どこへ行ったのだろう
黄色く光る大きな目玉をぱちくりさせてこっちを見ていたのに
まだら模様の小さな身体はガラスの向こう側から姿を消していた
あまりにも大きな音だったから驚かせてしまったのかもしれない
まだ子猫だったからこちら側の出来事を理解出来ていなかったとは思うけど
「出てきてネコちゃん。あなたには何もしないわ」
もし咽せ返る血の臭いに辟易しているのなら
シャワーを浴びてから探さないとね
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あたし、秋風そらみ!
14歳中2!
この度、プリティでキュアッキュアな美少女魔女として、不思議なカードを集めることになっちゃった!
「…ていう感じでー」
「先生」
「ピンチの時に出てくる謎のイケメンは何故か覆面ヒーローでー」
「先生」
「仲間はやっぱあと四人くらいにして追加でもう」
「先生お願いですから休んでくださいもう新連載の話はしませんからどうか」
「あはははははたーのしー」
別れのあいさつが嫌いなあなたへ贈るのはこの言葉。
毎年言ってるけど、そうね、来年はいないかもしれないけど、やっぱり同じ言葉にしておきましょうか。
幾星霜分の愛しさと恋しさを込めて、冷たい石の下のあなたへ。
「また会いましょう」
今度はきっと、空の向こう側で。
いつ見つかるかわからないという背筋の冷たさが、私を我に返らせる。
踏み越えてはいけない。
心を強く持って、何としてでも耐えなくては。
「…まだ、耐えるつもり?」
なのに、胸の奥をくすぐる柔らかな声が、私の脳みそをあっという間に蕩けさせてしてしまう。
「っ、…あ」
全身を駆け巡る熱が私の思考を奪って、目の前の美しいケダモノに心が塗り変えられてゆく。
ゾクゾクするこのスリルさえ愛おしく思えるほどに、ただただ私は溺れて、逝く。
かごの中にいる鳥は大層美しく、この世の贅沢を謳歌するものの象徴に思えた。
濡れた瞳は宝石のように輝き、瞬きからは星屑が散らばる。
口を開けばころころと涼やかな音色で歌い、羽ばたき舞う姿は天女の如く。
「どうですお客様。この美しさは他の何ものにも代え難いでしょう?」
商人は両手を擦り合わせながら笑顔で言った。
「ご安心ください。きちんと腱を切っておりますので逃げることは出来ません」
飛べない翼を纏うその鳥は大層美しく、この世の醜い残酷を象徴するものに思えた。