酸素不足

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5/20/2024, 3:08:32 PM

『理想のあなた』


手足はスラッと長く、モデルのような体型。
胸もお尻も小ぶりなのが良い。
顔は小さくて、目はぱっちり二重。
スっと通った鼻筋と、厚みのある妖艶な唇。
艶やかな長い黒髪は、風に靡くと惚れ惚れする。
耳の形は、僕の一番こだわったところだ。

あとは、繋ぎ目を綺麗にすれば、完成。


僕の、理想の奥さんの出来上がりだ。

5/16/2024, 12:25:47 PM

『愛があれば何でもできる?』


愛があれば、何でもできるかって?
ははっ、愚問だね。できるに決まってるよ。

愛があればなんだってできる。
嫌なことも、難しいことも、愛があれば乗り越えられるんだよ。
愛する人のためだったら、自分の命も惜しくない。


だから、僕は今、人を殺してるんだ――。

5/15/2024, 1:18:09 PM

『後悔』


輝くあなたを、忘れたくなかったの。
あなたの太陽のような笑顔を、ずっと見ていたかったの。
ただ、それだけだったのよ。

だけど、私は、隣にいて欲しいだなんて、そんなこと思ってしまったの。
一度思ってしまったら、止められなかった。
次々に溢れ出る感情を、抑えきれなくなった。
あなたを、独り占めしたいとまで思うようになってしまったの。

そして、私はついに行動に移してしまった。
やってはならないことを、やってしまったの。

ようやく願いが叶って、あなたを独り占めできたのに、満足なんてしなかったわ。

だって、あの太陽のような笑顔が、見られなくなってしまったんだもの。
大きく目を見開いて、口も半開き。こんなの、あなたじゃ無いわ。
乾いた血がついた顔も、輝いていたあなたとはかけ離れていて、見たくもないわ。

こんなはずじゃなかったのに。
ただ、あなたを忘れたくなかっただけなのに。
肉の塊となってしまった彼には、何の興味も無い。

こんなことになるなら、彼を殺さなければ良かったわ。

5/14/2024, 2:04:12 PM

『風に身をまかせ』


風が、ふわりと私のスカートを撫でる。
髪をくすぐる心地良い風に、心が暖かくなる。
すぅーっと、肺いっぱいに空気を吸い込めば、春の匂いが身体中に行き渡る。

「怖くなった?」
「んーん。風が気持ちいいなーって思って」
「たしかに。このまま、風に乗って飛べたら、楽しいかもね」
「それも良いね。鳥みたいに飛ぶのって憧れる」

空を見上げながら、二人で他愛もない話をする。
二人の間を風が流れて、どちらからともなく、手を繋いだ。

「本当に良いの?」
「うん。私は、きみとずっと一緒にいたいから」
「ありがとう。僕も、最期まできみと一緒が良い」

繋いだ手をぎゅっと固く握り合って、私たちは向かい合う。
おでことおでこをくっつけて、お互いの体温が混ざり合うのを感じる。

「それじゃあ、いこう」
「うん」

そのまま、ゆっくりと体を傾ける。
降下するのは、一瞬。
身体中を強く包む風に身を任せて、私たちは、幸せを目指して落ちていった。

5/13/2024, 12:17:00 PM

『失われた時間』


後悔先に立たず。
人生で、何度この言葉が頭を過ぎっただろうか。

あの時ああしていれば、こうしていたら。
なんて、考えても意味の無いことを、考えては闇に堕ちていく。

自分のしたことは、間違っていたのだろうか。
違う選択をしていたら、もっとマシな結果になっていたはずだ。
こうしていなかったら、今、幸せになっていたはずなのに。
こうやって、過ぎたことばかり考えて、今を失っていく。

過去だけでなく、今この瞬間という、大切な時間を失っていることに、全く気付かずに。


私は、今日も失っていく。

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