微熱
寝台に横たわる『それ』は、どこからどう見ても彼にそっくりだった。手を伸ばして恐る恐る触れれば、少しだけ硬さと冷たさを感じる。
どれだけ似たように作っても、やっぱり人間にはなりきれないのだと改めて理解した。
何度も何度も作っては壊し、作っては壊しを繰り返した。そうして出来上がった今までで一番の出来なのに、喜べなかった。
まるで自分がやったことがすべて悪いことのように感じて、罪悪感によく似た感情がまとわりつく。
彼への冒涜、なんて言葉が頭にちらついた。
違う、そんなことをしたかったわけじゃない。ただもう一度会って、話がしたかっただけなのに。伝えたいことがまだいっぱいあったのに。喧嘩だってし足りないくらいなのに。
自分のすすり泣く声と嗚咽が静かな部屋に響く。
「プログラムを起動します」
突然聞こえてきたそれにハッ、となって顔を上げれば、『それ』はゆっくりと目を覚ます。寝台から起き上がり、こちらに近づいてくる。『彼』はそっと膝をつけて、その手を伸ばし、頬に伝わる涙を拭う。
優しい手だった。さっきまではあんなにも硬くて、冷たかったのに。鉄の塊なのに、体温なんてありもしないはずなのに。なぜか、優しくてあたたかく感じた。
11/26/2022, 12:48:54 PM