作品22 光と闇の狭間で
小さい頃、よく屋根裏部屋で遊んでいた。
近所に住んでいる幼馴染が遊びに来たら、2階にある屋根裏部屋で隠れて、電気を真っ暗な状態にしたままでかくれんぼをしていた。視界がゼロだから、隠れている人の息の音や、音の反響の変化を聞いたりとか、聴力でどうにか探し当てるという、なかなかに酷でちょっと独特なゲームだ。
その記憶のせいか、自分にとって光と闇の狭間は、音だと思っている。
周りが思っているものとは違うらしいけど、大事な思い出からくるこの考え方が、じつは結構気にいっている。
その耳が、最近聞こえづらくなってきた。
病気とかではないけど、原因がわからないから、どうしようもできない。
真っ暗な部屋で寝て、日差しの眩しさで起きて。光か闇かしかない世界は、僕には辛い。
とりあえず、しばらくはかくれんぼの世界を楽しもうと思う。辛いと感じるのはその後だ。あの子との思い出を反芻しよう。
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ムズすぎる。抽象のお題からしかかけない
作品21 距離
少しだけ。ほんとに少しだけ、この世界は私には生きづらかった。
好きなものを好きだと言うと子供みたいと言われ、嫌いなものを嫌いと言うと変だと笑われ。そういう、どこにでもありふれている些細なことが、ちょっと苦しかった。
だから、好きなものはみんなに隠して距離を置いて、嫌いなものは理解あるフリして必死にまともに振る舞った。みんな、そういうのを当たり前にやっているから、ちゃんとみんなに合わせてその通りにした。結構頑張った。
たぶん、それが駄目だったんだろうな。
いつもより帰るのが遅くなったある日。家に帰って一人になると、体から力が抜けて、気づくと涙で顔が濡れていた。袖で目元を拭くが、全然止まらなかった。
その日から毎日、一人になると泣いてしまうようになった。
私には宝物がある。宝石みたいな髪飾りがついてる、陶器でできた小さな人形だ。とっても大事で大好きな物だ。けれどこの好きは、周りの人には理解されなかった。
私には怖いなものがある。恋をすることだ。私の恋は、正常な人からするとおかしいらしい。理解されることなんて、おそらく一生ない。間違えて気持ちを伝えてしまったりなんてしたら、相手を傷付けることになる。その理由は言えない。だから深く語らず恋が嫌いと言っていた。そしたら、おかしい人ってレッテルを貼られた。
そういう、ほんとに些細なことが、ちょっとだけ耐えきれなかった。
今日も泣いた。
嫌なことはなかった。強いて言うなら、恋をしてしまった。昔も恋してあんなに傷ついたのに、懲りないな。あははって、一人で乾いた笑い声を鳴らす。
いいことは、あるわけない。泣いてしまったあの日からずっと、起きてない。
また、さっき止まったはずの涙がまた出てきた。涙を止めようと上を見る。窓の外から夜空が見えた。
星が宝石みたいにキラキラして綺麗だった。そのまま、なんとなく星に手を伸ばすけど、遠すぎてとどくはずがない。
とどいたらな。星との距離が近かったら、どんな願いも叶いそうなのに。
毎晩寝る前に、まともになれますようにって、願ってる。叶ったことなんて、一瞬もないけど。
なんかもう、願うのも、まともになろうもするのも、好きを隠すのも、嫌いを抱き続けるのも、私を隠すのも、全部疲れたな。
なんか、もう、いっか。
窓をガラガラと開ける。外の空気は思った以上に冷たかった。
ベランダの柵に足を置く。高さ的にどうなるかはわからないけど、どうなってもいいや。
身を乗り出す。あ、待って。最期に見るなら星がいい。空に向かって飛ぼう。
飛び越える。部屋の中が少し見えた。なぜだか、部屋に飾っている宝物が泣いてるように見えた。
体がふわりと軽くなる。星が、今まで見た以上に輝いて見えた。流れ星が、みえた。
地面が近づく。なんでだろう。今までで一番、息がしやすいかもしれない。
嗚呼、私は今とてつもなく幸せだ。
体中が熱く、痛くなった。
⸺⸺⸺
作品10 宝物
作品11 どうすればいいの?
