光と闇の狭間で
僕にとっての光は貴方が居ること。
僕にとっての闇は貴方を失うこと。
貴方の居ない世界なんて
考えられない。
悲しくても生きるっていうのは
相当勇気がいることだと思う。
楽しくない、苦しいって思うのは
まだ生きたいと思っているから。
理由なんて要らない。
貴方が居て頑張れるのも
貴方が居なくて人生が色褪せるのも
全てこれが僕だから。
人生の別れ道にぶつかっても前を向くのは
思いっきり笑える時を待ってるから。
距離
「クロ物語」
───グゥー…お腹が空いたにゃー
「何か食べたいにゃー」
あ、おいらはクロだ!
全身真っ黒で美しいにゃー!
でも今お腹空いてるんにゃー…
そうだなぁ…何を食べるか迷うにゃ。
ここはやっぱり魚か…?
いや、やっぱり肉か…?
おいらは、じっくり焼いた魚が好きなんにゃー。
いつもご飯を分けてくれるおじさんが居るんにゃー。
おいらが可愛いから当然だけどにゃ!ふん!
生意気そうなクロはいつものように
おじさんの家に向かっていく。
あのおじさんは、いつも縁側に座って
お茶を飲んでいるんにゃ
おいらがやって来ると眩しい笑顔で
ご飯を分けてくれるんにゃー
今日はどんなご飯かにゃー?
ワクワクするにゃ!
「お、おはよう!クロ、今日の飯はこれだぞ!」
出されたのはふっくら焼いた秋刀魚だった。
高めの机に並んであって秋刀魚は遠い。
まぁ、おいらにとっては楽勝だけどにゃ!
ぴょんぴょんと静かに跳び、1口かじり
う、美味すぎるにゃー!
今日も秋刀魚が美味いにゃー!
泣かないで
───ふわっと強く香るラベンダーの花束。
花屋に寄り道する時君は必ず呟くんだ。
「特に深い意味は無いけれど、元気になれるから好きなんだ~」
ラベンダーの花を蒸留して作るアロマオイルに
乾燥させたものをお湯で入れたハーブティー。
ラベンダーの花を粉砕して石鹸や入浴剤に混ぜたり
乾燥させたものをドライフラワーにすることも出来る。
リラックス効果や眠気を誘う効果で
君はいつも緊張ばかりの僕にピッタリだって教えてくれた。
そうだ、今日は君の誕生日だったよね。
プレゼント沢山迷ったけれどきっとラベンダーが喜ぶと思って
実は沢山買ったんだ。
でもすぐに枯れても嬉しくないからと
ドライフラワーにしようと数日前から準備しては
喜んでくれるかなと期待を膨らませた。
───トゥルルルルル…
ん?なんだろう…電話がなっている。
出てみると友達からの電話だ。
「どうした?そんなに慌てて…」
「どうした?じゃないよ!結菜が事故にあった!」
衝撃受けた僕は動揺を隠せず全力で走り事故現場に向かった。
警察と救急車がファンファン…ピーポーピーポーと音が鳴っている。
嘘だろ…結菜は無事なのか!?と
頭がいっぱいで呼吸も荒くなり僕は気を失った。
ごめんね…結菜………
────あの事故から1年経ち、周りも落ち着いてきた頃
あの日君に渡せなかったラベンダーのドライフラワーを
遅めの誕生日プレゼントと墓の前にそっと置いた。
スゥーと涙が零れ、止まらなくなり
子供のように泣きじゃくった。
ぶわっと風が吹いてラベンダーの香りと共に聞こえてくる。
「泣かないで」
冬のはじまり
車内の窓から眺めていると
向こうの山の頂点が白く染まっている。
フー…と息を吐いてみると
雪を吐いたかのように白いモヤ。
美しく咲き誇っている椿は
暖かい色に控えめな優しさで溢れている。
炬燵でぬくぬくと温まっていると
肌がじんわりと熱に溶けていく。
冬って寒くて嫌かもしれないけれど
実は気付いていないだけで
暖かいものが沢山詰まっているんだ。
あちらこちらと視界を広くすれば
心まで暖かくなるんだ。
君もきっと冬を好きになる。
終わらせないで.1
────雨が降っている。
酷く煩い雨の音は僕の嗚咽を掻き消す。
あぁ、もう一度君に会えたら…
なんて心の中で何度も願っても
戻って来ることの無い君の無邪気な笑顔
何度も助けられた暖かい君の声、
僕が作る黒く焦げた卵焼きを
いつも美味しそうに食べる君も
こっそりサプライズで嬉し涙を流した君も、
喧嘩したらスイーツを一緒に選んで
食べて仲直りした思い出も
全部失ってしまった。
「私が居なくても生きて」
終期に君が囁いだ約束。
呪われたかのように僕にまとわりつく。
君が居ない人生は息が詰まりそうで苦しいんだ。
周りの景色は色褪せて生きることさえ辛いんだ。
泣いても戻らないのに涙が止まることはなく
いつもより暖かい朝日が顔を出した。
「終わらせないでよ」
終わらせないで.2
───強く美しく咲き誇っている向日葵。
向日葵を眺めているとふと思い出す。
大きな庭のガーデンからひょっこりと
現れる眩しい笑顔の少年。
あなたはいつも元気に走り回っては
綺麗な景色があると連れていってくれる。
ある日、明日で引っ越すと言われて泣きそうな私は
君と指切りげんまんをした。
「秘密の約束だよ、大きくなったら迎えに行くね」
向日葵と初恋を残して遠くに行ってしまう。
終わらせないでよ…もっと一緒に居たかったよ。
──数年経った今も思い出す。
君にサプライズで思い出の向日葵を買った。
「ただいま~向日葵だよっ!」
家の鍵を開けるとあの頃より低い甘い声で返事が聞こえる。
あぁ幸せだな