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1/11/2023, 2:00:28 PM

寒さが身に染みて


寒いね、なんて笑い合っているうちはきっと寒くなんてなかったんだ。
君が隣にいて、手を繋いで、わずかな熱を分け与えあって。心はぽかぽかとあたたかくて、寒いのに、寒くなんてなかった。
けど、君が隣にいないだけで、手を繋がないだけで、身に染みるほどの寒さを感じるんだ。
頬を突き刺すような風が、空いた心の隙間を通り抜ける風が冷たくて、痛くて。
でも泣いたところで君を困らせるだけだから。今日もいっぱい着込んで、誤魔化すんだ。君なんていなくても、大丈夫だよ、なんて自分に嘘をつくんだ。

1/10/2023, 2:00:36 PM

20歳


20歳のことを、君はどうやって表現するのかな。
「大人だね」って目を輝かせるのかな。
それとも「対して変わらないじゃん」って呆れるのかな。
「若いねぇ」なんて羨ましがるのかな。
「大きくなったね」って成長を喜ぶのかな。
「人生を一日に例えるなら、20歳はまだ目覚めたばかりだ。君たちの人生はこれからだよ」なんて語ったりするのかな。
20歳のことを、君はなんて表現するんだろう。

1/9/2023, 1:38:05 PM

三日月


夜空を見上げれば、そこには月がぽつん、と浮かんでいた。欠けたその月は三日月と呼ばれ、月の象徴とも言われる形をしていた。
この星から見える月の見え方は、綺麗だと誰かが言っていた。本物の月は欠けてすらいないのに、その一部が影に隠れてしまって欠けているように見えるのだ、と。
欠けているのにその美しさは満月をも上回り、儚さを兼ね備えていた。
だから、と誰かは言ったのだ。
だから、たとえ未完成で不完全に見えたとしても、それが本当かどうかなんてわからない、と。
欠けて見えても、それすらもうすでに完成されているのだろう、と。
そのことに誰も気づいてはくれないんだよ、と月に座るその人は寂しそうにそう言ったのだ。

1/8/2023, 2:30:21 PM

色とりどり


悲しい、と落ちた涙の色は深い青だった。
嬉しい、と花が咲いたような笑顔は黄色だった。
ふつふつと沸き上がる怒りは、燃え上がる炎のような赤で、穏やかな波のような優しさは緑だった。
色んな感情を覚える度に、その感情に色と名前をつけた。
真っ白な紙に覚えた感情を塗っていく。原色しかなかった色たちは次第に合わさることを覚え、複雑な色さえも作り出すことができた。そう、感情も同じように複雑になっていったんだ。
何色も何色も混ざった色はどんどんと濁っていき、とうとう黒色になった。
色とりどりの美しかった紙はいつしか真っ黒に塗りつぶされていて、何かを感じることすら億劫になってしまった。
そんなとき、君の一滴の言葉がその黒を少しだけ薄めたんだ。その下にあるはずの色を思い出させるようなその言葉に動かなくなっていた心が動く。
君の、その何気ない一言に救われたんだ。自分に向けられた言葉じゃないのに、君の感性で綴られた文字が思い出させてくれたんだ。
色とりどりの感情を、美しいこの世界のことを。

1/7/2023, 2:09:04 PM




凍えるような寒さの中、あなたを待ち続けた。
指はかじかんで、動かなくなりつつあって、ついには雪まで降りだしてしまった。
手のひらに落ちる雪は、わずかな温度でも形を変え、水滴に変わっていく。
そっ、とその雫を目尻にのせて、頬を流れていくのを感じた。
のっそりと歩いてやって来たあなたはそんな私を見て何を思うんだろう。
もうあなたのために流す涙すらないのに。

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