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12/12/2022, 1:13:17 PM

心と心


思い合うことはできる
でも、通じ合うことはできない

12/11/2022, 12:32:41 PM

何でもないフリ


何でもないふりをした。自分が我慢すれば、それでいいと思った。そうすればこれ以上は悪くならないから。
なんてことないふりをして、自分に嘘をつき続けた。
いつしかその嘘がまるでそれが本当であるかのように変わっていった。
痛いも、悲しいも、辛いも。まだこれはそんな感情じゃない、なんて誤魔化し続けていたら、痛いが、悲しいが、辛いが、わからなくなっていた。
一時の苦しみをまぎらわすためにした何でもないふりが、つもり積もって自分のSOSにすら気づけないことに気づいて、後悔する。
何でもないふりをした。それは自分を少しだけ殺すようなものだった。

12/10/2022, 12:34:47 PM

仲間


友だちと呼べるほど、親しさも気軽さもないけれど、同じ志を持ってそれに向かっている君たちのことを仲間と呼んでもいいだろうか。
たとえ誰かが去ったとしても、また新しく誰かが来るかもしれない。たとえ何かを失っても、君たちとだったら乗り越えられるかもしれない。また取り戻せるかもしれない。
ただ同じ志を持った性別も年齢も生まれた場所も違う君たちだけれども、そんな君たちのことを仲間だと思いたいんだ。

12/9/2022, 1:16:58 PM

手を繋いで


手を繋がれた。自分のものよりは大きく、それでいてしわしわで細い指のその手からゆっくりと熱が移る。
もう目も耳も聞こえなくなってしまったけれど、その感触はよく知っていた。だから、ゆっくりと握り返す。
「わたし、しあわせでしたよぉ」
何気ない日々も、会話のない時間も、振り返ればどれも愛しいものばかりで。繋がれた手と同じように心もぽかぽかとあたたかくなる。
決して大恋愛の末の結婚ではなかった。はじめましてのお見合いで、流れるように決まった結婚だったけれど、この人と結婚してよかったと心の底から思うのです。
「だから、もしまた生まれ変わったら、今度はあなたと大恋愛をしてみるのもいいかもしれませんね。ねぇ、おじいさん」
返事を聞くことも、見ることもできないけれど、繋がれた手がより一層強くなって、それが返事だとわかる。
ぽた、と頬に落ちてきた水に、雨かしら、なんて思うけれどベッドで横たわっているのは誰よりも自分がよく知っている。
幸せだった日々を胸に抱いて、ゆっくりと目を閉じる。繋がれた手を離し、ほんの少しだけさようならを。
次会うときにはまた手を繋いで、今度は最期まで離さないで。

12/8/2022, 2:16:26 PM

ありがとう、ごめんね


「ありがとう、ごめんね」
彼女はそう言った。十四年間彼女に仕えてきて、初めて聞くような声だった。嫌だ、離れたくないと叫ぶ私を制して、屈強な男たちに連れていかれる彼女は美しくあり続けた。
数々の嫌がらせをし、反逆者だと罪を着せられても彼女は怒りをあらわにはしなかった。泣くことも、怖がることもせず、堂々としていた。
断頭台に上る彼女に心ない言葉が飛び交う。それに対抗するように大声で彼女のことを呼んだ。
「お嬢様!!」
かき消されるほどだったのに、彼女の耳には届いたようで、目が合う。鋭い刃が落ちてくるその瞬間、彼女はたしかにこう言った。
「ごめんね」
音として聞こえたわけじゃない。ただ小さく動いたその口がそう動いたのを見て、頭で理解した瞬間のことだった。彼女の首が落ちたのは。
信じられなくて、信じたくなくて、膝から崩れ落ちる。声をあげて泣く私を人々は冷たい目で見ていた。

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