられないんだ。いつまでも。
『1年後、僕らは何してるんだろうね。』
綺麗な笑顔を浮かべて君はそう言った。
なんて僕は答えたんだっけ。……確か、
-今と変わらず、2人で楽しくやってるんじゃないかな
そう答えた気がする。それに対して君は…
『そっかぁ、僕はね色んな子とこうやって
仲良くなれてたら良いなって思ってる!』
そう言ってたな。でもさ、、
-全然違うじゃん。僕らに仲のいい"親友"みたいな友達は
出来なかったし何より、、
ここに居るのは僕一人じゃないか、、
あの日の会話の時、既に君の身体は病に蝕まれていた。
だからあの時彼が言ったことは
絶対に叶う事ない夢に過ぎない。
叶うはず無かったんだ。
なのにどうして、どうして君は、
僕の頭の中でそんなに綺麗に笑って"ユメ"を語るの…?
-1年後の僕らは離れ離れになっちゃったよ。
君は夜空に浮かぶ鮮やかな星に、
僕は"君"という夢に取り憑かれて、囚われてしまったよ。
お願いだから、これが最後でいいから。
あの日みたいに僕の隣で笑って、手を繋いで、
君の存在を感じさせて……
明日世界が終わるなら何を願おうか。
-僕は過去に戻りたい。過去に戻って皆と共に-
あの日僕は交通事故で家族を失った。
僕だけが助かった。逆に言えば僕以外が犠牲になった。
野次馬の声をBGMに目の前に広がる景色は悲劇そのもの。
立ち込める鉄の匂い、あちこちで転がる人の腕や足、
内臓。
信じられなかった。信じたくなかった。
僕だけが助かって、皆が死んだなんて。
だから僕は僕を恨み呪った。
僕がいなければ皆は生きていたかもしれない。
そんな考えからいつしか僕は
僕の存在を、人生を、選択を恨み呪った。
そうでもしなきゃ、僕は壊れてしまうから。
-もし明日世界が終わるなら何を願う?
『戻りたい、皆が生きていたあの日に。
あの日に戻って、僕も死ぬ。皆と一緒に。
そうすれば今感じてる苦しみも、悲しさも、寂しさも、
感じる事なんてないんだから。
だから、神様。
僕は戻りたい、幸せだったあの日の朝に。
もし明日世界が終わってしまうと言うなら、
最後に皆に会って、抱き締めて欲しい。
そして伝えたいんだ。』
--ありがとうとごめんなさい、そして愛してるを。