「どうすればいいの?」
お空に飛んでくしゃぼん玉
この手にずっとずっと乗せていたいのに
つんと触ればすぐに弾けてしまう
そこに置いてあるマグネット
僕についてきてほしいのに
冷蔵庫や磁石についていってしまう
人間のぼくはその力には抗えない
ものと、ひとは違うから
どうすればいいの?どうすればいいの?
しゃぼん玉がずっとずっと手のひらに乗ってくれるためには
どうすればいいの?
どうすればいいの?どうすればいいの?
マグネットが僕についてくるにはどうすればいいの?
『宝物』
宝物が一瞬で飛んでった
空に高く高く
ちょっとやそっとのジャンプじゃ届かない
手も伸ばせば届くかもしれない
けれど、私にそんな勇気はない
宝物の我が道を歩もうと、ようやく踏み出した一歩なのに
ここで邪魔したらどんなふうに砕け散ってゆくのだろう
だから、私にそんな勇気はない
ふたりで灯したキャンドルの灯は消えちゃったね。
混ざりあって溶けたキャンドルはわたしたちみたい
「たくさんの思い出」
あともう一歩、もう一歩だけ踏み出せば
これまでのたくさんの思い出はもう一度かたちになるだろう
しかし、それが怖くて怖くて不安でたまらない
私は、弱い人間なので、その気持ちに逆らうことはできない
たくさんの?思い出?は色褪せていく
目の前の君が何なのかもワカラナイ
私の心は砕け散ってゆく
なんで君は泣いているの?
なんで君はそんなにも苦しそうな顔をみせるの?
私はこんなにも不自由で動かしにくく、痛いからだは大嫌いだ
常に足も痺れ、片目も見えない、耳も聞こえにくく、トイレにも間に合わない、思ったことを口にすら出せない
けれど何より、君にそんな顔をさせる自分が大大大大嫌いだ。
はなればなれ
まだ、たった4歳なのに。4年しか生きてないのに。
君は小さなからだで、大きな病気と闘って一生懸命に生きようとしていた。
お家に帰れるようになったら、いっしょにお料理して、お風呂を入って、公園に行って、いっぱい走り回って、君の大好きな黄色のワンピースを買いに行こうね、と約束をしていたよね。
けれど、そんなちっぽけな約束すら果たせないまま、君はパパのいるそっちの世界へいってしまったね。
はなればなれになってしまったね。
夫も、娘も失った私は、大雨の中ひたすら道端でひとり涙を流し続けていた。
そこで出会った
道端にぽつんと立っていた小さな少女
どこか君に似ていたから
私は手を差し伸べた
君は、「おかあさん!」と言って何処かほっとした表情で、ぎゅっと抱きついてきたね
そんなはずはないのに
けど、「おかあさん」と言ってくれたことがすごく嬉しくて、一緒に家に帰ったよね。
一緒にカレーライスをつくって、一緒にお風呂も入って、一緒に公園に行って、服が汚れたから君が大好きなピンク色のお洋服を買ったよね、君は毎日それを着て見せて「おかあさん、ありがとう!」と嬉しそうに笑ってくれね。
私が仕事で疲れ切って、寝落ちしちゃったときには、布団をそっとかけてくれたね、
あの布団は世界一あったかかったよ。
当たり前の日常だったかもしれないけど、私にはすごく幸せな毎日だった
「ピンポーン」
チャイム音がなる
「はーい」
と私が出ると、そこには警察官が立っていた。
もう終わりなんだね。もう君とは合うことができないんだね。
私は、察した。
娘の前で手錠をかけられ、連れて行かれると君は、
「おかあさんをつれていかないで!おかあさんやだ!はやればなれやだ!」
とひたすらに、叫び続けていた。私の心にはその声がすごくすごく痛かった。苦しかった。
でも、仕方がない。私はやってはいけない間違えを犯してしまったのだから。
「本当のおかあさんのところで、幸せにね」
私は、ぽつんと、一粒の涙を落とした