ワン、ツー、スリー。
初めてだからついついバランスを崩してしまう。
ばたん、と倒れ込む君を受け止める。
ごめんねと軽い謝罪をしつつ、再度2人で立ち上がる。
もうこの手を離さないようにと。
ツギハギだらけの体を隠すように、
純白のチュールのドレスが揺れている。
見た目だけで見れば重さがありそう。
まぁ、今の彼女は皮膚と骨しかないから、
とんでもなく軽いのだけれど。
レコードから流れる音楽に合わせ、歩数を合わせる。
自分の手で工夫してよかった。
日本は火葬文化だもんね。
人の体が、粉しか残らないなんて残酷だよね。
聞き慣れたサイレント、赤のランプが当たりを照らす。
フィナーレだ。彼女を抱きしめる。
二度と会えない現実から逃げるように、
油の海にマッチを投げた。
、踊るように
暑すぎる日本の夏。
今日も何もせず、暗い部屋の中液晶を眺める。
言うなれば私は引きこもりだ。
言わなくても引きこもりだが。
自分はまだ中学生なのに、もう昔を懐かしんでいる。
小学生の頃は何も気にせず、海にこもりまくっていたのが懐かしい。小麦色の肌も、白に近づいてきた。
子供の頃に集めた貝殻は、全部粉々になってしまった。
大人になったら、粉になったものですら記憶からなくなってしまうのだろうか。
昔ばかり見てはられないから。
、貝殻
あなたの目が宝石のようで羨ましかった。
あなたは素敵な人。
私に持てない輝きを持つもの。
憎かった。
お願いだから
私だけの前で笑って
泣いて、
縋ってよ。
、きらめき
『学校の放課後、実行。』
スマホなどの技術が発達している中、
僕達は手紙でやり取りしている。
…毎回こんな短さなので、手紙というよりメモだろう。
心の中、1人ツッコミを入れつつ屋上へ向かう。
今日も彼女のところへ。
今日は実行日なのだ。
「遅いぞササキ、珍しいな。」
屋上へのドアを開けた時、開口一番にその
セリフを言ったのがメモの送り主だ。
「ごめんごめん、よりにもよって今日、
日直だったんだよー。」
余計な言い訳だったのか、ムスッとした顔を見せる。
これはいけないぞと話を変える。
「ところで今日はどこでやるの?」
「最高のプランを用意したぞ!」
聞いて欲しかったのか、明らかに機嫌が良くなった。
説明が長く早口だったために、ところどころ聞き取れなかった。ただ、その最高のプランとやらをまとめると、
①ゲーセンで遊ぶ
②コンビニで買い食いをする(公園でも可)
③夜中の学校に忍び込む
④屋上で夜食を食べる
…といったものだ。ご覧の通り、実行と言ってもただの遊びなのだ。内容に関しては、ちょっとやんちゃな生徒みたいだ。こういったものが青春と呼ぶのだろうか。
いや、もしかして後半2つは犯罪なのかもしれない。
いや犯罪だけど、青春の楽しさの犠牲になってもらおう
などと考えているうちに、大きな声が僕の耳を貫いた。
「おいササキ!またボーッとしてるな!!」
早く行くぞと言わんばかりに手を繋いでくる。
まるで年下の子供のようだと笑いながらも、
彼女について行く。
痣だらけの手を引っ張ってくれるのは彼女だけなのだ。
、心の灯火
好きぴとのLINEは既読を付けないように覗き見る。
LINEにおいて必須テクなのである。
いつもは暇だから遊ぼうだとか、飲みに行こうとか
チャンスがありそうな会話しかしていない。
ただ、日常というものは一瞬で崩れさるものだ。
今日お昼ご飯を食べ終わったあと、彼からLINEが来た。通知を見る。
「俺、彼女が出来ました😊」
なので遊びに行けないかもー。というものだった。
頭が真っ白になる。
そんなこと今まで言われるような、女の影を感じるようなことは無かったのに。既読が付けれない。
手が震えてしまう。次に頭の中に出てくるのは、後悔。
アピールが少なかったのかなとか、ちゃんと好きだと伝えればよかったな、とか。後になって役に立たない思考ばかり出てくる。
とりあえず、メッセージは2日置いた。もう開けない。
、開けないLINE