正直、オレにとっちゃ景色なんざ、どうでもいいモンだった。
生きるのに必死な時ってのはよ、
空の色も、風の匂いも、目に入っちゃいねェもんさ。
でも、不思議なことに、
あんたといた時間だけは、妙に鮮明に覚えてるんだよな。
あの日見た桜の色、
夏の夜に響いた虫の声、
冬の朝、白い息を吐きながら歩いた道。
どれも、あんたが隣にいたから、
オレの中に残ってるんだろうよ。
景色なんざ、いくらでも変わる。
でもよ、お前と見たソイツだけは、
オレの中じゃ、変わらず残り続けるんだろうな。
君とみた景色
大好きってのは、理屈じゃねぇんだよ。
「なんで好きなの?」って聞かれてもうまく説明できねぇし、好きだからって毎日ベタベタしたいわけでもねぇ。でも、いざ君が遠くに行こうとしたら、「ちょっと待て」って引き止めたくなる。
そんな感じで、君のことはもうどうしようもなく好きなんだよ。
いや、ほんと、オレにもよくわかんねぇ。でも、そういうもんだろ?
大好き
「叶わぬ夢」ってのはよ、 時間を巻き戻せねぇってこと みてぇなもんだ。
あの時、もうちょい素直になれてりゃ。
あの時、あと一言だけ伝えられてりゃ。
あの時、違う道を選んでりゃ。
そんな「もしも」ばっか考えて、頭の中で何度もやり直す。けどよ、現実は無情だ。過去は過去、時間は戻らねぇ。どんだけ後悔したところで、そいつは変わらねぇんだよ。
でもよ、不思議なもんで、そういう 叶わねぇ夢 ほど、やけに鮮明に覚えてやがる。叶った夢なんざ、気づいたら当たり前になっちまってんのにな。
だからって諦めろとは言わねぇ。夢は叶わねぇから価値があるんじゃねぇ。叶えるために足掻くから意味があるんだよ。
…って、まぁエラそうに言ってるオイラも、酒飲みながら「ジャンプの発売日が一日早まる夢」見てんだけどな。叶わねぇ夢ってのは、案外そんなもんよ。
春の風に乗っかって、ふわりと漂う花の香りってのぁ、まるで昔の思い出をそっと撫でるみてぇなもんだ。忘れたくても忘れられねぇこと、心の奥にしまったまんまの気持ち、そういうのを一瞬で引っ張り出してきやがるんだよな。
桜の香りにゃ、散り際の切なさってもんが詰まってるし、藤の香りには、誰かを待ち続ける健気さが宿ってやがる。そう考えりゃ、花ってやつぁ、見た目だけじゃねぇ。香りにまで人の心を揺さぶる力を持ってやがるんだ。
ま、オイラはそんな繊細なこと言いつつも、鼻炎持ちだからな。花の香りどころか、くしゃみで全部吹っ飛んじまうけどよ。
…ったく、人生ってのはいつだって皮肉たっぷりだよなァ。
花の香りと共に
別に、会いてぇわけじゃねぇんだ。
ただ、あんたの声が頭ん中で離れねぇだけでよ。
あんたが残した言葉が、
この腐った心ん中にしみついちまってるだけでさァ。
どこにいるかなんて、
もう知りたくもねぇし、
追いかけるほどガキでもねぇ。
でもよ、
気づきゃ目の端であんたを探してる。
あんたみてぇなバカ野郎を、
探してる自分に、笑っちまうんだよ。
…ったく、
しつけぇのはどっちだっつーの。
君を探して