かっぱえびせん

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4/21/2025, 10:58:35 AM

私は、ささやきが嫌いだ。
人は皆、口に出して言うことが怖いのだろう。
だから、声を潜めて、耳元で何かを言いたがる。
しかし、どうして耳元で囁かれると、あんなにも心が揺さぶられるのだろう。
その声が、まるで密かに自分の心を覗いているような、
そんな錯覚を覚えてしまう。

「お前は……」と、耳に囁かれるだけで、
何も知らぬはずの私の心の奥底が、どこかに見透かされてしまうような気がして、
そのたった一言で、私は自分を壊すのだ。

人の言葉が、こんなにも私に深く刺さるのは、
結局のところ、私が言葉に依存しているからだ。
私は、誰かの言葉を待っている。
それを欲して、心の中で求めている自分に気づいているが、
その欲望が、また私を不安定にさせる。

「好きだよ」と囁かれたとしよう。
その一言に、私は一瞬で心を奪われ、
その後、その一言だけに縛られ、
その言葉が意味を成す瞬間を、何度も繰り返すことを望むのだろうか。

だが、私は知っている。
その言葉が囁かれるたびに、
私はもっと虚しくなり、もっと深く暗闇に沈んでいくことを。

だから、私はささやきが怖いのだ。
それは、私を壊す言葉だから。
でも、同時にそれを望んでしまう自分もいる。
私は、自分を傷つけたがっているのだろうか。

結局、私は何も分かっていない。
ささやきに寄り添うこともできず、
その言葉に頼ることもできず、
ただただ自分の中で空回りしているのだ。


ささやき

4/20/2025, 12:43:02 PM


星明かりが好きだなんて、嘘でした。
あの夜、わたしが星を見上げていたのは、
ただ、あなたの顔を直視したくなかったからです。

「綺麗だね」って言葉が喉まで出かかって、
わたしはそれを飲み込みました。
その瞬間、何かが終わった気がしました。
星は相変わらず、静かに瞬いていました。

星明かりって、優しそうな名前をしてるけど、
あれはただの太古の光です。
何千年も前に死んだ星の亡骸。
それを「綺麗」なんて言って、酔っているあなたが、
わたしには、とても愚かに見えたんです。

あの日から、星を見上げることはなくなりました。
あの光が、あなたの横顔を照らしていたと思うと、
吐き気がするんです。

でもね、時々ふと、思い出すんです。
あなたの声と、あの夜の空気と、
「星明かりが似合う人だね」って、
本当は言いたかった、たった一言を。

星明かり

4/19/2025, 10:39:32 AM

影絵って、
要するに影じゃん。
その影が何を意味するかなんて、
本当はどうでもいいんだよね。

だって、
影なんて所詮、
光があたった結果、
一時的に出来上がったものにすぎない。
それを「形」とか「象徴」とか言って、
みんな過大評価しがちだけど。

例えば、
あなたが壁に手をかざして、
うさぎみたいな影を作ったとするじゃん。
でも、実際にはただの手のひらなんだよね。
そのうさぎ、
なんの意味もない。
ただ影ができただけ。

でも、そこに
「うさぎだ!可愛い!」とか、
「これ、何か深い意味があるんじゃない?」とか
言いたくなる瞬間があるんだよ。
みんなが「意味」を求めてるから、
仕方なくこじつけるみたいな。

影絵が本当に面白いのは、
その影が、
あくまで「影」だってことに気づいたとき。
影が消えたら、
ああ、そうか、ただの光だったんだな、って。
でもその一瞬、
あえてそれを信じてみることの面白さ。

結局、影絵ってさ、
光と影の遊びでしかないんだけど、
その遊びが、人間には結構好きみたいなんだよね。
みんな、自分の影に一喜一憂してる。

まあ、影絵ってそういうもんだよね。
影にこだわって、
結局光がすべて持っていく。
でも、それでもいいんだよ。
だって、影があるから光が輝くんだし。

影絵

4/12/2025, 6:57:05 AM

君は、いつも正しい道を歩こうとしていた。
僕は、正しい道なんて最初から無いと思っていた。

それでも、君はまっすぐで、僕はそれに背を向けながらも、なぜか君の足音だけは聞いていた。

たぶん君も気づいていたんだろう。
僕が振り返るたびに、同じ景色を見ていることを。
気づかないふりをして、でも気づかないではいられないふりをして、
君と僕は、すれ違うようで、すれ違えなかった。

「またね」って言葉だけは、僕たちの間で何度も繰り返された。
終わりみたいで、始まりみたいで。
だから僕は、あの言葉がすこしだけ好きだった。

たぶん、君も。

君と僕

4/11/2025, 7:59:07 AM

夢って、たぶん誰かが思ってるよりだいぶ地味で。
ほら、テレビとかだと「夢に向かって全力!」とか言って、汗とかキラキラしてるけど、
実際のところは、キラキラなんかしてなくて。
むしろ、汗とかベタベタだし、ぜんぜん爽やかじゃないし、
途中で「あれ?これほんとに夢だっけ?」ってわからなくなるし。
で、そういうときに限って、
周りの友達とかが「なんか、私やりたいこと見つかっちゃって〜」とか言い出して、
「あ〜よかったね〜」とか言いながら、内心はまあまあ焦ってるんですよね。
ほんとは自分だって見つけたかったのに、って。

で、たまにふと気づくんですよ。
「あれ、俺、夢に向かってるんじゃなくて、夢に追われてない?」って。
なんかもう、こっちが追いかけてるつもりが、いつの間にか夢に追われてる。
「早くしないと夢逃げちゃうよ!」って自分で自分を煽る始末で。
それで焦って走ったら、つまづいて転んで、
泥だらけになって「なんでこんなに必死なんだろ」ってなるんですけど、
その泥だらけの自分が、案外ちゃんと夢に向かってる姿だったりするから、もうめんどくさいんですよね。

結局のところ、夢っていうのはたぶん、
めんどくさいし、疲れるし、失敗するし、
なのにやめようと思うと、ちょっと寂しくなるやつ。
で、その寂しさを埋めたくて、また夢のほうへ歩いていく。
気がつけば、その繰り返しなんですよね。
まあ、そういうもんなんじゃないですかね、夢って。


夢へ!

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