詩のようなもの0021
2019年
君は誇りを胸に飛び立っていった
コロナの影響で空港は人もまばらで
グランドスタッフが何人も何人も
入れ替わり立ち替わり
君の世話を焼いてくれていた
順風満帆とは言えない旅立ち
だって世界中コロナが猛威を振るっていて
そんなときに仕事のオファーを受けて
海外に行くなんて
それでもやりたいことがそこにあって
そのために頑張ってきて
認められて
大きなチャンスが来たのだから
命懸けで頑張らなきゃな
セキュリティをくぐる前
これが最後のハグで
本当にもう二度と会えないかもしれないと思ったら怖くなって震えたけれど
君は終始笑顔だったし
私も不安そうな顔などしないよ
何があってもこっちは大丈夫
もう日本には戻ってこなくていい
戻って来てなんて願わない
その覚悟で見送った
一回も振り返らずに
真っ直ぐに前だけ見て
君がゲートをくぐっていった
大人になった君を見送ったあと
しばらくそこにいて
それから
涙が枯れるまで泣いたんだった
詩のようなもの0020
忘れないと誓って
きっと忘れないと思っていることは
どのぐらい忘れないでいられるのだろうか
最期の走馬灯が走る自分の人生のあれやこれやを思い出すときに
ちゃんと忘れないで思い出せる思い出は
一体どれぐらいあるのだろう
すごく大切な忘れたくない思い出が
山ほどあるんだけどな
ありすぎちゃって全部思い出せる気がしない
それは幸せなことだけど
詩のようなもの0018
なぜ泣くのと聞かれたから
そんなクソみたいな質問に答えてやる必要はない
そんなクソみたいな質問をする奴は
どうせクソみたいな奴なんだから
なぜ泣いているのかを
本気で考えてもみないで何言ってんだ
なぜ泣くのかと聞くのは
泣きやみなさいの
丁寧な恫喝だ
言葉を獲得したら
そう答えてやる
あるいは15年後
何にもしゃべってやらない
こっちには「反抗期」という大義名分がある頃だ
赤ん坊だと思って
舐めてるんじゃねえ
まず
泣き止ませる工夫をしろってんだ
詩のようなもの0018
足音
帰宅が遅い彼の足音で目を覚ましてしまう。
寝返りを打って眠りに飛び込むが、待っていてくれない時には寝はぐれてしまう。
気にしない。
仕事が忙しい。それはお互い様。
でも。
軽く苛立ちながら眠気を待つのが嫌だ。
誰かと一緒に暮らすのは大変。
独りで生きていけるように
訓練してきたから、大変。
足音が気にならなくなるまで
あと
どれぐらいかかるのだろう。
詩のようなもの 0017
終わらない夏
毎日アプリに日記をつけ始めたら
私の今年の夏が
鮮明に刻まれていくことに気づいた
15の時に
子供時代の日記を燃やした
あの炎は今も覚えている
大人になる儀式のような覚悟も
30になる前に
書いていたものを
ダンボールに詰めた
今も屋根裏に置いてある
処分しなきゃなと思う
便利なことに
mixiもTwitterもblogも
ある日突然
相手の都合で消えてしまって
多分インスタもXもスレッズも
そしてこのアプリも
いつか消えてしまうのかもしれなくても
文字に閉じ込めた夏の記憶は
終わらないのかもしれない
記録を残したいとは全然思わないが
記憶が消えないで欲しいと思っているらしい
記憶を強化するために
私は言葉を紡ぐのかもしれない