琥珀

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12/27/2025, 6:20:51 PM

「凍てつく鏡」

 小5以来の私は、自分の容姿に対する、他人からの評価を恐れていた。かといって直接貶されたことはないし、陰口を言われた訳でもない。それでも常に不安になるのは、私の笑顔がいつも引きつっているせいかもしれない。私は成長と共にいろんな笑顔を覚えた。苦笑い、愛想笑い…今はどんな顔で笑えばいいのか、よく分からない。写真でも、動画でも、友達にも。
 そんな私にも、一緒に登下校する友達がいる。今日も隣を歩いている、真以だ。真以は背が高くて、さっぱりした性格をしている。何を考えているか分からないことも多いけれど、私も真以といると気が楽で、心地いい。だから、私は割とよく話す積極的なタイプに見えているんじゃないかと思う。
 あれこれ考えていると、真以が突然走り出した。向かった先は、田んぼの近くの大きい水たまり。表面に氷が張っているのを見ると、真以はキシキシ軋ませながら、パリパリ氷を割り始めたのだ。
「沙知!これよくやって帰ってたよね、昔」
私もそっとつま先に体重をのせた。その瞬間、バリッと大きく割れて、私の靴はずぶ濡れだった。「つめたーっ!!」骨まで冷えた足先とは反対に、恥ずかしさと可笑しさで、私たちの中はぽかぽかだった。割れた氷の隙間から、青空を映した水面が広がっていく。さっきの衝撃で少し濁っていてはいても、その水面は確かに私の心からの笑顔を映し出していた。
 

12/26/2025, 11:53:36 AM

「雪明かりの夜」

暗い夜、冷えた指先、静かな帰り道。全部、僕にとってはずっと当然の毎日だった。
 でも真っ暗な僕の世界に、ある日君がやって来て、僕はちょっと変わってしまったみたい。君が隣にいて、夜が眩しくて、手は君の暖かさに包まれて、控えめに笑う君の声がそばに残る。雪明かりで見えた君の鼻先が少し赤い。
 今は、分かる。暗くても、明るくても、どんな夜も当然じゃなかったこと。僕が歩く夜が明るいのは、雪明かりのおかげなんじゃなくて、君が光のある方へ連れて行ってくれるからなのかもしれない。こんなことを考えているから、僕はまた難しい顔をしていたんだろう。心配した君が僕の顔を覗き込む。
 「なんでもないよ」
僕と君の息が、白く雪の中にほどけた。

12/25/2025, 4:00:21 PM

「祈りを捧げて」
大切な、君へ

何もできない日があった。
君が辛いその瞬間に、一番近くにいることはできない。こんな時の言葉は、頼りない。きっとなぐさめることや、励ますことは君をもっと苦しくしてしまうだろうから。
正しさより、優しさをくれた君に何ができるんだろう。濁りながら、澄みながら、流れていく心の中で、変わらないことがある。
どうか、君の明日が、今日より息がしやすい日になるように。
きっと、祈ることは、奇跡を望むことだけじゃない。届くかわからない願いも気持ちも、手放さないでいること。
だから、いつか君が、光の中で笑顔になるその日を祈っている。