チキン

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9/21/2024, 1:44:27 PM

もみじまんじゅうを口いっぱいに頬張っている。

目は子どものように輝いていた。

「これ!まじうまい!」

思わず笑みがこぼれる。

「佐藤も食べてみ」

「ありがと」

渡されたまんじゅうに私もかぶりつく。

途端にあんこの甘さが口全体に広がってくる。

「おいしい!」

「だろ!」

2人で笑い合った。



最初の印象は、大人っぽくてクールな人だった。

友達がふざけているのを近くで笑いながら、

見守っている人。

女子への気遣いもできるし、何より顔がいい。

そんな彼を好きにならない女子はいないわけで。

放課後の廊下でよく告白されていた。

何故かすべて断っていたが。

理由は、好きな人がいるらしい。

モテ男から好かれるなんて前世でどれくらいの

徳を積んだんだ、と思った。

でも私には関係ないし、と思っていた数ヶ月後。

何故か私は放課後に彼に呼び出されていた。

そして、なんと彼に告白されたのだ。


「俺、佐藤のことが好きだ。

よかったら、付き合って欲しい。」

「はっ?」


変な声が出たので急いで口を抑える。

そんな私を見て彼は少し笑った。

その笑顔が私には眩しくて、

ノックアウトされるところだった。


まあ、その後なんやかんやで付き合うことになったのだ。


そして、彼の新しい一面を少しずつ知っていった。

彼は、可愛い動物や甘いスイーツが好きらしい。

恥ずかしそうにしている彼のご尊顔を見て、

天に召されそうになったのは内緒。

また、徐々に甘えてくるようにもなった。

つまり、彼のクールなイメージが全て粉々に砕け散ったのだ。

彼のことを好きな子が知ったらどうするだろう。

絶叫するのか神に祈るのか。


まあ、そんなこんなで今に至る。

一言で言うと、子ども。

素直で可愛らしく、意外とシャイな印象だ。

最近は女子より可愛いとも思えてきた。


でも、私はそんな彼が大好きだ。

人前ではかっこつけてクールになるところも、

私と2人きりのときは子供っぽいところも全部。


楓をのせて冷たい風がふく。

貴方のそんなところが秋の肌寒さを吹っ飛ばして、

私の心も体も温めてくれる。

これじゃ滅多に風邪ひかないな、と

密かに思った私なのであった。


- 秋恋 -




9/20/2024, 2:00:36 PM

部活帰りの蒸し暑い日だった。

「思ったことがあるんだけど、」

「なに?」

「私達、いつまで友達でいられるかな?」

なんとなく思い浮かんだことを、

隣に並んで歩いている友達に聞いてみた。


私より少し背の低い友達は、

私の顔を見上げて不思議そうな顔をした後、

顎に手をあてて何やら考え始めた。

彼女のポニーテールが小さくゆれる。


お互い何も言わず、時間だけが過ぎていく。

別れ道が近づいてきたため、

声をかけなくては、と口を開こうとした。

それと同時に友達はパッと顔を上げた。

そして、勢いよくこっちを見る。

思わず後ずさってしまったが、

友達は気にせずに口を開いた。

「さよならの日まで!」

「え?」

「どちらかが死んだときまで!」

「急に重…」

「ひどい」

私は顔をしかめる。

そんな縁起悪いことをよくも簡単に…

と思ったが、確かにそれも一理あると納得する。

すると、友達はさらに続ける。

「もしかしたら、大喧嘩して絶交になったり、
会えなくなったりする日が来るかもしれない。」

彼女は空を見上げた。

私もつられるように空を見上げる。

雲ひとつない晴天だった。

「でも、それは未来の話でしょ?少なくとも、
私達には”今”がある。」

今を楽しく生きようよ!

その言葉が私の心に刺さった。

確かに、そうだ。

未来がどうなろうと、”今”がある。

私の顔を笑顔で見つめている友だちを見て思った。


今、友達や家族と過ごせているこの時間。

そんな”今”を大切にしたい。




- 大事にしたい -


9/19/2024, 2:11:32 PM


花火の大きな爆発音がここ一体に響いた。


屋台がたくさん並ぶ中で、

俺は君の手をひいて人混みを掻き分け進んでいく。

頬をつたう汗が地面におちた。


人混みを抜けた先にあったのは、小さい公園。

人の気配はまったくない。

やっぱり、抜けてきて正解だった。


繋いでいた手を離して君の目を見る。

大きく響く花火の音が、

俺の背中を押してくれるようで。

短く深呼吸をして、

ずっと片手に持っていたりんご飴の棒をにぎる。


「ずっと、好きでした!2年前から!」


花火に負けないくらいの声量で想いを伝える。

君は、一瞬きょとんとした顔を見せた。

が、すぐにクスッと笑う。


「あたしも好き。」

「えっ」


思わず素っ頓狂な声が出てしまった。

そんな俺を見て、君はクスクス笑っている。


あたしも、好き。

ゆっくり脳内再生される。


意味を理解した途端、

ブワッと俺の顔に熱があつまった。


「うーわ、なにこれ恥ず」


「ふふっ」


かなり恥ずかしいけど、幸せだ。


月光に照らされた2つの影がゆっくりと重なる。

あぁ、このまま時がとまればいいのに。



- 時間よ止まれ -






9/18/2024, 2:30:32 PM

「月が綺麗ですね。」


あぁ、貴方が来ないと知っていたら、

躊躇わずに寝てしまったのに。


貴方を待っているうちに、

夜が更けて、

西の空に傾くほどの月を見てしまった。


でも、月が傾く前に、

会えてよかった。


月の光は私たちの道になってくれる。



顔をあげて、笑顔で貴方の顔を見つめる。


「また、月の光を辿って会いに来てくださいね。」



- 夜景 -

9/17/2024, 2:23:30 PM


彼に微笑みかける。

私たちの、2人だけの世界。

周りにはたくさんのお花が咲いている。


「閉じ込められちゃった」


立ち上がって何処かに行こうとするならば、

このお花たちがとめてくれる。


貴方は優しい。

だから、踏めないでしょ?


心の中で思いながら、傍にあった花をちぎる。


「これ、あげる」


貴方の耳にかける。

貴方は不思議そうな顔をしている。

そんなところも愛おしい。

今すぐに貴方の胸にとびこみたい。


「永遠の愛っていう花言葉らしいよ」


手をにぎる。

細くて、骨ばった手。

その手を自分の頬にこすりつける。

お花の匂い。


貴方は純粋だから、

この花のもう1つの花言葉は知らないんだろうな。

知ったらびっくりするかな。


でも、まだ内緒。


だから、ずっと一緒に居てね、?








花言葉は、


『死んでも離れない』


- 花畑 -

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