「なあ、ちゃんと聞こえてた?」
「うん。…うん、そう、だね」
「なんだよその返事。つまりはどーゆーこと?」
「どうもこうも、えっと、そのう…」
「ハッキリしねーな。ダメってこと?保留?それとも、」
「言う!…ちゃんと言うから、ちょっと待って」
「待てない。てゆーか待ちくたびれたから言ったのに。今更?」
「…こちらにも都合というものがありまして」
「知らない。いいかげん諦めろ」
「好きだ。お前も好きだろ?」
「〜〜〜〜〜っ」
「す、す、すすすすす、す、」
「す?」
「…ススキ!」
「…なんでこんなの好きになったんかな」
住み着いて離れない
離れてくれない
君は孤高で美しく誰よりも強いひと
同時に脆く優しいひと
浮かぶ脳裏にいる君はいつだって傷だらけのまま満面の笑顔で
あまりにも鮮烈で惹かれずにはいられない
これを恋というのでしょう
なにも浮かばない。
まっくらだ。
目を閉じた瞼の裏側には何も見えやせずただ闇ばかりが続く。
息をしようと唇を動かそうとして、唇がどこにあるのかわからないことに気づく。
呼吸、息継ぎをしなければ。でなければ。
『考えるだけ無駄だよ』
言葉が頭の中に浮かぶ。
だれだ。なんだ。どういういみ、
『意味なんてないのさ、死ぬということに』
逢いたい気持ちと同じくらい逢いたくない。
あなたもそうならいいのに。
けれどきっと、あなたはわたしのことなんて忘れ去った過去にして、素敵な家族といまを生きてる。
それがとても切なくて、惨めで、辛くて、だけど同じくらい安心して、嬉しくて、温かくて。
あなたを過去と想えるようになるのはまだ少しかかるかもしれないけど、きっといつか。
いつかそうなってくれたらいいのにと、あなたとわたしが別れた日と似た夕焼けに願った。
「これじゃ帰れないね」と君は言った。
止まない雨、暮れゆく空。
「どうする?」と僕。
柔らかな檻のような雨に閉じ込められた僕らは、まるで世界で二人ぼっちになってしまったようで。
「どうしよっか」
「どうしたものかね」
同時に呟いて、笑い合って。
嗚呼、
「二人でこのまま雨に溶けて消えてしまえばいいのに」
どちらともなく呟いた言葉は、お互いの唇の中に溶けて、消えた。