チキン

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もみじまんじゅうを口いっぱいに頬張っている。

目は子どものように輝いていた。

「これ!まじうまい!」

思わず笑みがこぼれる。

「佐藤も食べてみ」

「ありがと」

渡されたまんじゅうに私もかぶりつく。

途端にあんこの甘さが口全体に広がってくる。

「おいしい!」

「だろ!」

2人で笑い合った。



最初の印象は、大人っぽくてクールな人だった。

友達がふざけているのを近くで笑いながら、

見守っている人。

女子への気遣いもできるし、何より顔がいい。

そんな彼を好きにならない女子はいないわけで。

放課後の廊下でよく告白されていた。

何故かすべて断っていたが。

理由は、好きな人がいるらしい。

モテ男から好かれるなんて前世でどれくらいの

徳を積んだんだ、と思った。

でも私には関係ないし、と思っていた数ヶ月後。

何故か私は放課後に彼に呼び出されていた。

そして、なんと彼に告白されたのだ。


「俺、佐藤のことが好きだ。

よかったら、付き合って欲しい。」

「はっ?」


変な声が出たので急いで口を抑える。

そんな私を見て彼は少し笑った。

その笑顔が私には眩しくて、

ノックアウトされるところだった。


まあ、その後なんやかんやで付き合うことになったのだ。


そして、彼の新しい一面を少しずつ知っていった。

彼は、可愛い動物や甘いスイーツが好きらしい。

恥ずかしそうにしている彼のご尊顔を見て、

天に召されそうになったのは内緒。

また、徐々に甘えてくるようにもなった。

つまり、彼のクールなイメージが全て粉々に砕け散ったのだ。

彼のことを好きな子が知ったらどうするだろう。

絶叫するのか神に祈るのか。


まあ、そんなこんなで今に至る。

一言で言うと、子ども。

素直で可愛らしく、意外とシャイな印象だ。

最近は女子より可愛いとも思えてきた。


でも、私はそんな彼が大好きだ。

人前ではかっこつけてクールになるところも、

私と2人きりのときは子供っぽいところも全部。


楓をのせて冷たい風がふく。

貴方のそんなところが秋の肌寒さを吹っ飛ばして、

私の心も体も温めてくれる。

これじゃ滅多に風邪ひかないな、と

密かに思った私なのであった。


- 秋恋 -




9/21/2024, 1:44:27 PM