『雪を待つ』
雪が降ることを、私はまだ知らない
ただ、冷たい空気が心に触れて
冬の匂いが遠くからやってくる
空は灰色、けれど優しい色
静けさの中で何かを待つ時間
それは、私の中にだけ降る雪のようで
「降るかな、今日」
そんな風に君の言葉を待つ
どこかで、少しだけ期待して
降らないとしても、
その空を見上げることが好きだから
白く染まる街を想う
それはたぶん、私の心が
君のことで、また真っ白になる瞬間
――雪は、待つ人のところに降るのだと
誰かが言っていた
なら、君はいつ、私の冬に降るのだろう
『イルミネーション』
イルミネーションの光が
寒空に散りばめられた星のように輝いて
冷たい風に乗って、街を包み込む。
「こんなにも綺麗なのに、
なんでひとりなんだろう?」
ふと思ったその瞬間、
自分にツッコミを入れたくなる。
「いや、だって、誰かと来るのもいいけど、
ひとりでもこの光を楽しめるって、なんかカッコいいでしょ?」
でも心のどこかで、
君と一緒に見たあの光が
今も鮮やかに蘇る。
「ああ、もう…結局、
またひとりで来てるんだな、私。」
でも、少しだけ誇らしい気もする。
だって、このイルミネーションが
私を包んでくれるから。
一緒にいるはずの人がいなくても、
光は消えずに、
私を少しだけ明るく照らしてくれる。
それだけで、なんとなく
今日もやっていける気がするんだ。
「愛を注いで」
君に愛を注ごうとしたけれど、
そもそも、愛って何だろう。
恋の言葉はいつも口にするけれど、
その意味が本当に分かるのは、
きっと君といる時だけ。
思っているだけじゃ足りないと知って、
勇気を出して言葉を伝えたけれど、
君の笑顔はそれだけで答えのように感じて、
言葉よりももっと深いところで繋がっている気がした。
でも、愛を注ぐっていうのは、
たぶん、無理に形にしなくてもいいんだろう。
君が好きだってことが、
伝わればそれでいい。
だから、次もまた、何も言わずに
ただ君のそばにいるだけで満足だよ。
「心と心」
心と心が重なり合う瞬間を
待っているけど、
なぜかいつも
裏側で迷っている気がする。
君の心は表側にあって、
私はその裏を見ている。
「本当はこう思ってるんじゃないか?」
そんな問いかけを
胸の中で繰り返して、
それでも答えが出ない。
お互いに気づいているはずなのに、
裏側の自分を見せるのが怖くて、
結局、
言葉だけが前に出てくる。
でも、もしも
心の裏側を見せたら、
少しは近づけるのかな?
それとも、
もっと遠くなってしまうのかな?
怖いけれど、
その答えを知りたくて、
心は迷いながら進んでいく。
そして、気づけば、
もう裏側すら見せることなく、
心がふと通じ合っているのかもしれない。
『何でもないフリ』
君の前ではいつも、
平気なフリをするのが私のルール。
話すたびに心臓が暴れ回ってるなんて、
絶対にバレちゃいけないから。
でも内心では、君と私の物語を
勝手に頭の中で上映中。
『主演は私、相手役は君』って、
誰も観てない映画をひとりで演じてる。
ただ、どんなに素敵なストーリーを描いても、
君はいつも、遠くの客席に座ってるだけで、
舞台に上がることはない。
エンドロールが流れる頃には、
私だけが泣いてるんだろうな。