【静かなる森へ】
毎日繰り返しの日々。朝起きて身支度をして、通勤のために満員電車に乗り、会社まで歩く。そして仕事して終わったら、また歩いて駅に向かい、満員電車に乗って帰る。あーなんてこんなにも人と関わらなければいけないのだ。気が滅入る。だんだんと嫌気を差してきて今日は初めてずる休みをとった。今まで、有給消化でしか使ったことがないものを……。罪悪感すら覚える。
森林浴はリラックス出来ると聞く。明日からの仕事のためにも精気を養っておこう。
森林浴とはたしかにいいものだ。少し歩いただけでも気分が晴れる。空気も全く違うし、普段は聞こえない小鳥のさえずりまで聞こえる。癒される。
前を歩いてた人が居なくなった。あれ?さっきまで一緒ぐらいに歩いていたのに。あの小鳥のさえずりを聞くときに目を閉じた一瞬だけで?それにまっすぐな道だったはずなのに姿が見えない。
何だろう。何かが違う気がする。森の奥まで入ってきてしまったかのようだ。だが、道はまっすぐのはずだから心配はないはずだ。地図もあるし大丈夫だろう。そんなことを思って歩いていると明らかに舗装されていない道になっていく。道幅も狭く両側から草がその道まで伸びていて手入れがされてない。こんな道なのか?段々と不安になっていくがとりあえず前へと進む。さっきから目の前が草で生い茂っていて草をかき分けながら進んでいる。これは道を間違えたな。これを今から戻るにしても痕跡もない。まっすぐ進んでいたのかさえ分からないから戻りようもない。山で迷ったときは冷静になり助けをその場で待つか、下山ではなく登れだったか?おそらく登れというのは迷信だろう。さて、どうするか?と考えているうちに、どんどん手と足は勝手に前へ前へと進んでいく。何だかさっきまでとは違いこっちになんだか導かれるようにやや早足になっていた。やっと…やっと…光が見えてきた!光の方に進むと道は開けた。
だが、あったのは木造の大きな図書館。目印になるからと慌てて地図を広げるがそんな場所などなかった。それに看板もないし、名前すら書いていない。どうして図書館かと分かったかというと窓から本がずらりと並んでいるのが見えたからだ。
でも、人なら居るだろうそこで、帰る道を教えて貰おう。そう思い図書館へと足を踏み入れる。
入ると、「おや?こんなところに人間とは久しいな。ククッ…。」と男性の声が聞こえた。ロッキングチェアで本を読む眼鏡をかけた男性だ。やっと道を聞ける!と近づき声をかける。
「すみません。道に迷ってしまって……。この図書館の名前を教えてもらったらどうにか分かるはずなので……。」
「人間、教えてもいいが、帰れないだろうな……。ここは普通の人間は滅多に辿り着けない場所さ。」
「普通の人間は滅多に辿り着けないってそんな場所あるわけないじゃないですか!それにあなただって人間じゃないですか!人間人間って!」疲れているせいか男性に詰めよってしまう。
「少しは落ち着けって。完全に俺が悪い。すまなかった。そりゃあ、驚くのは無理もない。お前は道に迷ったと言ったが、ほんの一瞬で迷ったのではないか?」
「……。そう……。」
「お前、そいつはおそらくこの場所に導かれただけだ。」
「そんな非現実的なことないはずだ。」
「いや、それがあるんだよな~。俺を人間だと思っているだろうが、俺は違う。ここでのルールで種族は教えられないが、お前を人間だと言っちまった手前隠すことは出来ないが、人間じゃないことだけは伝えておく。」
「人間ではない……?だからさっきから人間人間って言ってた?」
「そうさ、お前、最近疲れて心に余裕が無くなってなかったか?そういうので導かれる場所さここは。そして、俺はここの管理者。俺も最初は導かれてきたんだが、色々あって今は管理者になった。」
「疲れてはいた……。だけど、そんなの皆そういう人ばかりだろ。なら、導かれるのは沢山いるはず。久しぶりはおかしくない?」
