[とあるCDショップ]
いま巷で人気沸騰の7人組アイドルグループ
"Earth Light"の新曲「南の海の誘惑」が絶賛発売中!
[船を出そう~鮮やかな大海原♪
連れて行くよ~君も一緒に♪
冒険しよう 知りたいのさ
君の心 オモテもウラも奥底まで♪
シーベッ シーベッ シーベッ シーベッ♪]
きゃあ🖤十六夜クン!(´▽`)
普段インテリで物静かなチハルは声を弾ませる。彼女にこんなテンションがあるのは意外。レンタルコーナーでホラー映画を物色するナツキとは…やはり趣味が合わなそう。
結局、ユウキに誘われて俺はナツキも連れて、クラスの女子たちと路草に付き合うことに。
ヘッドホンで試聴する俺に、後ろから膝カックンするスーツの中年男(笑)。
!(ノ゚д゚)ノ!!わっ! 噂の米国人、ジャックさん。
楽しそうだな。何聴いてるんだ?
訛りのない日本語でこちらに興味津々。流行りに疎いからアイドル講義を受けていることを話したら、案の定笑われたf(^_^;
南の海の誘惑…ジャックはCDの歌詞カードを眺めると、買うと言い出して、その場を後に。彼は米国の不動産会社の会長。日本の支社を指導する為に来日しているとか。でもその行動は謎。
[支社に戻るジャック]
(日本ではマスコミで流せない情報はエンタメを経由する。この曲もおそらく)
earth light…地球からの光。つまり月面管制局からのリーク。
南の海…月の南東(緯度38.9S 経度93E )
オモテとウラ…月の表と裏側に跨がった地点。
シーベッ…seabed。月の海底…発掘作業に進展?
十六夜…調査開始から16日目。
はい。こちら専用回線。ミスタージャック、どうされました?
南の海の誘惑…とても良い曲ですね(^^ゞ
ありがとうございます。調査がまとまり次第、報告書を送付いたします。お疲れ様です。
俺たちの"能力"について調査する事は、彼の仕事のひとつらしい。そして試練を課すのも、その能力を伸ばす為。経営している会社も本業とは別の目的があるかのも…?
ちょっと、待ちなさい。
えっ? 振り向くと、腕を組んで立つ彼女。思えば中学から同じクラスの北岡ユウキだ。
あんたたち、いつも3人でしか話さないじゃない?少しは他のクラスメイトとも交流したらどうなのよ┐(´д`)┌
末山サトル・宇辺ナツキ・井河マスミ。俺たち3人は人見知りな共通点からか、いつも付き合いが狭くなりがちだ。
もっともアニメやホラー映画・時代劇好きでは、周りとも趣味が合わない。
せっかく高校・クラスまで同じなんだから、もう少し距離を縮めても…いいんじゃない?
体育会系で男勝りな彼女。クラスを引っ張るリーダー気質な面もあるが…ちょいお節介f(^_^;
ふう、やれやれといった様子のナツキとマスミ。
サトル!お前に任せた(^^ゞ(^_^)/
おぃ、二人とも!?(´□`; 三 ;´□`)
[二人で下校する]
あんた。あのジャックって米国人に目付けられてるでしょ?彼が声をかける相手って何か"持ってる"みたいなのよね。
ユウキは俺の"能力"に勘づいている。そしてナツキやマスミもジャックさんに声を掛けられていた。この青空三高のこのクラス自体が、そういう生徒を集めているのかも。
中学の時あんたと一緒の班で行動した遠足。足を踏み外して、危うく坂から転げ落ちそうになった。でもあんたと目が合った途端に、ほんの一瞬、身体が浮いた。説明がつかないけど、きっとあんたに助けられたんだと思ったわ。
そう。こういった事が起こるから、周りに距離を置いていた…でも彼女だけがこちらに一歩踏み込んだ。
ありがとう…遅れたけど、一言言いたかったの。
彼女との距離が少し縮んだ出来事だ。ここから様々な事件や試練に巻き込まれていく。
そのホコリをかぶった書物。
手を伸ばすと丸いドアノブが浮かびあがり、開けると吸い込まれるように世界に入っていく。
そこは木造の家のリビング。暖炉の前のロッキングチェアにお婆さんが編み物に励んでいる。
こちらに気づくと、立ち上がり歓迎してくれた(^_^)/
ふとお腹が鳴って思わず顔を見合わせる。するとお婆さんは笑い、キッチンに向かってじゃがいもや玉ねぎを刻み始めた。
今夜はシチューになった。
終始談笑しながら、お婆さんと語らった。外は吹雪いていたけど、暖炉の火は暖かくて心まで暖まった。
眠気がおそってくると、お婆さんは毛布を掛けてくれた。
目を開けると…母が。そういえば、母の部屋の整理
をしていた途中。
それは生前の祖母が書いていた日記。母が祖母の亡くなった後に引き取ったものだった。
あれは夢…それとも?
"ドブネズミみたいに~美しくなりたい♪
写真~には写らない…美しさがあるから~♪'
ただいま。
おぅ、マイ。お帰り~。
好きだね~その歌f(^_^;
あぁ。この曲初めて聴いたとき、お前と出会った時を思い出したわ(-。-)y-~
ばーか。やめてよ(/´△`\)
仕事でやらかして、取引先と揉めて、世話してくれた上司の顔に泥塗って…クビ。あん時はマジで散々だった。
あんたって、お世辞や建前が苦手だよね。不器用が服着て歩いてるって感じ(笑)。
親が教師だったからかな。文字通り反面教師で育ったつもりだったけど、嘘や見栄を張るのは…どうにも性に合わない(-。-)y-~
でもそれがコウジの良さだよ。初めて合コンで知り合った時、私のこと"厚塗り"って茶化して…(-_-)
あれシラフだったら、絶対ぶん殴られてた(笑)。
あ、思い出したらぶん殴りたくなってきた( ̄^ ̄)
いやいやいや!(/´△`\)
美しさって何だろうね。まぁ、厚塗りなのは本当だし。これでもレースクイーンだよ(笑)。胸にカップ入れたり、ウエスト矯正したりさ。
…そんな見てくれだらけの私どう思う?
たしかに、イベントでカメラ小僧に囲まれてるのを遠くで見てた時は退いたわ(-_-;)
でも、その時のお前の楽しそうな顔はまちがいなく本物だし、美しさはありのままの自分だと思う。
実際、あの賑やかな輪の中心にいるのは楽しいし(^^ゞ
だろ。お前が好きでやってるなら反対しないよ。そりゃあ舐めるような視線で見られてるのはイヤだけどさ(-。-)y-~
ねぇ…今夜すっぴんでいい?
"リンダリンダ~♪"
リンダリンダ~!( `Д´)/♪
オルァ!ごまかすな!このドブネズミ!(*`ω´*)
あの時は、みんな空を見上げていた…いつも。
あの時は、周りを見渡せば顔があった…いくつも。
あの時は、誰かが話しかけてきた…こっちも話しかけに行った。
あの時は、文字を書いていた…ノートに。
あの時は、皆で遊んでいた…全力で。
…………………?
この世界はもっと無限に思えるくらい広かった。でもいつの間にか、動く画面に釘付けになっていた。
最初は大きな画面だった。デートに使った。
次は家の中に入ってきた。家族で夢中になった。
その次は手の平サイズになって、みんな手の平の画面を…?
この世界は、いつからそんなに小さくなったのか。
見上げれば、いつもの青空。
この世界は、いつでも無限。