月影 零

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君が死んだ。
それは刹那の時だった。
さっきまで隣を歩いて、
他愛も無い事を話して笑っていた筈なのに。
目の前で舞ったは君の血液。
夏らしい匂いの中に香るのは鉄の匂い…。
僕の視界の端に映るのは君の腕…?
遠くに転がるのは君の頭部……
"もう助からない"
その言葉が脳裏に浮かぶ。
きっと期待したかったんだ。
そこで倒れてるのは君じゃない、
事故なんて起きなかった、ってね。
でも、嘘なんかじゃない。
君は今僕の目の前でトラックにはねられて死んだ。
信じたくない。

「ねぇ神様、冗談だよね?
もう少ししたら何事も無かったかのようにあの子は
目を覚ますんだよね?
また僕の名前を呼んでくれるんだよね?
ねぇ、神様?応えて?
なぁ、応えろよ!!!!!!!」
僕の頬に涙がとめどなく流れていく。


刹那の時に起きた悲劇。
この日から僕の人生は大きく変わった。
この世は平等なんかじゃない。
この世は悲劇で溢れてる。
幸せになるべき人ほど救われないんだ。

4/28/2023, 11:55:44 AM