「あー、それは本当にこの図書館にしか分からない。だが、たしかに人間は、久しぶりだ。とにかくここは色んな種族がいる。歩いて疲れただろう。とりあえず今は何も考えず休め。ここは、お前の自由にして大丈夫な場所さ。怒りで壊しても魔法ですぐ戻るし傷はつかない。走り回ってもいいし床に寝てもいい。本当に自由だ。まぁ、お前からは彼らは、人間にしか見えないだろうが、皆、それぞれ自分の種族の別の姿をしている。ここに居る皆もだ。他の種族に話しを自由にしてOK。ただし、深く詮索はしないこと。種族もお互い教えない。お前は、魔法とかない場所から来ただろうから、すまほ?とかいうやつとかとりあえずその辺りの話はやめとけ。俺含めて皆魔法がある世界にいる。だからその話は避けろ。それ意外は自由にしてかまわない。あぁ、この空間は思い描いたものが好きにだせる。食い物にも寝る場所も何にも困らない。小さい家を思い描けばトイレやらだってある。種族関係なく許可なく出入りは出来ない約束にはなっているから安心しろ。」
「話し長すぎて分からなかった。とりあえず今日は寝ることにするよ。また起きたら帰る方法を探すよ。」
「あぁ、それがいいさ。いつかは帰れる。その日は分からないが。今はおやすみ。」
そう、男性と会話をして、小さな家とふかふかのベッドを想像すると本当に出てきた。ベッドに飛び込んだ。ふかふかのベッドに顔を埋めると自然と涙が出てきて涙が止まらなかった。あの繰り返しの毎日から解放されたんだ。安堵と温かい空間であるこの場所に。でも、
とりあえず今はおやすみなさい。
その後の記憶はなかった。起きたとき「起きたかい?昨日は泣いたのか?目の回りが赤いぞ」と昨日の男性が声をかける。これは夢ではないみたいだ。それに、この管理者という男性だけは種族全部違う風に見えているみたいだ。彼にもこの図書館もまだまだ秘密だらけ。
さて、今日は何をしようかな?
【好きになれない、嫌いになれない】
私は好き嫌いは激しい方だと思っている。食べ物の方ではなく人の方。
前職はリハビリ職。ヒヤリハット出してそれからトラウマになってリハビリから遠ざかった。だけど、お年寄りは嫌いにはなれない。会話はおもしろく、今でも少しよたってる人を見るとヒヤヒヤして助けたくなる。何なら自分から話しに行くほどだ。
でも、なんでもすぐトラウマになる自分、リハビリから逃げるように辞めた自分は好きになれない。というより大嫌いだ。
現在は児童館勤務。元々子供も大好きで、子供の大きな声も赤ちゃんの泣き声も元気に育ってるな。かわいい!って思っている人間だ。でも、突然、聴覚過敏になってからは、全ての音がうるさく感じるようになった。もちろん子供の声も赤ちゃんの泣き声も例外ではない。でも嫌いにはなれない。だって私にちょっかいをかけたり、何日も出勤出来てなかったのに名前を覚えてくれていたり、私にくっついてくるから。かわいくてしかたない。
でも、心に余裕が無くなって、子供に感情的に怒ってしまう自分は好きになれない。私は子供の味方になりたい。職員の中にはやはり叱ると怒るを履き違えている人ばかりいる。これまで私はそんな職員にはならないっていう固い意思で働いてきた。自分都合の感情はいらない。
私は自分を好きにはなれない。お年寄り子供は嫌いにはなれない人間だ。
だが、もちろん例外もある。
固い頭を持った人、仕事が分からず聞いても曖昧な返事しかくれず具体的に教えてくれない人、人の悪口を言う人、噂話が大好きな人、確認したのに後からケチをつける人、人のあら探しばかりしている人、病気や障害とかで差別をする人、資格もっているかどうかや子育てしてるかどうかで差別をする人、受け取り手は傷ついているも、いじめと分かっていない人。
この人達は、どこにでもいるやっかいな人だ。そういう人は好きにはなれない。むしろ好きになってはいけない。子供にもいる。でもそれはそれが当たり前の環境で育ってしまったからそれは被害者なのかもしれない。そういう子供は今のうちにも、正しいことを教えなくてはいけない。将来こういう人達になってしまうだろうから。
私は自分や周りに危害を加えるか加えないかで好き嫌いがはっきりしているのだと思う。
【ささやき】
「ねぇ、知ってる……?」
「あのさ、」
「あの人さ、」
うるさい!うるさい!うるさい!聞きたくない!聞きたくない!痛い痛い痛い!
