終わらせないで.1
────雨が降っている。
酷く煩い雨の音は僕の嗚咽を掻き消す。
あぁ、もう一度君に会えたら…
なんて心の中で何度も願っても
戻って来ることの無い君の無邪気な笑顔
何度も助けられた暖かい君の声、
僕が作る黒く焦げた卵焼きを
いつも美味しそうに食べる君も
こっそりサプライズで嬉し涙を流した君も、
喧嘩したらスイーツを一緒に選んで
食べて仲直りした思い出も
全部失ってしまった。
「私が居なくても生きて」
終期に君が囁いだ約束。
呪われたかのように僕にまとわりつく。
君が居ない人生は息が詰まりそうで苦しいんだ。
周りの景色は色褪せて生きることさえ辛いんだ。
泣いても戻らないのに涙が止まることはなく
いつもより暖かい朝日が顔を出した。
「終わらせないでよ」
終わらせないで.2
───強く美しく咲き誇っている向日葵。
向日葵を眺めているとふと思い出す。
大きな庭のガーデンからひょっこりと
現れる眩しい笑顔の少年。
あなたはいつも元気に走り回っては
綺麗な景色があると連れていってくれる。
ある日、明日で引っ越すと言われて泣きそうな私は
君と指切りげんまんをした。
「秘密の約束だよ、大きくなったら迎えに行くね」
向日葵と初恋を残して遠くに行ってしまう。
終わらせないでよ…もっと一緒に居たかったよ。
──数年経った今も思い出す。
君にサプライズで思い出の向日葵を買った。
「ただいま~向日葵だよっ!」
家の鍵を開けるとあの頃より低い甘い声で返事が聞こえる。
あぁ幸せだな
11/28/2023, 10:58:41 AM