H₂O

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4/6/2023, 2:26:39 PM

君の目を見つめると


一瞬のことだった。その瞳と目が合ったその一瞬で、体の自由が奪われて、石のように動かなくなった。
呼吸が浅くなり、息が止まるのに、鼓動はその存在を主張するかのように強く鳴り響く。
美しい人だった。艶やかな長い髪をなびかせ、日に焼けていない白い柔肌が太陽の光を反射するように眩しくて。歳を取ることを忘れたような若々しさがあるのに、その憂い帯びた横顔はどこか大人びていた。
もう一度目が合って、ようやく息を吸い込む。固まっていた体が動き出して、風に押されるように近づく。
その人はしぃー、と唇に指をやって、その瞳を隠すように瞼を閉じていた。
「目を合わせてはいけません」
まるでおとぎ話に出てくるような人を石に変えてしまう存在のように、いたずらっぽく笑っていた。

4/5/2023, 2:17:27 PM

星空の下で


星空の下で少女は夢をみていた。
「こっち、こっち! 一緒に踊りましょ!」
そう言って少女の腕を引っ張ったのは小さな妖精だった。弱く引っ張られた腕につられるように少女は歩き出す。
森の中の獣道をぬけた先で、視界の開けた草原に動物たちが集まっていた。夜はすっかり更けているのに、みんな起きていてどこか楽しげに目を輝かせていた。
周りを飛ぶ妖精たちを追いかけるようにくるくると回り、どこかから聞こえてきた不思議な音楽に身を任せて少女は楽しげに踊る。
湖に映る満天の星空を眺めて少女は楽しそうに笑っていた。
躍り疲れて、草の上に寝転び、少女は目を閉じる。
星々が朝焼けの光に隠れて見えなくなる頃、少女は目を覚ました。周りを飛ぶ妖精も、草原を走り回る動物たちも、どこかから鳴り響く音楽も、そこにはなくて、少女はゆっくりと辺りを見渡した。
果たしてあれは本当に夢だったのだろうか。そう頭をかしげつつ、少女は記憶に残るあの音楽を口ずさみ、体の思うがままに踊りながら帰っていった。

4/4/2023, 1:50:17 PM

それでいい


生きてるだけで、いいの。生きていてくれるだけで。それでいい。それだけでいい。
みんなそうやって、泣きながら言ってくれました。
でも、生きているうちに言ってくれる人は誰一人としていませんでした。

4/3/2023, 2:02:41 PM

1つだけ


ほしいものが手に入るなら。
会いたい人に会えるなら。
行きたい場所に行けるなら。
なんでも願いが叶うのなら。
きっと一つだけでいい。多くを望んだところで、きっと忘れてしまうから。
だから、たった一つでいい。その一つを死ぬまで大事にするから。

4/2/2023, 1:48:44 PM

大切なもの


大切なものはね、何故だかわからないけどみんな適当に扱っちゃうの。
大切なはずなのに、傷つけたり、遠ざけたり。大切にしすぎて、使わなかったり、そのままにしたり。大切にしたいのにみんな上手く大切にできずに、困っているのよ。
だからね、上手に大切にできなくてもいいのよ。でもね、せめて後悔のないようにするの。大切にすべきものを間違えないように。大切なものをあなたらしく、正しく大切にするように。
そうしたら、きっとその大切なものも、あなたのことを大切にしてくれる。

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