の人が出てきます。
作品20 泣かないで
今夜もいつもみたいに過ごしていた。
いつもみたいに、なんとなくネットに触れて、なんとなく見知らぬ誰かに愛を呟いて、なんとなく気分を動かして、なんとなく口角上げて、なんとなく息をして。
なんとなく生きていた。
それは、いつもと同じ。
だけど今日は、変なのが一つ混じった。なんとなくこのままじゃ駄目だと思うよって。
この“なんとなく”まみれの生活、なんだか悲しくないか?辛くないか?苦しくないか?この生活は明日もきっと同じなんだろ、変わることなどないんだろ?来週も、来月も、来年も。永遠に“なんとなく”。それってなんか、可哀想だな。
そう聞かれたから考えてみる。悲しいどころじゃない。言葉では表しきれないほど苦しいし寂しい。冷たい。それはそんなのだ。と返す。
あーあ。考えちゃった。気づいちゃったね
漠然とした何かが私を襲ってきた。
呼吸が苦しくなってきて、心臓が激しく動き出す。目と口から何かが零れそうになる。汚い。我慢しなくちゃ。
ぎゅうって体を小さくすると、涙が溢れでた。声にならない叫び声も出てきた。
何もかも全く止まらない。嗚咽が出ちゃう。嫌だ。誰かに見られたら変な奴だと思われる。笑われる。心配される。目立ってしまう。みられる。
でもホントは、誰かに見られて、気に留めてもらいたいんでしょ?って、誰かが耳元で言う。誰なんだよお前。
ぐるぐる考えが頭を巡る。そしたらその分、心が締め付けられる。助けて誰か。
こういうときに、慰めと心配の言葉をかけてくれる人が、いればいいのに。泣かないでって言ってくれる人が、いればいいのに。泣くのも認めてくれる人が、いたらいいのに。何も気にしなくていいくらいに強く抱きしめてくれる人が、いたらいいのに。私が一人じゃなければ、いいのに。
私は、これ以上泣きたくない。だれかこの気持ちをとめて。
今夜は一人、部屋の真ん中でうずくまる。
わたしはこどくだ。
作品19 冬のはじまり
目の前で風が踊り始めたから、風花がとてもキレイだなと思っていた。すると目の前に、キラキラ輝いた黒髪が通った。美しかった。
そして私は、髪に六花を付けたキミに、見惚れてしまった。私の心に、春が来た。
話し掛けようと、キミの隣に行く。けれでも、すでに先客がいたようだ。
隣にいるのは、キミの恋人さん。
赤くなった鼻を隠して、白色の息を吐く。
あっという間に、冬が始まっちゃった。
私の季節は、巡るのが早すぎる。
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薪割りから解放される季節の始まりです。
きれませんように。
作品18 終わらせないで
映画で言うなら 最後の場面
終わりたくないよ スローにして
こんな当たり前が大事だってことに
なんで今気づいてんの?
隣で突然、君が歌いだしたあの曲。なんて曲?って聞いたら、秘密って返された。
だからこの曲を聴くときには、必ず、君が隣に居た。それが自分にとっての、当たり前だった。
そんな当たり前も、あと少しで終わる。
終わってしまうには、流石に早すぎると、何度も何度も思うけど、意外とこんなものかもしれないね。
だからせめて、二人だけのエンドロールは豪華なものにしよう?
夕日が赤くて綺麗な浜辺で歩いたり、イルミネーションを見たり、駆け足の季節を感じたりしてさ。もちろん、あの曲も一緒に。きっと楽しいよ。
失いたくないって思うはずだよ。この時間が終わらなければいいなって思うはずだよ。
きっとね。……うん、やっぱり。
まだまだ、自分たちのエンドロールには早すぎるよ。だから終わらせないでいよう。約束だ。
自分はそんな感じの、
意外なオチに賭けている
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スピッツの『エンドロールには早すぎる』の歌詞を入れてます。お題を見て、この曲がずっと頭の中に流れてしまったので、書いちゃいました。うまく組み込めない。
ぜひ、聴いてみてください。すっごい優しいです。
スピッツは、本当に聴く精神安定剤。歌詞も曲も優しくて、ちゃんと聞いたら中々すごいことを言っているものもあるけど、それも含めてとても良いです。ライブ行ってみたい絶対楽しい。
そんなこんなでテストやばいです。