名勿し

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10/11/2024, 1:27:48 PM

ベランダへのカーテンの隙間から、貴方の面影が見えた。
もう窓を開けておくには少し肌寒い季節、
寒さと寂しさが肌をちくちくと差していく。
赤く染まる夕陽が虚しくも影を残さずカーテンを差して
それを北風が知らしめる様に揺らしていった。

風が入るから、この時期は窓を閉めてタバコを吸っていた
貴方の気遣いが嬉しくて、窓から顔を出して、
どうしても甘えたくなってしまっていた。

でも、今は大好きな貴方の残り香も、
影も、形も、そこに居たのも分からないほど、
綺麗さっぱり、なくなっていた。

今、ベランダの窓に寄りかかっても、

撫でてくれるのはカーテンだけ。

10/10/2024, 12:13:41 PM

人に弱さを見せない君が、初めて僕の前で泣いた。
君が泣いていたから、僕も涙が溢れた。
でも君が僕よりも苦しそうな顔をするから、
僕は君をなんとか笑わせたかった。

そんなに名前を呼ばなくても、
僕はここに居るのに。

どうしてそんなに泣いてるの?

どうしてこっちを見てくれないの?

君には僕が見えないの…?

10/9/2024, 10:51:39 AM

ココロオドル幸せを全てあなたと共有したい。
あなたがココロオドルことを、もっと教えて欲しい。
そう素直に言えるヒトになりたい。

3/30/2024, 4:56:28 PM

まだ冷たい風が頬を掠め、透き通る様な星空の下、
街灯よりも遥かに明るい星を見て、
貴方は夢を見る様に、恋をする様に、
深く、それはそれは深く息を吐いていた。

彼は天文学が好きだった。
届かない星に手を伸ばして、
虚空を掴んでいるのに、その瞳は
星以上の輝きを持っていて、
私はそんな彼の横にいるのが好きだった。
「僕は生まれ変わったら星になりたい!」
とか、言っちゃったりしてさ、

返って、私は文学が好きだった。
数々の名作を残した文豪たちの息吹を感じながら、
夜が更け、朝日が見えるまで読み込んで、
その物語の世界に没頭するのだ。
彼は、物語に夢中になる私を好きだと言った。

星に恋した彼と
本に恋した私が

かの有名な、宮沢賢治の銀河鉄道の夜の様に、
貴方の大好きな天の川で、電車の席が偶然隣になる様な、
銀河を巡る大冒険の様な、そんな出会いをして、
ほんとうのさいわいを、語らう事ができたなら、

私はどれだけ幸せだったでしょう。

ねぇ、貴方はどうして、銀河鉄道の夜に
私を誘ってくれなかったの…?

酔いが回るとこの事しか考えられない。
積み上げられた未読の本が積もる。
本を読んでもしおりを挟む気にはなれない。

だって、貴方がプレゼントしてくれたしおりはね、
貴方が好きだと言ってくれた、
銀河鉄道の夜、101〜102ページ、
蝎の火の話に挟んであるの。

何気ないふりをしながらね。
馬鹿みたいでしょ?使ってないの、

こんな私を、星になった貴方は笑って見てるのかしら。
夜にしか出てこないなんて、私はいつ本を開けばいいの?
私こう見えて忙しいのよ?

貴方は私の本に跡をつけたのに、
私にも星に恋させようとしてるのね。

本当に、欲張りな人

1/19/2024, 1:31:50 PM

君に会いたくて、君がよく行っていたバーに
今日でもう5日連続で行っている。

しかし、君は現れない。

酒に酔う事しか出来なかった。


君に会いたくて、君が好きだったケーキを
買って家で待っていてもう4日目になっている。

しかし、君は現れない。

ケーキを食べても吐いてしまう。
気持ちだけが肥えて仕方ない。


君に会いたくて、宛て先の無い君のLINEに
『あいたい。』と送って3日目になった。

しかし、君は現れない。

既読すらつかない。
いつもはすぐに返してくれるはずなのに。
いつから束縛する様になったのか。
君が束縛を嫌うのは、知っているはずなのに。


君に会いたくて、君がこだわっていた骨董品を
わざと落としたのは一昨日の事だった。

しかし、君は現れない。

拾おうとして手から血が出ても、
君はその手を握ってはくれない。
怒ってくれる君もいない。
心配してくれる君も、もう居ない。


君に会いたくて、今日は君が居なくなった場所に来たんだ。
今世で結ばれる事は出来なかったけれど、
きっと来世は、今より君を大切にするからね。


そして僕らはもう一度、あのバーで出会い直すんだ。

                        了

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