赤月

Open App

「これじゃ帰れないね」と君は言った。

止まない雨、暮れゆく空。

「どうする?」と僕。

柔らかな檻のような雨に閉じ込められた僕らは、まるで世界で二人ぼっちになってしまったようで。

「どうしよっか」
「どうしたものかね」

同時に呟いて、笑い合って。

嗚呼、

「二人でこのまま雨に溶けて消えてしまえばいいのに」

どちらともなく呟いた言葉は、お互いの唇の中に溶けて、消えた。

11/6/2023, 4:59:50 PM