mugen

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1/27/2024, 12:11:15 PM

25日目


ある日私は、彼を殺した。

優しくて、かっこよくて、背が高くて、頭が良くて、誰からも好かれる完璧なくらい素敵な彼を。

理科準備室で殺した。

その事件以来、生徒も、先生も立ち入り禁止になった。

犯人は分からない。

証拠もない。

ただ、彼の、彼の身体から溢れ出た血の跡だけが、理科準備室に残っている。

それ以外は何も残っていない。

私のものだと確信がつくものは何も残していない。

完全犯罪だ。

私は、彼を愛していた。

ただ、愛し方が違ったのか、?

なぜ私は彼を殺さなければならなかったのか。

なぜ彼は、私に殺されてしまったのか。

何度考えても理由が分からない。

目を瞑ると彼を殺した時の光景が瞼の裏に浮かぶ。

温かかった。彼の身体から溢れ出る血は。

でもすぐに冷たくなってしまう。

私は今でも、あの感覚が忘れられない。

あの温かさをもう一度。




12/31/2023, 8:59:11 PM

24日目


「良いお年を」なんて、人の幸せを願う言葉なんて私の口からは絶対に言わない。

私は人生で1度も「良いお年」が来たことがない。

毎年毎年何が原因なのか分からない。厄年でもない。

ただただ、この1年幸せだったな。

なんて思える年がないのだ。

私が不幸なら、友達でも赤の他人でもみんな不幸になってしまえばいい。私以外が幸せになることなんて許せない。

そう思っているくらいだ。だから毎年幸せな1年が来ないのだろう。

あー。どうしたら幸せな1年が手に入るのか。

あー。どうして良いお年をなんて人の幸せを願うことができるのか。

私には分からない。

いや、分かろうとしないだけなのかもしれない。

12/28/2023, 4:31:33 PM

23日目


夏休み、私はある1本の映画を見た。

その映画はただただ男が生と死の淵を彷徨うだけの面白くも、怖くもないつまらないものだった。

でも、私はその映画から目が離せなかった。

何故か引き込まれてしまう。深く考えてしまうような映画だった。

スクリーンを前にして座っているのは私を除いて1人か2人だろう。

何故こんなにも引き込まれてしまうのか、私以外の人もこんな気持ちになっているのか、気になる。


2時間程でその映画は終わった。

9月1日、夜の10時。

邪魔者はいない、邪魔してくれる人もいない。

気づいてくれる人も、見てくれる人もいない。

私は1人、廃墟のビルの屋上に向かった。

あの映画から抜け出せなかったのは、私の意思かもしれない。

私がこれからどうなろうがすべてどうでもいい。

11/22/2023, 4:42:15 AM

22日目


「お母さん、どうすればいいの?」

久しぶりに聞いた母の声はそれだった。


学校でいじめられてから家にひきこもって1年が経とうとしている。

学校に行けるはずもなく、一日中部屋にひきこもっている。

部屋の外に出る時はお風呂に行く時と、トイレに行く時、それ以外は部屋で過ごしている。

最初は心配してくれていた母も次第に私を遠ざけるようになった。

母は、私のために悩みを聞いて、理解してくれて、そばにいてくれる。そう思っていた。

でも、そんな期待はすぐに裏切られた。

「いじめられる方にも原因があるのよ。あなたが何かしたんじゃない?」

私が相談した時、母の口から出た一言目はこれだった。

あー。もう期待するのはやめよう。誰かに相談するのもやめよう。

私は初めて人間不信になった。

もう、誰を信じればいいのか、この先、誰を信じられるのか。

もう私には分からない。

10/21/2023, 1:28:54 PM

21日目


声が枯れるまで、君の名前を叫んだ。

もう聞こえることも届くことも無い君に向かって、僕は何度も何度も名前を呼んだ。

生と死の淵にたっている君は、僕が何度名前を呼んでも目を覚まさない。

毎日毎日声が枯れるまで叫んで、泣いて、叫んで、泣いてを繰り返している。

その一週間後目を覚ますことも無く、僕の声に答えることもなく君は死んだ。あっさり死んでしまった。

棺の中にいる君には、もう届くことは無い。

その三日後には灰になって消えてしまう。そうなれば一生僕の声も届くことはないのだろうか。

僕は君のことを思い出す度、何度も何度も名前を叫ぶ。

たとえ声が枯れようとも、声が出なくなろうとも、僕は君の名前を呼び続ける。

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