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12/7/2022, 12:58:15 PM

部屋の片隅で


君は一人で泣いているんだろうか。
その体をさらに小さく縮こませて、自分以外を心の内側に入らせないように、自分を守るようにして、その部屋の片隅で泣いているんだろうか。
助けたいなんておこがましいことは言わない。君の気持ちがわかるよ、なんて嘘は言えない。わかりたくても、すべてわかることはできないから。君とまったく同じ気持ちになることはできないから。
でも、君が一人で泣いているのは嫌なんだ。一人で泣かせたくはないんだ。
だから、手を差し伸べることしかできないんだ。そんな隅で泣いてないでよ、って。
君がこの手を取ってくれるのはきっと、もっと、ずっと先のことなんだろうけど、それでも待つよ。手を差し伸べたまま、君がここに来てくれるのを、いつまでも待つよ。

12/6/2022, 12:15:26 PM

逆さま


子どもが病におかされた。
小さな子どもが交通事故にあった。
子どもが誤ってベランダから落ちた。
激しくなった川の流れに子どもがさらわれた。
苦しみ、悩み考えた末にその子どもは自ら命をたった。

どの写真にも笑顔が写っていた。子どもらしく、あどけない表情で笑っていた。
その写真の前で泣き崩れる親たちは、もっと一緒にいたかったと嘆く。幸せにしたかった、と。大きく育ってほしかった、と。

逆さま、先立った子どもを親が弔うこと。

12/5/2022, 1:31:21 PM

眠れないほど


その日、世界は真夜中に真昼を観測した。
美しい夜空だった。星々は光輝いて、紺に染まる空を彩る。
視界いっぱいに広がるそれが、綺麗で訳もわからず涙が出た。瞬きをしたその刹那、新月で見えていないはずの月が太陽よりも輝きだしたのだ。
辺りは一気に明るくなり、まるで昼間のように世界を照らす。寝ていたはずの人々は次々と目を覚まし、その光景に驚いた。眠れないほど眩しいその昼間は数分経つと徐々に光を弱くし、やがて消えていった。
世界にはまた夜が訪れた。素知らぬ顔で夜空は世界を優しく包む。
その日、世界は真夜中に真昼を観測した。

12/4/2022, 11:41:32 AM

夢と現実


正反対のようで、意外と近くにあるのかもしれない。
夢はどこか遠い存在だったりする。たとえば、寝ているときに見る夢は変なことが起こることもあるし、あり得ないことが起こることもある。
それ以外にも将来の夢だったり、何か叶えたいと思うようなことも夢とされる。それはたしかに今いる場所からは遠いように感じるのだ。
そして、現実は今目の前で起こっていることだから、夢とは正反対でもっとも近いところにある。
だが、しかし本当にそうだろうか。
夢だと思っていたことが本当は現実で、現実だと思っていたことが本当は夢なのかもしれない。
そもそも、本当に君は今いる場所が現実だと断言できるのだろうか。その証拠となるようなものは一体何なんだろう。

なんて、だれもどちらが現実で、どちらが夢なのか、きっとわからない。
ただ一つ言えるのは、君が現実だと信じた方が現実で、君が夢だと信じた方が夢だ、ということ。
何を夢とするのか、何を現実とするのか。それは君の解釈によって変わるんだ。

12/3/2022, 1:40:52 PM

さよならは言わないで


たとえもう二度と会うことはなくても、さようならは悲しいから。せめて、またね、って言ってお別れしたい。
大好きなあなたたちともしかしたら、また出会えると信じていたいから。そんな次を願っているから。
だから、どれだけひどい別れ方をしたとしても、もう二度と会いたくないと誰かを憎んでも、いつかその人とそのときの自分を許せるときが来ると信じて。

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