【溢れる気持ち】
自分に生きている意味があるのかずっとずっと考えて考えて不安になる。
価値がないと思うし、たとえ居なくなっても気づかれないと思うし、むしろ居なくなったって喜ばれるかもしれない。そんな存在が薄い人間で、私には居場所なんてない。
ただ生きているだけで意味があるというけれど本当にそうなのかなと疑心暗鬼になって更に不安になって暗い気持ちになる。
だけど、その今でも溢れだしそうな気持ちをぶつけたときに「生きていていいんだよ。生きていてくれ」と言われたことがある。「あなたが居ないと私も生きない」と言われた。そんな不安定な関係で危ない関係。だけど、私を必要としてくれている人がいる。それだけでほんの少しだけ心が温かくなった。
居場所を見つけるというのは難しい。自分では見つけれないことも多々あるだろう。逆に傍にいる誰かが与えてくれることもあるだろう。居場所を見つけるということは双六のようないわば確率のようなものだ。だから早まるのではなく、今はまだその段階に来ていないだけだと考えるといいのかもしれない。
今は、その辛いかもしれないマス目を、少しずつ進んでいって時には一休みをして、その時を待ってみよう。時には誰かと同じマス目に止まるかもしれない。そのときにお互い辛いことを話してお互い励まし合いながら進んでいこう。
【Kiss】
読み聞かせで白馬に乗った王子様が現れてキスをしてその後幸せになる。そんな物語。それに憧れていて、大きくなったら女の子には全員王子様にはやってくると思っていた。
現実はそんなに甘くない。白馬になんて乗ってないし、そもそも王子様なんて日本にはいない。
特にこれといった恋愛経験もなく、あっという間に専門学校に進んでいった。
専門学校は3年時に2週間の実習、4年生のときに3ヶ月を二回の実習と国家試験を受験する。そんな学校だった。
2年生のときに体調を壊し、病院が苦手になった。3年生のときは病院が苦手になったことと、環境の変化に慣れなかった私は、実習中も体調を壊したりしていた。そんな私にずっと連絡をくれる男子が居たのだ。どんなに心強かったことか。いつものやり取りをして安心でき、どうにか実習を乗り切ることができた。
4年生の実習のときもその男子はほぼ毎日連絡をくれた。くだらないやり取りではあったがそれでも連絡をくれていたのが嬉しかった。
気づかないうちに段々と彼のことが気になってきて目で追ってしまうようになっていった。それでも関係は変えたくない。だからこの気持ちは閉まっておこうと決めた。
卒業が近づくにつれ、本当に気持ちを伝えなくていいのか?後悔しないか?そんな気持ちになってきた。なら、いっそのこと卒業式の日にLINEで告白しよう。気づかれないようにあいうえお作文にして……。そんな緻密な計画を立てた。たて読みにすると「すきでした」になるようにした。
当日、気づいてほしい気持ちと、降られたくない気持ちの両方で複雑な感情だった。
結果はまさかの両想い。
嬉しかった。聞いてみたら、私が環境の変化に苦手なのを知っていてほぼ毎日連絡をくれていたとのこと。
王子様は居なかったけれど、顔はいいとは言えないが性格がいい。私にとって彼は王子様だった。
これからもずっと彼と一緒に居たいと思う。
形は違うけれども、結婚をしてキスをして幸せになる。そんな未来が待っているだろう。
【1000年先も】
これから先も私は私で、あなたはあなたでいてほしい。
好きなことも変わらないで、変わらない笑顔で私達に変化はいらない。
変化することは怖いこと。
気持ちも性格も変わってしまったら、私では無くなっちゃいそうで。あなたが私を嫌いになるかもしれないと思うとすごく怖くて。
だから1000年先もその先もずっとずっと変わらない私とあなたでいたい。
これから先、医療が発展して、不老不死になって、それでずっとずっとあなたの隣に居たい。
ずっと変わらないあなたと一緒にいたい。1000年先もその先もあなたを愛している。
【勿忘草(わすれなぐさ)】
私のために取ってくれた花。私を永遠に愛すると証明をするために取ってくれようとした花。
私は確かにあなたが年老いたら私を嫌いになってしまうんじゃないかって心配だった。でもそれは些細なことだった。あなたは何でも私のために尽くしてくれていたのに。
私のためだけにその証明をしようとしてくれた。
それだけで嬉しかったのに……。
私は、あなたが昔から私のことになるとすぐ行動に移して尽くしてくれることを忘れてしまっていた。
流れが激しい川にその花を取りに行くというあなたを制止をしても振り切ったあなた。
私がもっと制止できていたら。私がそんな心配してると言わなければ。
あなたが、最期に
「僕を忘れないで」
と叫んで私に摘んだ花を投げてくれたこと。その言葉。忘れません。
私を永遠に愛してくれた、それを証明してくれたあなたを私は忘れません。
これからも私は一生あなたのことを忘れません。そしてあなたを永遠に愛しています。あなたを想い続けます。
あなたが摘んでくれたこの花とともに。
【ブランコ】
キーコキーコと悲しい音が鳴る。公園のブランコで漕いで見えるのは小さな小さな我が子の丸まった背中。いつもは仲良く遊んでいる友達がいるのに。今日は一人。
「どうかした?」と私は後ろから声を掛ける。
「……友達とケンカした……。」ふてくされたようなでもちょっと寂しそうな声で息子は返す。
「それで、どうしてケンカしちゃったの?」と言いながら私は息子の隣のブランコに腰掛ける。
「俺が大事にしてたもの壊したから、だからもう遊んでやんないって言っちゃった。」
「そっか……。でも本当は言い過ぎちゃったなって思っているの?」
「うん……。」
「なら明日仲直りしてみれば?」
「でも壊したし」
「ちょっと見せて?これ直るよ!大丈夫」
「本当!?」
「大丈夫直るよ。明日は仲直りできそう?」
「出来るかな?」と不安そうな息子を見て私はブランコから立ち息子のブランコの後ろに行き、背中を少し押す。
「大丈夫だって!きっと許してくれる。なんたって自慢の私の息子だからね!仲直りしていつもの元気出しなさいよ!」
ブランコは、背中を押せば高くなる。もちろん自分でも漕げるが二人で協力することは大事だと教えてくれる。また、順番を待つこと、交代すること、子供と目線を合わせることを。そんなことを思いながら明日の息子に背中を押す。