『もしもタイムマシンがあったなら』
タイムマシンがあれば、きみがいた頃に戻れるのに。
きみを、あんな人間から守れるのに。
過去に戻って、今のこの状況を変えることができるのに。
『今一番欲しいもの』
昔から、欲しいものは何でも手に入ったわ。
綺麗な花、高価な宝石、珍しい毛皮、質の良い洋服、美味しい食べ物。それから、気に入った人間。
欲しいと言えば何でもくれる両親がいて、とても幸運だったと思うわ。
でも、何もかもを手に入れすぎて、欲しいものが無くなってしまったのよね。
欲しいものを聞かれても、何も思い付かないのよ。
だから、今持っていないものを貰うわ。
あなたの命を頂戴?
『私の名前』
ずっと独りだった。
みんな、私の体の色だけで、私の存在を不幸なものだと言う。
不幸を運んでなんていないのに。
忌み嫌われるのは、私の体が真っ黒だから。
真っ白だったら、みんなから歓迎されたはずなのに。
「クロー。ご飯だよー」
のんびりした声が、私を呼ぶ。
あの人間に拾われてから、私は独りじゃなくなった。
クロなんて安直な名前を付けたあの人間は、私をたくさん愛してくれる。
大嫌いだった自分の体の色。
大嫌いだった人間。
大嫌いだった黒という言葉の響き。
それら全てを、あの人間は、大好きに変えてくれた。
「今日も可愛いね、クロ」
「にゃあ」
『神様だけが知っている』
完璧だ。
これで、僕へと繋がる証拠は全て消え去った。
あとは僕が何も知らないふりをすれば、この事件は解決しないだろう。
真実は、神のみぞ知るってところかな。
『この道の先に』
ずっと、ずっと、長い間、暗闇を歩き続けている。
ちゃんと前に進んでいるのか、そもそも真っ直ぐ進めているのか、全く分からない。
けれど、歩かなければならないような気がして、歩き続けている。
前方に、小さな光が見えた。
あの光の所まで行けば、この暗闇から、出られるのだろうか。
小さな光を目指して歩く。
だんだんと光が大きくなってくる。
眩しさに目を細め、顔の前に手を翳す。
まばゆい程の光の先に見えたのは――。