詩のようなもの0020
忘れないと誓って
きっと忘れないと思っていることは
どのぐらい忘れないでいられるのだろうか
最期の走馬灯が走る自分の人生のあれやこれやを思い出すときに
ちゃんと忘れないで思い出せる思い出は
一体どれぐらいあるのだろう
すごく大切な忘れたくない思い出が
山ほどあるんだけどな
ありすぎちゃって全部思い出せる気がしない
それは幸せなことだけど
詩のようなもの0018
なぜ泣くのと聞かれたから
そんなクソみたいな質問に答えてやる必要はない
そんなクソみたいな質問をする奴は
どうせクソみたいな奴なんだから
なぜ泣いているのかを
本気で考えてもみないで何言ってんだ
なぜ泣くのかと聞くのは
泣きやみなさいの
丁寧な恫喝だ
言葉を獲得したら
そう答えてやる
あるいは15年後
何にもしゃべってやらない
こっちには「反抗期」という大義名分がある頃だ
赤ん坊だと思って
舐めてるんじゃねえ
まず
泣き止ませる工夫をしろってんだ
詩のようなもの0018
足音
帰宅が遅い彼の足音で目を覚ましてしまう。
寝返りを打って眠りに飛び込むが、待っていてくれない時には寝はぐれてしまう。
気にしない。
仕事が忙しい。それはお互い様。
でも。
軽く苛立ちながら眠気を待つのが嫌だ。
誰かと一緒に暮らすのは大変。
独りで生きていけるように
訓練してきたから、大変。
足音が気にならなくなるまで
あと
どれぐらいかかるのだろう。
詩のようなもの 0017
終わらない夏
毎日アプリに日記をつけ始めたら
私の今年の夏が
鮮明に刻まれていくことに気づいた
15の時に
子供時代の日記を燃やした
あの炎は今も覚えている
大人になる儀式のような覚悟も
30になる前に
書いていたものを
ダンボールに詰めた
今も屋根裏に置いてある
処分しなきゃなと思う
便利なことに
mixiもTwitterもblogも
ある日突然
相手の都合で消えてしまって
多分インスタもXもスレッズも
そしてこのアプリも
いつか消えてしまうのかもしれなくても
文字に閉じ込めた夏の記憶は
終わらないのかもしれない
記録を残したいとは全然思わないが
記憶が消えないで欲しいと思っているらしい
記憶を強化するために
私は言葉を紡ぐのかもしれない
詩のようなもの0017
遠くの空へ
入れ!と祈ったが
シュートはゴールバーを叩いて
遠くの空へ
チャンスを!と祈り続けたが
祈りはどれぐらい届いたのだろう
ゴミを一回拾ったら
席を一回譲ったら
神様はきっと見ているんだ
ポイントを貯めるみたいに
徳を積んで
積んで積みまくりますから
どうか
彼を活躍させてください
って
毎日思ってた
いつものように
道端のゴミを拾っちゃったけど
「ああもう祈る必要はないんだ」
と気づいて
初めて
彼の引退を痛感した
これからは推しじゃなくて
私のために徳を積む
いいじゃない、いいじゃない
遠くお空の上に
いるかもしれない神様
お願い
……ああなんてつまらない