【Kiss】
読み聞かせで白馬に乗った王子様が現れてキスをしてその後幸せになる。そんな物語。それに憧れていて、大きくなったら女の子には全員王子様にはやってくると思っていた。
現実はそんなに甘くない。白馬になんて乗ってないし、そもそも王子様なんて日本にはいない。
特にこれといった恋愛経験もなく、あっという間に専門学校に進んでいった。
専門学校は3年時に2週間の実習、4年生のときに3ヶ月を二回の実習と国家試験を受験する。そんな学校だった。
2年生のときに体調を壊し、病院が苦手になった。3年生のときは病院が苦手になったことと、環境の変化に慣れなかった私は、実習中も体調を壊したりしていた。そんな私にずっと連絡をくれる男子が居たのだ。どんなに心強かったことか。いつものやり取りをして安心でき、どうにか実習を乗り切ることができた。
4年生の実習のときもその男子はほぼ毎日連絡をくれた。くだらないやり取りではあったがそれでも連絡をくれていたのが嬉しかった。
気づかないうちに段々と彼のことが気になってきて目で追ってしまうようになっていった。それでも関係は変えたくない。だからこの気持ちは閉まっておこうと決めた。
卒業が近づくにつれ、本当に気持ちを伝えなくていいのか?後悔しないか?そんな気持ちになってきた。なら、いっそのこと卒業式の日にLINEで告白しよう。気づかれないようにあいうえお作文にして……。そんな緻密な計画を立てた。たて読みにすると「すきでした」になるようにした。
当日、気づいてほしい気持ちと、降られたくない気持ちの両方で複雑な感情だった。
結果はまさかの両想い。
嬉しかった。聞いてみたら、私が環境の変化に苦手なのを知っていてほぼ毎日連絡をくれていたとのこと。
王子様は居なかったけれど、顔はいいとは言えないが性格がいい。私にとって彼は王子様だった。
これからもずっと彼と一緒に居たいと思う。
形は違うけれども、結婚をしてキスをして幸せになる。そんな未来が待っているだろう。
2/4/2023, 1:09:51 PM