20日目
子供のように笑う彼女が、優しく、微笑みかけるような彼女の笑顔が俺は大好きだった。
末期の癌にかかった彼女を亡くして3年。
笑顔で
「私のことは忘れて幸せになってね」
と言った彼女の目には涙が浮かんでいた。
3年たった今でも初恋だった彼女を忘れられない。
やんちゃだった俺をみんなが見捨てる中、彼女だけが俺の事を叱ってくれた。
その時、俺は心の中でこの人だけは大切にしよう。と初めて思えた。
そんな大切な彼女を亡くしてしまった。
彼女が空を舞った初雪の日、その日は俺にとって消えることのない永遠につ続く日になった。
19日目
明日もきっと君に会える。
あなたに会えることが親も友達も居ない私にとっての唯一の生きがいだった。
2年前の冬。
私が余命を告げられたあの日、あなたと初めて出会って、私は一瞬で恋に落ちた。
あなたが私に笑いながら話しかけてくれた日、あなたの透き通った瞳に私が写った。
明日もきっと会える。
その次の日も次の日も、毎日会えるだろう。
友達でも恋人でもない私たちの関係を言葉で表すのは難しい。
でも、私たちは、互いに互いを求め合うようになった。
あなたが余命宣告をされた日、私はあなたとまだ蕾のなっている徒桜の木の下で約束する。
私とあなたが旅立つ日、その約束は果たされる。
私とあなたが永遠に眠った日、桜の花は儚く散る。
「私とあなたが死ぬ時は徒桜が空を舞った4月の春暖」
18日目
とんでもない喪失感が私の体を駆け巡る。
大切な人。
大切なもの。
大切な記憶。
何もかもを失ってしまった感覚。
忘れたくないと思う人まで忘れてしまったような感覚。
この喪失感はなんだろう。
思い出したいという気持ちと思い出したくないという気持ちが私の中で葛藤する。
思い出すことが良いことなのか悪いことなのかそれすらも分からなくなってしまった。
ここで初めて私は自分が自分自身とちゃんと向き合えていないことを理解した。
この喪失感を体から消すためには、私は私自身とちゃんと向き合わなければならない。
17日目
世界に一つだけの愛。
そんなものこの世に存在するのだろうか。
生涯その人しか愛さない。なんて言葉だけの約束なんて。
人生はたった一度しかない。
そのたった一度で、生涯愛してくれる人を。
世界で、私だけを愛してくれる人を、世界に一つだけの愛を。
それを探し続けながら生涯を終わるのだけは私は嫌だ。
いつになってもいいから、私だけを愛してくれる人を、自分の生涯かけて幸せにしてくれる人を、幸せにしたいと思える人を。
私は見つけてみせる。
16日目
胸の鼓動が私のお腹で鳴り響く。
一定のリズムで動いている小さな小さな心臓。
当たり前のようで当たり前じゃない。
もしかしたら消えてなくなるかもしれない小さな命。
嬉しい気持ちもある反面、不安な気持ちも多少はある。
毎日お腹を擦りながら子守唄を聞かせてあげる。
産まれてくる子はどんな子なのかと今か今かと待っている。
私の夫も、もうすぐお兄ちゃんになる6歳の息子も毎日幸せそうに待っている。
あと2週間、もう少ししたら私たちの家族が1人増える。
楽しみで仕方がない。