君が死んだ。
それは刹那の時だった。
さっきまで隣を歩いて、
他愛も無い事を話して笑っていた筈なのに。
目の前で舞ったは君の血液。
夏らしい匂いの中に香るのは鉄の匂い…。
僕の視界の端に映るのは君の腕…?
遠くに転がるのは君の頭部……
"もう助からない"
その言葉が脳裏に浮かぶ。
きっと期待したかったんだ。
そこで倒れてるのは君じゃない、
事故なんて起きなかった、ってね。
でも、嘘なんかじゃない。
君は今僕の目の前でトラックにはねられて死んだ。
信じたくない。
「ねぇ神様、冗談だよね?
もう少ししたら何事も無かったかのようにあの子は
目を覚ますんだよね?
また僕の名前を呼んでくれるんだよね?
ねぇ、神様?応えて?
なぁ、応えろよ!!!!!!!」
僕の頬に涙がとめどなく流れていく。
刹那の時に起きた悲劇。
この日から僕の人生は大きく変わった。
この世は平等なんかじゃない。
この世は悲劇で溢れてる。
幸せになるべき人ほど救われないんだ。
生きる意味なんてなかった
僕の人生は正しく"地獄"
暴力暴言は日常茶飯事
怪我だって絶えない
声を上げることさえ許されない
だから
考える事をやめた
痛いとか苦しいとか悲しいとか辛いとか
やめて欲しいとか僕を愛して欲しいとか
そういうこと全部考えないようにした
感情全てを捨てた
だからかな
声の出し方が分からない
笑い方が分からない
泣き方が分からない
何もかも分からなくなった
今までどうやって生きてたのか
僕が生きる世界はモノクロの世界
色なんてない
だから
僕の中に
『生きる意味なんてない』
今までも、これからも
いつか、僕も救われるかな
たとえ君との出会いが間違いだったとしても
あの日、君の手を取った事に後悔はない
だって君のおかげで僕の世界は彩やかに染まった
君と生きるという選択をしたお陰で僕の時間は
かけがえのないものになった
それまでモノクロの世界で生きてた僕にとって
君と歩む日々は眩しくて、色鮮やかで
手離したくないと思ってしまう程に
心地の良いものだった
だから僕は、君に逢えて良かった
周りがどれだけ君と関わりを持つことに反対し、
関わりを持った僕に罵倒を浴びせようが
僕は君の手を離したりしない
僕は絶対に君の傍を離れたりなんてしない
-この出逢いが他者にとって間違ったものだったとしても
-桜散る頃に出会った君へ
君を見つけた時、今までにないぐらい僕の心臓は高鳴った
だって君ほど美しい人に出会ったことなんてなかったから
それまで僕の世界に"色"は無かった
モノクロの世界でずっと生きてきた
でもあの日、僕の世界は色付いた
あの日から僕の世界には"色"が溢れた
ありがとう
また会えたら、改めて直接お礼を言いたいな
また会える日を楽しみにしています
-君の美しさに救われた1人より
君の息が止まった日。
君がベットに横たわって動かなくなったあの日。
僕の目からはとめどなく涙が零れ落ちて、
震える手でナースコールを押して、
君の傍に蹲って声を殺して泣いていた。
君の主治医と看護師さんが来るまでずっと。
ただただ、理解が追いつかなかった。
さっきまで弱々しかったけど話してたのに。
深呼吸をするように、深く息を吸って、
眠りにつくように息を引き取った。
葬式が終わった。
僕がまだ中学生だった事もあり、誰が引き取るかで
少し揉めていた。
僕はそれを遠目に兄さんのことを考えた。
今頃父さんと母さんに会えたであろう兄さんに、
贈る言葉はこれしかないだろう。
-兄さん、また逢いましょうね。
ずっと先の未来で、皆と幸せに暮らせるような、
ここではない、どこかで。