かっぱえびせん

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5/12/2025, 5:00:55 PM

ただ君だけ、って思える人に出会えるのって、
正直、生きててそんなに何度もあるわけじゃないんだよね。
誰かと笑ったり、泣いたり、手をつないだりすることは、
たぶん誰とでもできるんだけど、
「この人だけには見せてもいい」って瞬間は、すごく稀だと思う。

君は、そういう人だった。
うまく言えないけど、
隣にいてくれるだけで、景色が少し柔らかくなるっていうか。
その感覚だけで、生きていけそうだって思ってた。
結果的にそうじゃなかったけど。
それでも、ねえ、君だけだったんだよ。
ほんとうに。


ただ君だけ

5/12/2025, 8:02:08 AM

「未来への船」が来た。

ある日突然、駅前のロータリーに。

特に告知もなく、アナウンスもなく、
気づいたら、ちょっと古びた感じの船が、パン屋の隣に停まってた。
錨もちゃんとあったけど、地面に直置きだった。

係員とかもいなくて、ただ入り口に貼り紙が一枚。

「未来へ行く方はご自由にお乗りください」

……自由すぎる。

で、その船がなんなのか、どこに行くのか、
どんな未来なのか、誰も説明してくれない。
ただ、“未来に行く”ということだけは間違いないらしい。

そんな状況で、当然いろんな人が集まってくる。

スマホ片手に写真だけ撮って帰る人。
「こういうのって、結局オチないやつでしょ」とか言う人。
「船っていうより、バス停の延長って感じだよね」と冷静に分析する人。

そして、実際に乗る人。

スーツケースを引きながら、無言で乗る人が何人かいた。
理由は誰も聞けない。だって、帰ってこないから。

で、自分はどうしたかっていうと……
近くのファミマで肉まん買って、ちょっとだけ眺めて、帰った。

なんか、まだいいかなって思った。
今乗っても、たぶん未来についていけない気がして。
あと、寝癖がすごかったし、その日。



「未来への船」

5/5/2025, 10:36:25 AM

手紙を開くと、自分の字だった。
しかも、ちょっと恥ずかしいタイプの自分の字。
やたら丸くて、やたら丁寧で、やたらバランス悪いやつ。

たぶん中学2年のときに書いた「未来の自分へ」。
タイムカプセルとかじゃなくて、
ただ、たまたま机の奥から出てきたやつ。

「ちゃんと夢叶えてますか?」って書いてあった。

……うん、まあ、答えにくいよね。
まず、どの夢のこと?ってなるし、
あの時って「漫画家か美容師かアナウンサーか迷ってる」とか言ってた時期だし。
ひとつもその道にいってないって、言うべきか?

「親にはちゃんと感謝してますか?」とも書いてあった。
……それはちょっとギクッとした。
たぶん今のほうが、反抗期入ってる。逆に。

あと、「大人になったら、きっと毎日楽しいよね!」って書いてある。

いや…いやいやいや。
未来に幻想持ちすぎ。
毎日じゃない。月に2回くらいです。
あと、仕事終わりの冷凍うどんに感動してる時点で、
あんまり“キラキラ”してない未来かもよ?

でも最後に、
「未来の自分、大好きです」って書いてあった。

……なんか、それだけで許したくなるからずるい。
バカだなあ、って笑えるくらいの素直さって、
もう今の自分には残ってないんだよなあ。

ていうか、なんでこれ、残してたんだろう。
自分で書いたくせに、
自分に一番効いてくるの、ほんとやめてほしい。



手紙を開くと

5/5/2025, 7:02:45 AM

「目が合うって、どういうことなんだろうね」
って、ふと口にしたら、
あなたは笑って、
「今、目、合ってるよ」って言った。

でもさ、私が言いたかったのは、そういうことじゃなくて。
ただ視線がぶつかるだけじゃ、
心までは届かないでしょ?

あなたが見てるのは、
“私のいる方向”であって、
“私そのもの”じゃなかった気がする。

なんでわかるの、って言われたら、
わかんないよ。
でも、そういうのって、
わからないからわかること、
あるじゃん。

たとえば、隣に座ってるのに、
どこかすごく遠い人みたいな。
笑ってるのに、ひとりで泣いてるみたいな。

…そんなふうに、
あなたの瞳と、私の瞳が、
すれ違っていたことに、
気づいたのは、
あなたがもう、目をそらしたあとだった。

すれ違う瞳

4/28/2025, 6:54:15 AM


ふとした瞬間に、自分が思ってたよりも小さい人間だって気づく。

たとえば、
お店で隣のテーブルの料理が先に来たときに、ちょっとイラッとした瞬間。

たとえば、
エレベーターの「開く」ボタン押してたのに、誰も「ありがとうございます」って言わなかった瞬間。

たとえば、
LINEの既読スルーに3分も耐えられなかった瞬間。

たとえば、
「好きなタイプは?」って聞かれて、「優しい人」って無難な答えを出してしまった瞬間。

こういう小さな瞬間に、
「俺って意外と器ちっちゃいな」ってなるんだけど、
でもよく考えたら、
器が大きい人間なんて、そもそも器の大きさとか気にしてないんだよね。

だから、
「俺って器小さいな〜」って思ってる時点で、
まだちょっとマシなんじゃないかって思ってる自分がいて、
さらにそのことに気づいて、
「うわ、めちゃくちゃ小さいな俺」って落ち込む。

この、ふとした瞬間の無限ループ。

もういっそ、
「俺は器小さいんで!」って開き直ったほうが楽なのかもしれない。

でも、開き直ったら開き直ったで、
たぶん次は、周りの人に
「あいつ、開き直ってるけど、それを許されるほど魅力ないな」って思われるんだろうな。

……って考えてると、
ラーメン、もう伸びてる。

「ふとした瞬間」

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