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11/27/2022, 11:18:17 AM

愛情


愛、きっとそれはすべての感情の根源にあるもの。
嬉しいも、楽しいも、きっとそれに対する愛情でできていて。
悲しいも、寂しいも、愛情がなかったらわき出てこない感情だ。
愛は、ときに嫉妬に変わる。憎しみにだってなりうるし、人を傷つけることだって、ある。
でも愛は、人を癒すことだってある。誰かの助けになったり、救いになったりもする。
愛とは、きっとそういうものだ。最も純粋で、矛盾にあふれているそんな感情を、きっと愛と呼ぶのだろう。

11/26/2022, 12:48:54 PM

微熱


寝台に横たわる『それ』は、どこからどう見ても彼にそっくりだった。手を伸ばして恐る恐る触れれば、少しだけ硬さと冷たさを感じる。
どれだけ似たように作っても、やっぱり人間にはなりきれないのだと改めて理解した。
何度も何度も作っては壊し、作っては壊しを繰り返した。そうして出来上がった今までで一番の出来なのに、喜べなかった。
まるで自分がやったことがすべて悪いことのように感じて、罪悪感によく似た感情がまとわりつく。
彼への冒涜、なんて言葉が頭にちらついた。
違う、そんなことをしたかったわけじゃない。ただもう一度会って、話がしたかっただけなのに。伝えたいことがまだいっぱいあったのに。喧嘩だってし足りないくらいなのに。
自分のすすり泣く声と嗚咽が静かな部屋に響く。
「プログラムを起動します」
突然聞こえてきたそれにハッ、となって顔を上げれば、『それ』はゆっくりと目を覚ます。寝台から起き上がり、こちらに近づいてくる。『彼』はそっと膝をつけて、その手を伸ばし、頬に伝わる涙を拭う。
優しい手だった。さっきまではあんなにも硬くて、冷たかったのに。鉄の塊なのに、体温なんてありもしないはずなのに。なぜか、優しくてあたたかく感じた。

11/25/2022, 3:00:35 PM

太陽の下で


ひどくあたたかな光の下で今日もあなたのことを想いましょう。
同じこの空の下で、同じときを生きているあなたに、届くことのない感謝を、愛を、祝福を。想いを風にのせて、あなたに届くように祈りましょう。
互いに名前も顔も知らないけれど、どこにいて何をしているのかも知らないけれど、そんなあなたに届きますように。

11/24/2022, 1:05:56 PM

セーター


玄関を開けたら、そこには彼がいた。自分よりも背が高いから見上げるような形になる。
「入れて」
明らかに寒そうな様子に、仕方ないな、と体を横にずらした。満足げに微笑んで、彼はいそいそと靴を脱ぐ。ふと見た外の世界は細かい雪が降っていた。
どうりで寒いわけだ、とドアを閉めて、すっかり寒くなってしまった体を暖めるためにこたつへと向かう。
「何か飲む?」
手を洗い終わった彼がキッチンからひょっこり顔をのぞかせた。せっかくだから、と甘えてココアを頼めば、鼻歌が聞こえてくる。
少し経って彼が二つ分のカップを持ってこたつへとやってきた。甘いココアが入った方を渡されて、ありがたくいただく。
あたたかい飲み物で内側からさらにぬくぬくと暖まっていたのに、急に足先が冷たいものに触れて、ぴっ、と鳴いた。すぐさま足を引っ込めれば、いたずらっぽく笑う彼が目の前にいた。
じとー、と見つめれば、彼はまたこちらに触れてこようとする。冷たいからやだ、と言えば、彼は少しだけ寂しそうな顔をして下手くそな泣き真似をした。
「だって、寒いもん」
可愛い子ぶったような表情をされても、これは許せない。せっかく暖まったのだから、とこたつ布団にくるまれば、彼は立ち上がって正面からこちらの後ろへと移動する。
後ろから抱きしめるようにこたつに入り、こちらに体重をかけたりしてじゃれてくる。
しばらく構ってやっているとだんだんと暑くなってきて、着ていたセーターを脱ごうとする。しかし、しっかりホールドされているため、上手くいかない。少しでも動こうとすれば、さらにその腕の抱きしめる強さは強くなる。ぺしぺし、と腕を叩いて合図をすれば、耳元で甘い声が落ちる。
「だーめ」
むっ、と唇を尖らせれば、それに吸い寄せられるように彼の唇が落ちる。ちゅ、と可愛らしいリップ音が鳴り、彼はまた満足げに微笑みながら抱きしめる。
「今日の格好、かわいいから。脱いじゃだーめ」
その一言で脱ぐ気も起きなくなったのだから、完全にこちらの負けだ。ずるい。

11/23/2022, 11:04:13 AM

落ちていく


アリスはうさぎを追いかけて、穴に落ちていった。
世界が輝いて見えた少女は恋に落ちた。
すべてに絶望した少年は空を見上げて落ちていった。
こくり、こくりと船をこぐ男性は眠りに落ちた。
喪服に身を包んだ女性の涙は頬を伝い、落ちていった。
愛憎を知った天使は羽を奪われ、地に落ちた。
今日も世界のどこかで誰かが何かに落ちていく。

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