どうして皆何かを教えたくなるの?
どうして皆何か広めようとしてるの?
どうして皆人のことばかり気にするの?
どうしてひそひそ話をするの?
そんなに他人には聞かせられない恥ずかしいことを話そうとしてるの?
自分以外の誰かが誰か一人でも傷つく話しはダメ。
人のことじゃなくて自分の今の話をしようよ。そんな暇ないはずだよ。毎日必死に生きてる人ならさ。
他の人には聞かせられないような悲しい話しはあとで電話で。楽しい話しもあとで電話で。恋話は皆でしよ。
他は無し。ひそひそ話は、無し。
話しは堂々としよ!
でも、堂々の悪口も無し。
皆が楽しくなる話題を話そ?いっぱいい~っぱい、おはなししよ?
【形の無いもの】
人の心、優しさや愛情、体温、感情、人との空気感、人との間合いなど……。
形が無いものとは相手や人には見えないもの、見えていないものとほぼ同じだと私は考える。
人の手のぬくもり。心が泣いているときに触れる人の優しさや、手のぬくもりはたとえ手は冷たくても何とも形容し難いが凄く温かいものだ。そして、逆に普段意地悪ばかりをしている人の手のぬくもりは温かいが冷たい。それも形はないものだと私は思う。また感じ方はそれぞれ違うだろう。
あったかい空気、冷たい空気。居心地のよし悪し、肌や、感覚では何となく伝わるけれど形は決してない。
つまり、形が無いからこそ目で確かめることができず、比べられるものもなく分かりにくい、人それぞれ基準、感じ方も違くて相手のことを誤って傷つけたり故意に傷つけたり平気で出来てしまう。
だが、その繊細なもの、それが分かるのは動物の特権なのかもしれない。
【私の当たり前】
皆の当たり前を私には出来ない。朝起きてご飯食べて行ってきますって仕事に行けない。
毎朝、起きたらすぐに吐き気が伴う。実際に吐くことは少ないが体調が良いっていうことがほとんどない。この前よりは体調いいかな?とかそれよりは悪いなとか……。
それでも薬も飲まないとダメだし、ご飯は食べないといけないから何とか朝食を食べ薬を飲む。そして支度をしてるけどどんどん吐き気は強くなる。吐き気が強くなると動悸が激しくなり心臓が飛び出るんじゃないか?ってぐらい動悸が凄いが、仕事に何とか行く。
仕事をするのが当たり前ではないのだ。私にとっては仕事に行けて偉い。よく行けたね。1日ももったの?凄いね!が私の日常。甘えと捉えられるかもしれないし、
体調悪いとき、アピールしてる?って思うかもしれないが、アピールじゃない……。なら代わってくれ。結構普通にキツいからな……。
1ヶ月休みなく行けてるのめちゃくちゃ凄すぎなんですが?
「頑張って」→『いや、かなり頑張ってるんですよ……。』
「辞めるって言わない限りはたぶん平気だよ」→『すみません、もう辞めたいんですが。』
「またそうやって仕事辞めようとしてる?そうやって自分は病気ですってアピールしたいの?別に仕事に慣れてきても気持ち悪いふりしなくていいんだよ。頑張ってること知ってるし」
『吐き気止まらないんです。好きでやってるわけない』
『なら、変わってくれよあんたの元気な心と体を私にくれ。その考え方もくれ。』これが切実な願いであり何にも理解してくれてないよなって感じてしまう。
「働いてるのが偉いんじゃないからな!当たり前なんだぞ!」
『その当たり前が今まで出来ていなかった人間なんです。だからそれを今頑張っているんです。』
だから静かに見守っててください。このやり取りも含めて私の日常。